第十五話 ごちゃごちゃ

 ユキヤが、この世界に来る前の記憶があったと言ったのには驚いた。

ちゃんと記憶を引き継いで、この世界に来たのか。なんか漫画によくある異世界

転生っぽいな。


「この世界に来る前の記憶、って言っても断片的なものなんだけどね。

それに、直前の記憶しか持ってないし、頼りになる情報かは分からない」


 ユキヤが俺の目をじっと見据えながら言った。


「それでもいい。話してくれ」


 俺は身を乗り出してユキヤに言う。


「じゃあ話すけどさ、その前に」


 ユキヤは急に俺の肩を掴んで言う。


「急に何だよ⁉︎」

「あんたにも、この世界に来る前の記憶があるんじゃないの?」


 やけに真剣な目をして、ユキヤは俺に聞く。


「この世界に来る前の記憶……。俺にも、あるのかな」

「あるんじゃない? 思い出してみなよ、できるかぎりでいいから」


 一瞬、俺にもこの世界に来る前の記憶があるのか不安になったが、

ユキヤにそう言われ、俺はこの世界に来る前の記憶を思い出していた。


 確か、この世界に来た直後、俺はベッドから目覚めたはず……。

そして、ココアを飲むはずだったけど、『あんココア』っていうよく分からん

飲み物に変わってたんだよな。

 でも、この世界に来る前の記憶なんて、そんなパッと思い出せるわけないだろ。


「……思い出せないんだったら、いいよ。一応確認したいだけだったから」


 俺が頑張ってこの世界に来る前の記憶を思い出そうとしていると、ユキヤの声がした。俺を咎めるでもなく、非難もしない優しい声音だった。


「なんかごめんな、ユキヤ」


 俺はユキヤに謝るが、ユキヤは


「いいよ。思い出せたら、そのときは僕に声かけて」


 と言ってくれた。


 あれ? なんか優しくね? いつものユキヤじゃないような気がする……。


「じゃあ、先に僕から話すよ。僕は、この世界に来る前、あんこが入っている

お菓子を食べて、この世界に来た」


 ユキヤはそう言った。あんこの入っているお菓子……? あんこの入っているお菓子を食べて、あんこしかない世界に来たってことなのか?


 俺は考えた。あんこを食べたって……そういえば、俺も最近あんこを食べた気がするな。ハルさんのくれたたい焼き……? 違う、もっと別のことだった気がする。

ハルさんじゃなくて……。ユウゴか?


 ユウゴと、あんこが入ったお菓子を食べた記憶が蘇ってきた。

あんこが入ってるお菓子って……そうだ。大福だ。


 コンビニで、ユウゴと大福を買って食べたんだっけ。なんで大福を買ったんだ?

そもそもいつの話だっけ?


「ねぇ、大丈夫?」


 俺がごちゃごちゃ考えていると、ユキヤが話しかけてきた。








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