第六話 要件に集中できない、女子達の声で
「なぁ、ケガとかしてないか?」
ユウゴが聞いてきた。どうやらユウゴは、俺があのよく分からん奴–––ユキヤに、
殴られたと思ったらしい。
俺が教室に戻るなり、いち早く駆けつけてきたもんな。全く、こいつは心配性な
ところがあるな。
「いや、別に殴られたりとかはしてないよ。お前、心配しすぎだって」
俺はユウゴに言った。
「なら、いいけど……」
ユウゴはなおも心配そうに言った。
–––キーンコーンカーンコーン
予鈴が教室内に響く。次は移動教室か。早く行かないと評価に響くな。
「おい、ユウゴ、もう行こう。先生の雷が落ちるぞ」
「おう、分かった!」
俺たちは授業をする教室に向かった。
*
「今、ちょっといいかな」
放課後、帰ろうとカバンを手に持ったところに声をかけてきたのはユキヤだった。
よりによって、こんな奴と下校前に会うとは……。
本来ならこんな面倒な時、ユウゴに助けを求めるんだが、生憎ユウゴは部活だ。
なんでこんな時にユウゴがいないんだ……。
ユキヤを見てみると、何故か顔には笑顔を浮かべている。今度の笑顔は意地悪そうな表情じゃなく、爽やかな笑みだった。え、お前そんな表情できるんだ⁉︎ じゃあ
さっきの校舎裏での態度は何だったんだよ……。
「ねぇねぇ、あれ、ユキヤくんじゃない?」
「本当だ! ……え? 笑ってない?」
「マジ⁉︎ ……本当だ! 私たちの前では、滅多に笑わないのに!」
「えー! うちらユキヤくんの笑顔見れて超ラッキーじゃん!」
「ユキヤくんの笑顔なんて超レアなのに!」
何やら廊下の方で女子達が騒いでいる気配がする。
さすが、やっぱりコイツもモテているだけあるな。
「……で、俺になんか用があるのか?」
俺はユキヤに言った。
「ああ。実は–––」
「えっ、嘘⁉︎ ユキヤくんと話してるのって、タイチくんじゃん!」
「タイチ? あー、うちのクラスの奴ね。ユキヤくん、タイチに用でもあるのかな?」
「うわぁ、めっちゃレアだよ! 学年のイケメンが二人! しかもその二人が会話
してるところを目撃するなんて、私たちめっちゃ運良いね!」
ユキヤが話そうとした瞬間、女子達がまたキャーキャー騒ぎ出した。
多分あの子達に悪気はないのだろうが、ちょっとユキヤの声が聞こえないので
今は黙っていて欲しい。
俺が、女子達の声が気になり、そちらの方をチラチラ見ていると、ユキヤが急に
黙った。
「ユキヤ……?」
急に黙って、どうしたんだろう。俺がそう思っていると、ユキヤはスタスタと
女子達の方に足を進める。
何するんだろう、アイツ。
さっきの昼休みの行動を見ていた限りじゃ、何をしでかすか分からない。
ここは俺も行ったほうがいいんじゃないか?
「––––あんたは、ついてこなくていい。僕だけでいいから」
と思ったけどユキヤに止められました。いや、あいつ今俺の方見たけど
めっちゃ睨んでたね。なんだあの眼光、こわすぎ。夢に出てきそう。
うわ、これどうなるんだ。女の子達無事でいてくれ。
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