第二話 これって、棚からぼた餅?
俺はユウゴに促されて、女の子の元に行った。
俺の胸を、嫌な予感が掠める。もしかしたら、またたい焼きとかを渡してくるかもしれない。たい焼きとかはもう既に貰ってるんだけどなぁ……。ちょっと趣向を変えて、チョコクッキーとか渡してくれてもいいんだよ?
「俺に何か用ですか?」
俺は女の子に言う。すると、女の子はびくりと肩を震わせて、恐る恐る俺を見上げる。
「あ、あの……これ……」
女の子はモジモジしながら、俺に赤い包みを差し出す。ご丁寧に、リボンまで
結ばれている。
「……これって、中身何かな?」
俺はそれとなく聞いてみる。すると、女の子は顔を赤らめながら
「手作りの、たい焼きです……」
と今にも消え入りそうな声で言った。
やはりチョコ…ではなく、たい焼きだよな。
うん、知ってた。
しかし、たい焼きを手作りで作るなんて、たい焼きって家で簡単に作れるものなのかな? この子、意外とアクティブだな。
「……なるほどね、たい焼きか(小声)」
「……あの? どうかしましたか?」
おっと、いくらオチが分かっていたとはいえ、ちょっと放心状態になっていたかも
しれない。
たい焼きかぁ……。そもそも俺、あんこ嫌いだし、どうしよう……。断っても、
この子を傷つけてしまう可能性がある。それはなるべく避けたいな。
それに、たい焼きもたまに食べてみると悪くないかもしれない。
よし、ここは一つ、この子の笑顔を見るためだと思って、受け取ろう!
「あぁ、ありがとう。貰うね。……それにしても、たい焼きを手作りするなんて
すごいね。大変じゃなかった?」
俺は相手の女の子に笑顔で言った。女の子が一瞬で頬を赤らめたのが分かった。
「あはは、タイチくんの事を想って作ったので、全然大変じゃなかったですよ〜」
女の子は照れ笑いで言った。可愛い。っていうか、俺のことを想って作ってくれた
っていうことは、やっぱり俺のこと好きってことかな……。
俺は心臓が高鳴っているのを感じた。……これは恋というやつかな?
「たい焼きって、型が必要なので、型は買いに行ったんですけど……。
それ以外は、特に苦労なく作れました!」
女の子は嬉しそうに言う。なるほど、たい焼きって作るのに型が必要なのか。
普段たい焼きを作ることもなければ、食べたこともあんまりなかったから
知らなかったな。
ふと、授業の予鈴が鳴る。もう着席しないと、先生が来ちゃうな……。
次の時間、数学か。数学の高木先生、時間に厳しいから、ここは大人しく
着席した方が良さそうだ。
「たい焼き、ありがとうね。それじゃ」
俺はたい焼きの入った包みを受け取り、自分の席につこうとした。
「……あ、あのっ!」
女の子に呼び止められた。まだ何か言いたい事があるんだろうか。
「あ、あの……良ければ、連絡先を交換しませんか? 放課後、授業が
終わってからでいいので……」
女の子が言う。連絡先の交換か、確かにいいかもしれない。
それに、今まで俺と連絡先を交換しようとした女子はいなかった気がする。
今の子で初めてだ。この子、意外と度胸あるんだな。
もちろん、俺は快く引き受けた。
「うん、いいよ。ほら、もう予鈴が鳴ったし、君も教室に戻らなくちゃ
いけないでしょ? じゃ、また放課後に会おうよ。
場所は……そうだね、校門前でどうかな?」
俺は女の子にそう提案した。
「はい、もちろん!」
女の子は笑顔で言った。可愛い。
「じゃあ、また放課後に会おうね」
「はい! では、また放課後に!」
そう言って、俺たちは別れた。
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