第8話 傷のある机

アレは小学生の時まだ、三人でよく遊んでいた時の事だった。


「おーいサラー!コマチー!」

広い空き地でサラとコマチの二人で待っていると一本道の遠くからのコウキ呼ぶ声が聞こえて来る。

「お、来たよコウキくん」

コウキが頭を下げて息を整えていると

サラがなんで急いでるのか分かっていなそうに聞く。

「コウキ、どうしたのそんな急いで。」


「忘れたのかよ!今日は三人で"ゲーム"買いに行く予定だろ。」

汗を浮かべながら、疲れていたことなど忘れて子供の様な満面の笑顔で話す。


「え!遊びに行くんじゃ無いの?」


「フフ、やっぱり忘れてた..僕は覚えてたよ、そのためにお財布も持って来た。」

普通の遊びの予定だと思っていたサラは二人と比べると軽装で驚く、一方コマチは財布を取り出して小さく笑う。


「ナイスコマチ!俺は自分の分は持って来たぞでもサラは忘れたから...」


笑う男の子の間に挟まれたサラは一人、

自分の服の裾を握りしめてしゅんとする。


「そうだよな、どうすっか戻ると売り切れるかもだしな。う〜〜ん」

「....まあ一回行ってみてみる?」

二人が考えいているとコマチは行く事を提案する。

「うん、そうして。」

明らかにいじけていた。

「でも」

「そうして!」

コウキが心配そうにみると、

サラはより大きい声で言う。

「...分かったよ、」


そしてゲーム店までつくと最新ゲーム発売日と大きくポスターが張られた壁と飾られたゲームの棚に最後の4個が並ぶ。

コウキは店に入ると走りジャンプしながら取る、そのままレジの列に並ぶ。

コマチは少し迷って考えているとコウキのどっちにするんだと声が聞こえる。

コマチは一言誰にも聞こえないくらいの小さい声で呟く。

「ア、コレなら」



「よっしゃ〜買ったぜ!新作テリモン

つけ麺&焼きそば!俺は断然つけ麺派。」

コウキは、いの一番に店を出るとゲームを袋から取り出し、天に掲げながら買ったゲームのことを話していた。

そして後ろを振り向くとゆっくりと店員にお礼を言いながら出て来るコマチの厚めのレジ袋に入っているゲームを見る。

「コマチは焼きそば買ったか、なら交換できるな、サラは...あ」

忘れていて無自覚にサラに聞いてしまった。


「私は買ってない」

サラは今にも泣き出してしまいそうな顔になる、そんなサラに手を伸ばすコマチ。

「サラちゃん」

「何...コマチくん」


「コレ僕とお揃いの焼きそば、」

袋の中を漁り手渡したのは、

コマチと同じ種類のゲームだった。


「ええぇぇ!いいのコマチくん、」

「うんさっき確認して分かったんだ予備に持って来たお金で買えるって、

分かるまでは変に期待させちゃうと可哀想だから言わなかったんだけど。」

「本当に?!ありがとう、コマチくん!」


泣きそうな顔からすっかり変わり嬉しそうに受け取ると、


少し離れたとこにいたコウキに走って背中に飛び乗り、嬉しそうに報告している。

「うおぉぉ良いじゃんサラ、焼きそばなら俺とテリモン片方しか出ない奴交換しような。」

「うん!コレで私も遊べる。」

「アハハハ!早くやろうぜ!」

コウキはサラをおんぶをし直して歩いていく、


キミに渡して何も無い片手を空(くう)に伸ばすと、なんと無く自分は一人なんだと思う、

自分はそういう運命なんだって思ってた

その方が楽だった。

昔から今までずっとそうして諦めてた。

「アッッ」


でも唯一心から仲良くして空っぽなところを埋めてくれた友達...は見捨てなかった、ただ当然の様に隣にいると思っていただけだった。

そして思ったより遠くにいた友達に普通に声をかける。


「早くこいよコマチ!」

「コマチくーん早くー」


「ああ。」

僕は君に引かれた、そして自分の居場所はここなんだって思ってた。



そんな昔話に花を咲かせていた、サラとコマチの会話。

「フフフ、もう何言ってんの」

「いや本当だって俺その後すぐに親に頼んでつけ麺の方も買ってもらったのに、その時には誰も、遊んでなかった。」


「酷い!そんなに早く終わってないでしょ。

それなら昔二人で話したい事があるって何回も一人ハブかれてたけど?」


「違うってアレは何回も言ってるじゃん、

ただゲームしてただけだって!アハハハ」


「本当かな?まあ信じてあげるけど。

フフ、私たち昔から変わんないね。」


サラが憂に満ちた顔でそう語ると、

昔の   の様に大きく笑うコマチ。


楽しそうに話す二人を知る由もない、別のクラスのコウキ。


春、もう中学校最後の年

あの別れから誰とも帰らなくなった

コウキから距離を空くようにした、

そして次第にみんなと話さなくなった。

クラスもバラバラになり担任も変わり中学生活最後の一年が始まった。


一人窓の外を見続ける日々、

自分の変化には疎いことは昔からわかってたでも、最近は特に周りの変化には敏感になったな。


あんなに酷いことを言ったのに

誰も居ない、オオトリの居ないところで

落書きを綺麗にしたり、自分も気づかない様に優しくしてくれる、皆んな。



皆んなを否定した、アレが一番の勇気がいる事なら今日僕は1番の衝撃と友情を受ける事になる。


誰も居なくなった帰り道、

コウキは懐かしい声で呼び止められる、

勝気な声だった。


「コウキ!」

振り向くと、そこに立っていたのは、

カツキ、マドナ、デタオ、  サラ。

カツキが前に出てデタオもそれに続くが半歩離れたとこに立つ、マドナとサラはより後ろに立つ。


誰も何も言わない時間が流れ、

夕焼けが沈み出して

ついにカツキが話し始める。

「コウキ俺らで話し合ったんだ、それでさぁ、俺らコウキのために、」


あんなに酷い事を言ったのに、俺を見捨てないでくれた友人との

最高の頂(いただき)の景色が、



「やめる事にした!」


「......?」


一言で一変した。


カーカーカ〜

アホーアホ〜

待ち続けていた僕を鳥の嘲笑う様な鳴き声が響き、赤黒く染まった僕を見下ろす。


「コウキも言ったじゃん、近づくなって


だから俺らを助けると思ってさぁ..頼むよぉ

コウキィ」


皆んな幸せな顔はしなかった、皆んな悲しそうな顔をしなかった。

みんなが分かってくれるだろと言わんばかりの顔で僕を観てくる。


カツキ、マドナ、デタオ、ッッッッハ...


こんな時、サラなら

そんな一抹の思いで眼が動くと、

一人感情のはっきりしない複雑な顔をしているサラ。


「コウキくん、」


サラの手を差し出される、

その手を取るすると優しく握られ上下に振られる、何も考えられなくなってそう揺られていると突然。


「ごめん喧嘩してたでしょごめんね」


え、何言ってるの?

え...サラ?...

違う......違う、違うッ!

欲しいのはそんな言葉じゃ無い!!

サラ、サラ!...あの時の一言を言って...くれ


「....これで最後だから、ごめんじゃあね。」


みんながさっていく中で、

僕だけはただ座り込んでしまった。


ボサボサになった汚れた髪を自分で掻きむしり、孤独からくる寒気で体が小刻みに震える、重圧に屈したように見えるが、

本人は感じていた重荷が降りたように背中が軽くなった感覚を。


俺だけが耐えればいい話だ、

不幸なんて今に始まったことじゃ無い。


そんな心境のコウキでも心の中は浸水して

何か、自分の中で何かが小さく音を立ててヒビが入る。


同時に傷がまるで僕の心の様子と同じく

誰かの言葉と手で崩れていく。


「どぉしてだよ...みんなぁ」


テレビに砂嵐と途切れ途切れの音声が流れる

どこかの大きい道路が通り道路全てを埋める様に、各国のカメラやキャスターが並ぶ。


「ザーザザーこちザー米国上ザー空

ヒビがザー空を埋め尽くす様に広がってしまいました、現在は強風が吹いているだけです、通信状態も悪い様ですね、


世界の歴史でも初めての超常現象これからどうなるか、いちキャスターでは想像もつきません、ですが危険であることは分かります。

避難誘導も始まっているのでこれを観ている皆さん、情報を拡散してください。


米国首都地区ナズナキャスター

こちらからは以上ですザーーーーーーー」

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