第5話 違い
今日も暑い中いつも通りの1日を過ごした。
普段通りサラに話しかけ様と声をかけようとした直前で喧嘩のことを思い出す。
手が止まり、声が出なくなる。
何もしていなかったが教室の暑さで肌が湿っていた、不快そうに着ている服の襟で汗を拭うサラに目が吸い込まれる。
視界には入っていると思う、そして今サラを見ていることもわかるはず、でも見ようとしない、してくれない。
俺は何もないフリして離れた席に座る。
暇な授業中コウキはいつもなら校庭を眺めるはずが午前中の夏の日差しを直視する事を諦め、今日は何となく自分が映る、
机に目が吸い寄せられた。
新しい机こんなに綺麗でピカピカなのにこの机の傷、少し変だな?
見ただけでは傷かも分からない、そう思える程に綺麗な真っ黒の一本線だった。
そう言えば小学校の机ってよく穴が空いてたな、なんのためにやってるのか分からないけど今でもやってる奴居るだろうな。
コウキは綺麗な机が欲しかったのにコレ、
待ち望んでいたゲームソフトが思ってたのと違った時の気持ちわかるだろうか、
...そう諦めがつくんだ。
もう良いや.......
コウキも無心で机の傷を穿り《ほじり》始めた。
やりたい訳でも無いけど、
何となくもう綺麗な机じゃ無いからと思い
少しでも好奇心が刺激される方へ、
子供の暇つぶし。
黙々とやり始める最初の方はシャーペンで傷をなぞるだけだったが、集中していくと
有りとあらゆる尖った物で削る。
「...ウキ!...コウキ!」
あんなに長かった時間があっという間に過ぎ、皆んなの呼びかけにもコウキは気づかなかった。
「ああ、ごめんぼーっとしてたわ...
あっ、やべー傷広がっちゃったよ。」
自分の机の状況を見て後悔しているとカツキはコウキに感心する様にからかう。
「コウキもう机傷つけたのかよ。やるな〜」
「ちげーよ最初から...」
教室を見回しても、誰も居ない
話している男子3人しか居なかった。
「あれ?皆んなは?」
「あ〜サラは先帰ったぜ、マドナも一緒に。」
「そうかじゃあ俺らも...帰るか。」
夕焼けに照らされても、
真っ黒な傷。
机には木のカスと少しだけ広がった机の傷があった。
その夜コウキは家族と夕食を食べていた。
「どお、美味しいでしょ。」
「うん美味しい!」
会話をしながら楽しく食べる、
夕食中もずっと付いているテレビから耳を傾けているとニュースが流れていた。
「ーーー学生失踪事件
ーーーーー木容疑者は未だ逃走中
ーー和の世界を語る討論会」
コウキは気になるワードが聞こえてきて
テレビの方を見る。
「米国一部地域で空中に超常現象な
ヒビを見たと多くの通報がありました。
こちら撮影された映像です。」
そこには傷を見る。
雲一つある青空の距離感もわからい程遠い
空中に不思議な真っ黒のヒビが走っている、
似てる、自分の机の傷と、似てる?
机の傷と瓜二つの、いや全く一緒のヒビ。
コウキは不思議な縁の様なものを感じていたが、心の中ではそんなこともあるんだなと納得していた。
学校に行くとニュースの所為か昨日以上に傷が気になる、
昨日のニュース、
テレビに映った傷を想像して照らし合わせながら傷を指でなぞる。
すると指に木のカスが乗る。
最後掃除して帰ったのにまだ残ってたのか、まあ、いっか。
フー
コウキはサラとの喧嘩を思い出す。
そろそろ俺から謝るか、サラ頑固だから絶対謝んないし、仕方ないな。
カリカリ.....
どこかで聞いた様な何かの音がする、硬いものを...削る様な...
手が動く感覚がある、目線を下げると自分がまた傷を広げている事に気づく。
「ああまたやっちゃった、ハー」
コウキは小声で自分自身に
呆れてため息をつく
そこに、カツキがまたやって来る。
「またやってんのかよ!
お前タムラに怒られるぞ。」
カツキの大声が自分にだけ聞こえる。
「うるせぇよ、 カツキ」
「優しく注意してやっただろうが!」
教卓に立っている先生が騒いでいる2人を注意する。
「はーい二人とも、ちょっとだまれー授業中なー。」
家への一直線道、
家のカーテンが開いていて隙間からテレビが付いていたのが見えた。
家族も普段見ないのにと、不思議に思って窓から中を覗くとテレビの前で固まっている大きな背中が見えた。
「ただいま〜お父さん、どうしたの?」
「おかえり、いや〜不思議なことも起きるもんだなぁ」
そう言ってテレビを指さす、
画面を見るとニュースや番組が
全部謎のヒビの事で埋まっていた。
「米国の北西地域で未確認のヒビが見えたと言う情報が今入りました。
このヒビは昨日放送されたヒビが急激に肥大化した物だと言われています。」
肥大化した?
「そして真偽不明のものですが
鳥がヒビに吸い込まれる
動画がネット上で拡散されています。」
ニュースアナウンサーが画面を切り替えると
黒いヒビが少しずつだがビキビキと広がる。
そして空にヒビが走り大きく広がった
瞬間飛んでいた蒼い鳥が、
X字のヒビに吸い込まれた。
アレは授業中削った場所だ。
「今世界中で話題になっている原因不明の
ヒビですが人的被害は無いそうです。」
ニュースが終わるが別の番組のヒビのニュースが始まる。
何が起こっているんだ、
コウキは固まってしまった。
「怖いなまるで、
”ブラックホール”みたいだな、」
「...お父さん、ブラックホールってどうやって起きるの?」
「ん?ブラックホールか?う〜ん難しいな、
宇宙で、星が壊れる時に、超新星...いや大きい爆発が起こってその後に何もかも吸い込むブラックホールが生まれるってとこかな。」
「そうなんだじゃあ何で真っ黒なの?」
「それは、何でも吸い込むって言っただろ
物の見える原理は分かるか?」
「光が反射して自分の目に入るとか..でしょ」
「そうだ、その光も吸い込むから何も見えない真っ暗になってるんだ。」
「不思議だ。」
「だろ、お父さんもこう言う不思議な物
好きなんだよ。」
そう嬉しそうに話す父さん
「そうなんだね。ハハハ、」
コウキは少し気まずそうに、
乾いた苦笑いをしてその場を後にする。
自室に戻っていつもは閉めていない
鍵を閉め慎重に椅子に座る。
真っ黒で引き込む。
...偶然なのか?
あの傷が何なのか分かんないけど
何かあぶない物なんじゃ無いか。
怖い
そんな事を寝る時まで思い詰め、
不安で胸を締め付けられる感覚をはじめて経験した。
「起きなさい、コウキ!」
久しぶりに目覚めが悪かった、
目が覚める気がしないでベットに潜っているとお母さんが起こしに来た。
「どうしたの、いつもはそんな事ないでしょ体調でも悪いの?」
「ううん起きるよ。」
体が重くて、怠くて体を持ち上げるので精一杯だった。
それでも学校に行くと、
まだ謝っていないのかと、
皆んなに囲まれる。
「そろそろ謝らないと、サラ
ずっと1人だぞ。コウキ」
悲しそうにカツキが話して来るが、
コウキは傷の事でいっぱいになっていた、
怖いけど何処かワクワクもしていた。
「ウンウン、後で謝っとくよ。」
コウキは愛想笑いしながら皆んなに言う。
「まあ...謝んなら良いけど早くしろよ。」
「そう言えばコウキ、アレ知ってる?」
デタオがコウキに質問する。
「アレって?」
「ヒビの事今世界中で注目されている未確認物体、」
そう言えば昨日もクラス中で
みんなヒビのことを話していた。
「僕はねアレは科学的な物だと思うんだ
専門家は自然現象とか言ってるけど、
アレは科学的に作り出されたワームホールだと思うんだ、コウキはどう思う。」
「...俺は何も訳わかんないな」
「そうか...残念だ。」
カツキはデタオが長話しを始めた直後に、
面倒くさい話を聞かない様に席に戻っていった。
「じゃあ授業だし席戻ろうぜ。」
大事になってきてるな、サラとの喧嘩
皆んな俺に言ってきたな、俺が悪いのかな?いや、でもアレはサラが
サラの事を考えていると。
授業で使っていた鉛筆の
気づかずに動かしていた腕に
不意に力が入った時
バキッ!
折れる音が響く
手元を見るとことの重大さに気づく。
あ、やばい、鉛筆じゃない。
今までは傷が走っていただけが
ついにヒビから小さい穴に。
冷や汗を浮かべているコウキに
気づいた先生が様子を聞いて来るが、
「いや...大丈夫です」
弱々しい声でそれしか言えなかった。
授業が止められてクラスのみんなが
騒がしくなる中、
コウキは静かに目を閉じていた。
「ザワザワザワザワ」
「チッ」
その中で小さな舌打ちを
聞いた様な気がした。
コウキは家に帰ると
テレビをつける。
「速報です、...え!?
一夜にして米国の一部街が消えました。」
ザーザーザーザー...
!?.....
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