第3話 違い


白衣を着た先生が大きい二枚式の黒板の前に立ち、八人は余裕で座れる大きい机が均等に並ぶ、その机を囲むように皆んな背もたれの無い疲れる椅子に座っていた。


「えーじゃあ今日の授業はー」

先生が授業の説明をしようとした時

1番前の席に座っていた1人が立ち上がり声を上げた。

「爆発ですよね!」

目をキラキラさせたカツキだった。


同じ机にいた皆んなは焦った顔をしたり

呆れた様にため息をついたり

頭を下げて肩を振るわせている。

「バクハツ?違いますよ。」

先生が淡白に答えると。

その一言で、コウキの押さえていた笑い声が吹き出す。


「クハハやっぱり、タムラに騙されてんだよ。」

「え〜爆発じゃねーのかー」

腹を抱えて笑うコウキを見て、笑われている本人は残念そうに椅子に座り直した。


先生が少し考える様な仕草をした後、

「カツキくんそうだなー爆発は来年やりますよ、だから今日の授業は良く聞いておくと良いかもしれません。」

嘘か本当かわからないが、先生はからかっている様に見える笑顔で答えた。


「マジですか!?」

それをまた単純に信じるカツキ。


「ハハハ楽しみにしていてください。では話を戻して今日の実験ですが、化学式を見ていきましょう。」

先生はは生徒の小話から流れる様に授業に入った。


コウキ達は理科の授業、時間を忘れて楽しんだ。


「そうだなコウキくん、この問題は分かるかな。」


当てられたコウキは問題をすぐに理解して答える。

「ハイ、〜〜です。」

「うん正解よく出来たね。」

何を隠そうコウキは科学系の事が少し好きだった。振り返ると皆んなが見られていた。


「コウキすげーな」

「すごいねコウキくん」

そんな褒め言葉の中


「そんだけだろ」

問題児オオトリ、後ろの席から嘲笑う様に感じる不快な声をかけられる。


「そこ!静かにしなさい。」

温厚な先生が珍しく指を刺して声を荒げる。



「何言ってんだよ。」

「いつも偉そーにして。」

「うるせーよ。」

「チッバカトリオが、」


「「謝れよ。」」


先生の声に促されて、クラスのみんなが大きく声を上げる。

いつもだったら問題児オオトリの害が自分に来ない様に触れないみんなが。


コウキの周りにいる人が全員、

オオトリの方を向きいつもの鬱憤を晴らす様に言葉をぶつける。


「お前ら知らねーからな、」

対面にオオトリがいるオオトリは、不機嫌そうに、肘をつきそっぽを向いた。


みんなが怒ってくれる。


俺はみんなとも仲良くしてるから

助けてくれる、皆んなありがとう。


アイツとは違う


そんな事があった学校だけど、それ以上のことは何も起こらず、その日の授業が終わり帰り道の皆んな。


アスファルトが敷かれ、無駄に街頭が多い思う右には一軒家が並び左は少し先にでかい小学校がある大きな通り。


「あー疲れた、マジで腰が痛えー」

カツキが腰を反らせながら

ヨボヨボの顔で掠れた声で言う。


「おじいさんみたいだね。」

「確かに老人みたいだ。」

マドナとデタオが、カツキの姿を見て、

笑い合う。


「オイジジイ!」

コウキがカツキの近くまで行き、

膝カックンを仕掛ける。


カツキは見事に引っ掛かり、

アスファルトに手をつき、倒れる。


すぐに立ち上がり、

コウキを睨んで叫ぶ。

「テメー!」


「膝が悪いのは本当にジジイだな。」

コウキの挑発に乗るかと思われた、

カツキは少しの間静かになる。


「そう言う事だな、いいだろう。

ジジイには出来ない回し蹴り!」

カツキは、コウキに回し蹴りをかなりスロウモーションで当てる。

「ほらなジジイには多分出来ない動きだろ。」

「スピードはジジイだったけどな。」

そんな会話をしている中、


皆んなが楽しく話す、一歩後ろを歩く1人に皆んなの目が行く。

サラを伺う様に1度目を合わせると、全員が同時に頷き、動き始める。


「どうしたの...サラちゃん。」

マドナが優しく話しかける。

「何黙ってんだ。」

カツキがからかうように声をかける。


そうすると、サラは少し顔をあげ皆んなの顔を見回す。

「コマチくんかわいそうだった」

もう一度顔を下げてそう話す。



「またそのことかよ、サラが競う必要もないだろ。」

カツキは少し忠告する様に言い聞かせる。

「そんな事どうでも」

コウキがふと呟くと、

サラの怒りのスイッチにふれてしまう。


怒った様で悲しそうに声を荒げる。

「そんな事って」

「アイツなんて知らない」

二人は睨み合い、声を荒げる。

「アイツじゃない!だってコウキ!」

今にも落ちそうな涙を目にため

泣きじゃくりそうな声で


聞きたくないその一言に、

コウキは目を瞑り全身が強張る。



「コマチくんは幼馴染でしょ!」

声が大きく響く。

頭の中で何度も何度も響く。


違う

「...幼馴染な、だけだ、

もう一年以上喋ってない!」

コウキも精一杯声を張り上げる。

違う

「でも!友達だったんだよ!

あんなに3人で仲良かったじゃん!」

違う

「あんな奴!要らなッ...」


「コウキ」

一言、何か大きな事を言いかけた時、

カツキの弱気な声が聞こえる。


2人の体を見ると何度も止めようとした様な服のシワ、涙、痕跡が2人に残る。


気づかなかった。


「...ごめん皆んな。」


そんな声は周りの生徒は聞き流し、

すぐに周りの雑音がかき消していく。



「...俺家近いからそろそろ行くわ、じゃあ。」


そんな最悪な雰囲気の中

コウキはいつもだったらもっと先まで一緒に帰るが、今日は早めに皆んなと離れて、一言言うと走り去って行った。


「...ただいま」

バタンッと玄関の扉が閉まる。


コウキは一直線で自室まで行き、

荷物を床に捨ててベットに寝転がる。


数秒顔をベットに埋めていると、身体をウニョウニョ動かし始めて、そのまま、体を半回転させ天井を見上げる。


「サラ...」


時間が経ち、夕食の時間帯

「ご飯だよー」

お母さんの呼ぶ声で、ぼーっとしていた意識が戻り、家族と食卓を囲んでいた。

食卓には色とりどりの、料理が並ぶ。


唐揚げとコロッケ


玉ねぎと豆腐、アサリ、の入った味噌汁


サラダ、


二切れの梨


三つずつ全てが均等に並ぶテーブル

なぜか自分の好きなものばっかだった。


「いただきます。」

家族と同時に手を合わせて

食事が始まる。


「学校今日は何かあったの?」

俺のお母さん

いつも優しくて、いつも勘がいい

よく話す話題だが、今日はそんな核心を突く会話に、自分のできる最大の笑顔の仮面を被って喋る。


「今日は、んー休み時間でねーー」

皆んなと自分の話が思った以上に盛り上がり、すぐに時間が経ってしまった。


「それでねコウキ、

あっ俺のことみんな守ってくれたんだ!」

コウキは目を輝かせながら、

手をブンブン降ったり全身を使って、

家族に自分の事や会話をして楽しんでいた。


家族は全員、自分の子が嬉しそうに話す顔を見るのが幸せそうに

まるで母の様な優しい目で見て居た。


「そうなの、みんなと仲良いのね。」


「そんなんだ!

特にカツキ、マドナ、デタオにあと...」

無邪気に話そうとして、記憶から消してしまっていた一人を思い出すと、

言葉に詰まってしまう。


友達。


「...ずっと仲良いものね。サラちゃんでしょ。」

言葉に詰まったコウキを見てお母さんは、

赤ちゃんの時から知っている仲のいい幼馴染の名前を言う。


「そうだった、ちょっと..

のどが乾いちゃって。」

コウキはのどをケホケホとわざと鳴らして親友を言えなかった事を誤魔化す。


「あらご飯冷めちゃうね、食べようか。」

話に耳を傾けて居たお母さんは自分の少し冷めた味噌汁を啜ると、新しくついだ味噌汁を渡してくれた。


そんな家族愛のある夕食を食べていると、

ふとテレビのニュース番組に目が行く。

「ニュースをお伝えします。

ー付近に台風が近づいて居ます。

世界の酸素量が減少して居ます、専門家の方々のお話を伺います。

ーー学生を狙った誘拐犯が」

「物騒ね〜なんか最近こう言う

事件多くない?」


「んん...そうだな。」

父は無関心に答える、


コウキは夕食を食べ終わると、

出来事がいつもより詰まった濃い1日が終わった。


「おやすみ」

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