アクションスタート!
開き開けた扉の中には巨大なドーム状の空間だった。
鎖の絡まった柱が規則的に壁に埋め込まれ、青・赤・黄・緑・紫色のステンドグラスのような天蓋が埋め込まれている。
広く、でかい
その中央に、三体の巨大な影。
左右にストーンゴーレム。
そして一番奥に膝を付いた形で佇む鉄製の巨像……<
ヨシ。
危惧していた問題は一つ回避した。
(GO!)
インカムでの指示とわかりやすく右手を振り、走れというサインを出す。
シンクレアは少しだけ躊躇して、それ以上の速度で走り出した。
いい子だ。
(カメラを意識するな、自分が見ている)
それとやや遅れるような速度で並走し、左側から彼女の後ろ姿を見ている。
(戦い方のタイミングは自分で選んでいい)
「――
シンクレアが叫んだ。
指を鳴らして、もはや慣れた作業のように掌から光を放射、武器へと変える。
(グルージンは斜めに振り抜け!)
それをシンクレアは横薙ぎに振り抜こうとして、己は指示を飛ばした。
「はえっ?!」
一瞬の躊躇から、手首が回る。
光が薙ぐように右切り上げ、地響きを上げて迫るストーンゴーレムを一体両断する。
さながら豆腐でも切ったようなあっけない切り口、だからこそ。
(斃し方が
ついでにいえば斬撃の基本は垂直よりも袈裟斬り、逆袈裟のほうが当たりやすい。
体幹を狙えない上下左右だけだと見切りが易いし、クルージンの切れ味ならば当たるだけで致命傷だ。
中心点、体幹を狙うような技術はこれから身につけていけばいい。
「ギリギリで言わないでー!?」
(事前に言い含めすぎても覚えきれんだろう)
左側のストーンゴーレムにクナイを投げて、
カンっと音を立てたところをカメラに映さないように動かした視線で見届けて、右側にステップ。
(次来るぞ)
己とストーンゴーレムの対角線上にシンクレアを挟んだ。
「ばうわー!?」
威勢よく突っ込んでくるストーンゴーレムに慌てて光の矢を投げつけるシンクレア。
複数穴が開く。が、止まらない。
「ちょ!」
クルージンの光撃は切断力と貫通力に優れているが、ストッピングパワーはないに等しいようだ。
文字通り光、溶解力のある粒子を叩きつけているだけで、それ自体に重さはほぼない。
慌てて次の光撃をぶつけるが、まだ石の巨像は止まらない。
一歩踏み込み、ひび割れて。
二歩進み、大きく陥没し。
三歩進んだところで砕け散った。
(今のはもう少しチャージするべきだったな、大型の敵には相応の威力で対処が基本だ。だが自然な顔でいい感じだったぞ)
「今自分がやったこと省みて言ってくれないかな? かな!」
知らぬ。
どうせ死なないのだ、撮れ高のためになら多少は危険を背負うべきだ。
それが
一応踏み込めるように足は溜めていたが、上手く行けたのでヨシ!
「残りはボスじゃあー!」
じゃあ!?
気合をいれすぎて美少女あるましき掛け声を上げているシンクレアに、ちょっと驚きつつも壁に向かって飛びつく。
ドーム状の壁だが多少の窪みもあるし、指と足先を引っ掛けられればしがみつく程度は余裕だ。
急ぎなら鎖付きの壁から駆け上がるが、構図調整ならこちらのほうがいい。
(そろそろキーパーが動くぞ、距離を取りながらチャージしろ)
カメラの倍率を操作し、ピントを合わせながらインカムで指示。
シンクレアがバックステップを踏みながら距離を取るのをみる。
そこから伸びるように
純鉄の巨像が地響きを立てながら立ち上がる。
高さにしておおよそ8メートル大。
その重量は200トン弱、その全てに一切の骨組みも隙間もない金属の塊だからこその密度重。
巨大さを誇るだけの大型クリーチャーや、速度が疾いだけの猛獣タイプなどとは比べ物にならないほどの頑強性と破壊質量を兼ね備えている。
過去何人ものタンク
しかも高純度鉄――工場設備でしか本来作れないようなこの高純度の鉄は、通常の鉄と比べても延性が高く、壊れにくい。
本来の攻略手順としては急所となる
クルージンの破壊力ならば。
「出オチだ、おらぁ!!」
踏み込み、高々と
その軌跡に沿って光の残滓が舞う。
既にクルージンの応用、光圧での加速を覚えたのか。
立ち上がる巨像の眼前まで跳び上がり、光の少女は両手を掲げる。
鋭く、真っすぐに、光が迸る。
「 ァ ッ !」
光が線になる。
数百トンの鉄の塊が切り裂かれた。
一刀両断。
その言葉がふさわしいほどに切り開き、彼女はゆっくりと着地して。
「いぇーい!」
晴れやかな笑顔で、汗ばんだ顔で笑ってVサインをした。
己はそれを見て、見届けながら、視線を奥に向ける。
「勝った! らっくしょ」
壁から蹴り飛ぶ。
全力でシンクレアに向かって疾走る。
距離が遠い。
「ちょ、なに!? なんかし」
「下がるな!!」
下がろうとしたシンクレアを叱咤する。
――距離が遠い。
その背後で、斃したはずの巨像が動いていた。
否。
巨像が崩れながら浮かび上がる。
「は?」
数十の鉄の塊が虚空に浮かび上がっていた
「――”テコ入れだ”!」
見上げた彼女に向かってそれが降り注ぐ。
己の知らない
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