出るもガチャ、出ないもガチャ
まて。
落ち着こう。
落ち着いて考えて……?
「なにをいってるんだてめー」
「二度も言った! タメ口で!!」
「いやだって、なあ」
何を言ってるんだこいつは。
としか言いようがない。
「ガチャって、お前ソシャゲやりすぎではないか? 適度なギャンブルは当たった時は気持ちいいと思うが、やり過ぎは破産するぞ。パチンコで溶かすようなものだ、やめておきなさい」
「信じてねえー! この人、ボクのこと信じてないよー!」
いやだって。
うん。
「くそ、証拠出してやる! 出ろ、カイちゃん!!」
声を出すと同時にパンッと少女が手を叩く。
それと共に少女の肩後ろから現れたのは小さな小人だった。
頭の上に船の舵のような文様の光の輪、筒のようないや底がない壺の上に腰掛けて、モチのような球体を胸に抱えた女の子。
ナイトキャップのような帽子を垂らしているそれは、ぱたぱたとキューピッドのような羽根を羽ばたかせて浮いていた。。
『クロック・クロノス・カイオス・カオス。次のカイオスタイムまであと一刻』
「ボクの能力を説明して!」
『時は金なり、承知しました。ユーザーのレガリアは≪
カイちゃんと呼ばれた小人がつらつらと発言する。
カイオスだからカイちゃんなのか?
「これを召喚するのが、君のレガリアなのか。変わってるな」
「え? レガリアって手に入れたらオペキャラついてるもんじゃないの?」
「いやそんな話は聞いたことがない」
そんな形式だったらもっと有名なはずだ。
少なくとも元職場のエリファからは聞いたことがない。
「ふーん。ま、いいや。どうよ。信じた?」
ふむ、これだけで確かに信用は出来る。
出来るが。
「いやまってほしい。
「いいよん」
ふんと鼻息を鳴らして胸を張る少女を横目に、カイと呼ばれた小人に己は問いかけた。
「レガリア一つを使用出来るというのはどういう意味だろうか?」
『レガリア一つを使用出来るというのは、レガリアを一つ使用出来るという意味です』
定形返答……だと。
おい。何故そこでドヤっとしてるんだ、お前は。
「使用出来るレガリアの制限はあるのか」
『
「シデロスとは?」
『現行人類です』
現行人類。
……レガリアを与えている神々は人間をシデロスと呼んでいるのか?
少し気になったが、今は必要なことではないので横においておく。
「使えるレガリアの条件は?」
『ランダムです』
「確率の偏りやルールは? 一度使ったものがだめとか出やすいなどは?」
『運命が導くことでしょう』
「…………使えるレガリアは今他のユーザーが使っているものも使えるのか? 生きているのとか死亡しているもの、あるいは誰かが今後得ることのあるレガリアなどは?」
『全て発生します』
「今彼女が得ているレガリアは、<リア・フォルテ―ル>のものと同じレガリアか?」
『返答不可能』
「得られるレガリアの種類は何個ある?」
『返答不可能』
「……」
だがある意味良かった。
この能力でこの返答が許されたら彼女はもちろん俺も生きて帰れないところだった。
「どったの?」
わかってないなこの顔は。
「いや大丈夫だ。少し立て続けに質問をする。得られたレガリアの性質、性能に差はあるのか?」
『ありません。同一の使用権限を得ます』
「与えられたレガリアのメリットとデメリットを教えて欲しい」
『カイロスによって与えられたレガリアの使用制限時間は一刻……変換、この
「二時間以内に別のものに切り替えることは出来ないということでいいのか?」
『原則的に出来ません』
「ダンジョンから脱出した時、化身から肉体に変換される。この場合はどうなる? 生身でレガリアを使えるのか?」
『どちらも現状出来ません』
「ダンジョンから出たあと、また同じダンジョンもしくは違うダンジョンに入ったら違うレガリアは使えるのか?」
『出来ません。ダンジョン内部時間で120分固定されます、これはダンジョン脱出後にもユーザー経過時間によってカウントされます』
「カイロスは120分経ったら自動的に解除されたりしないのか?」
『能動解除はユーザーの意思で、受動解除はカイロス
「なにそれこわ。怖いこと言わないで!?」
『それらに該当する状態からの復帰後、再抽選が可能となります』
「なるほど」
つまり情報をまとめると。
カイオスは使用するごとに全てのレガリアから一つランダムで選んで使えるようになる。
これは今他のシーカーが得ている得ていないに関係がない。
得たレガリアは120分、つまり最低二時間固定される。
これはダンジョンに出入りしたりしても変わらない。
さらに120分以上経てば再抽選が可能。
……なるほど、ガチャ召喚というのは言い得て妙だ。
「どうよ、どうよ?」
少女がどやどやしてる。
「得たレガリアの能力、その具体的な概要はどうやって知ればいい? お前からの解説が必要なのか?」
『肯定・カイニス・タイムによって与えられた<
「どうよ、この強い能力」
どやっと胸を張る。
どうでもいいが、己に対して胸を張る行為は見上げられる必要があるのでのけぞりだぞ。
「なるほどだ。たしかに強い、というより異常だ」
「でしょでしょ? どうよ、このチートパワー! おどろけ~!」
そして確信出来ることがある。
「このレガリア、間違いなく未登録のレガリアだ」
こんな特異的なレガリアがあったら間違いなく記憶に残っている。
だからこのレガリアが政府未登録のものだというのはほぼ間違いない。
その意味でもさっさと登録、申請をしないと危ないだろう。
その辺りもここから出る時には指導するとして。
「今更な話だが、君の名前を聞いてもいいか?」
「え?
「…………………………………………シーカー名でいいんだが」
サラッと言ったな、本名。
だめだぞ。
初対面の相手に、しかもダンジョン内では。
「え? あ、あ、あー! 忘れて! うん、忘れろ!」
「わかった、忘れる。で名前は?」
「シンク! シンクレティ! シンクちゃんって呼んでいいよん☆」
ピースサインを顔の前に掲げて、そう少女――シンクレティは笑った。
「了解した。シンクレティだな」
「シンクちゃんなんですけど!」
「それで一つ提案というか頼みがあるんだが」
「なーに?」
コテンと首を傾げる仕草があざとい。
だからこそ好都合だ。
「己はカメラマンだ。このダンジョンから出るまで俺の被写体にならないか? シンクレティ」
「はえ?」
今も回しているカメラのレンズ越しに移る彼女の動きは、実にカメラ映えしそうだ。
○もりあがってまいりましたw
○いいね、いいね。このまま別れたりしなさそう。
○キマシタワー?
○判断が早い(バシーン)
○危うくバットエンドになるところだったぜ
○これがときめき?
○トゥンク
○お前ら心臓動いてる系なの?
○こちとら燃やされても心臓太もも移植すれば生まれ変わる系だし
○心臓を捧げよ
○やばんすぎる
○はてさてどうなるか、こうご期待
○早く本番になってほしいー
○もっとみんなで愉しみたいぜ
○さあいざいけシンクちゃん!
○我々は貴女のご活躍を心よりお祈りしている者共です
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