第4話 過ごす日々 異国の人達

しばらく教会での生活に勉強などをして過ごす柚葉ゆずは

週に2日、電話交換手としての仕事も始めたのだった。


「はい、交換手です 尾崎家への電話ですね 繋ぎますので番号は?」

「よろしく頼むよ」「はい」

この時代、電話は直通ではなく、電話局の交換手が間に立ち

電話をつなぐのであるが

不慣れだったが、どうにか仕事をこなしてゆく柚葉


休み時間にお茶を飲みながら教会で貰った英語の本で勉強も少し

本を熱心に見て頑張っている

やがて仕事も終わり、帰宅の時間

「では、失礼します」「お疲れさん柚葉ゆずはちゃん」


夕暮れの田舎道を駆けてゆく柚葉

「教会に帰ったら、タイプと英語の勉強の予習をしなきゃ」柚葉の呟き


柚葉の荷物、一枚の大きな布で包まれた荷物には

ハンカチなどの日用品の他にも、英語の本


英語は教会の異国、外国のシスター、マリアンヌから教わる事になっている。

もし英語を覚え、タイピングの仕事が出来たなら 

待遇はよくて、かなりの余裕ができることになるのだ。


「きゃあ」石につまずき倒れそうになるが

「大丈夫かな」「マドモアゼル」

逞しい男性の手に身体を支えられた柚葉


「あ、あの」見れば異国の二人の男性

一人は赤みと茶色の色合い、金の髪、細やかなくせ毛の男性、青年

一人は細身でまだ少年、長めの黒髪をひもで縛っている

青に近い色の瞳が印象的


「こんにちはマドモアゼル、ああ、お嬢さん」「こんにちは」

「気をつけないとね こんなに綺麗な顔や体に怪我でもしたら大変だから」

「あ、有難うございます」


近くには馬が二頭、木に繋がれていた。

「近くに要件があって、その帰りなのですよ」黒髪の少年

「綺麗な牧歌的な風景の場所だから、馬でお散歩も兼ねてね」異国の青年


こけそうになった時に落ちていた柚葉の荷物、布が緩み

英語の本が道に‥

「おや、この英語の本」青年「僕らが教会に渡した本ですね」少年

「ええ?」柚葉


「家は?」「あの教会です」

「ふむ、送ってあげる 教会のシスター・マリアンヌとは親しいから」


「えええ!」柚葉


青年の方と一緒に馬に乗り、異国の男性の腕でドキドキが止まらない柚葉

「馬ははじめて?」「あ、はい」赤くなる柚葉

そうして無事に教会まで送り届けられた柚葉


「じゃあ、またねお嬢さん」「マドモアゼル」

二人の乗った馬達を見送り、手を振る

柚葉は頬が赤くなったまま

まだドキドキが止まらない「また、会えるかしら」柚葉


「お帰りなさい柚葉」「ただいまシスター」

「先ほど、ジェローム様たちの馬に乗っていたようですね」


「ジェローム様‥」柚葉

「ええ、そうですよ」「とても良い方たちです 

本国でも大変お世話になりましたの」


「悪い人達から救ってくださいました 今は貿易の仕事を‥

元は軍人でもあって」シスターマリアンヌ


「そんなにすごい人なのですか?」「ええ、柚葉ちゃん」


「異国を旅することが多い、貿易商の貴族の方ですのよ

寄付も沢山‥ご支援いただきましたわ

こまごまとした日用品に食料とか‥それに本に服も」


「寄付、お金も5千円(当時、現在・約200万円前後)」


「えええ!」「ああ、いけない つい」シスターは口が滑ったようだった。










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