第5話 Iランク望鏡者パーティー天ノ瞳

 Iランク望鏡パーティー天ノ瞳ソラノメは魔術師クゥミを加えてGランククエストを受け鏡の欠片の中へと入り込んでいた。


「アイスランス」


 新調した大杖から出力された氷の槍は次々とターゲットへと突き刺さる。


 宙を浮く白いトンボの群れは貫かれていき。


 大杖に紅いローブ紅い魔術帽、クラシックな服装の魔術師の上辺には大量の氷の槍の束が浮遊し待機している。


「本日のメニューはこれだけじゃ」


「いつものような……がない! 格段にやりやすい」


 単騎で突出し、刀で斬り刻んでいくカスミ。武装した生気のない白いマリオネットを次々と滅していく。


 束ねた青い後ろ髪をなびかせトレードマークである黒紫の鎧を身につけている。相棒の刀、雷月の切れ味は鋭く気力を少し流すだけで敵を一刀のもとに両断。地の敵を主に討ち取っていく。


 白モヤの残る鏡セカイの中、一面の石畳のステージでIランク望鏡パーティーはカスミと魔術師クゥミを中心に攻め立て、前衛は剣士カスミと重騎士イガード。中衛遊撃を任されているムササビ忍者コムサ、後衛にベテラン魔術師クゥミ。


 組んだばかりであったが見るからにシンプルで分かりやすい氷魔術一本に絞った魔術師クゥミの行動によりカスミのパーティーは問題なく上手く機能していた。


 だが、問題は。



 天高く舞い上がりつづけトンボを発生させ続ける厄介な敵母艦がカスミたち望鏡パーティーを手こずらせていた。



「むさ……重い無理」


「オモッ!? ……鍛錬と食事が足りないぞコムサ、よしならなんとかアレの片翼を撃ち落としてくれ」


「ひとりじゃこわい」


「大丈夫だ必ず私がイチゲキで仕留める」


「むさ……カスミ、魔青斬ましょうざんは」


「遠すぎる届かせた頃には威力もがくっと下がるそれにあれ程だとモヤで姿が捉えきれずコントロールが不安だ、クゥミの援護もある少しでもヤツが食いつき下がってくれば、たのむ」


「むさ」


 コムサは腕と脚に隠された飛膜を広げて怠けて硬い身体でなんとか前屈しテントのようになった。


 ムササビ族の秘術を使い溜めた気力が爆風を産む、テントは中に発生した強烈な風を受けぶわっと広がりつつ遥か天へと跳ね上がった。


 白モヤを突き抜ける勢いで上昇、そして腕脚を広げ飛膜を広げ滞空。


 ターゲットのグリーンマザーオウルは目の下に見えていた。


 翼を広げた緑の巨大フクロウに対しラッキーにも上を取ることに成功したムササビ。


 巨大フクロウはギロっとした黄色い眼で上の敵に気付き腹の下に付着待機させていた白トンボをスクランブル発進、迎撃に向かわせた。


 だが遅い、コムサは全力の気力をもってしてキラキラと光る全てを散布投下していった。


 ムササビ忍法、金平糖手榴弾はグリーンマザーオウルをカラフル爆破。赤、青、黄、緑、黒、紫、白とデタラメに咲き誇る爆発花火。


 思ったよりもの絶景、茶色い髪を乱しながらそれを見つめるもこわい任務は完了飛膜を傾け方向を転換しすぐさまその危険空域から離脱した。


 天を見上げたカスミは深く呼吸し気を整えていく。


「よし期待通りコムサがやってくれた、魔青斬で叩き斬る」


「カスミよ私を使わんのか」


 操作し天へと飛ばしたアイスランスでトンボを壊しコムサの援護をしていたクゥミはカスミに近寄り問うた。


「あれほどの高度いけるのか? それにコムサが少なくないダメージを与えたんだたまらず休むために降りてくるはず」


「ふふ、あのマイ五の魔術師とは出力が違う地魔術はこう使う、アゲるぞ! カスミよしっかり踏ん張っておけ」


「え、あ、あぁ!!」


「魔術師はツヨクイメージシンプルに」


 魔術師クゥミが地にかざした両手、石床は盛り上がり、カスミを乗せ飛び上がった。


 四角く押し出されたかのように四角柱はどこまでも伸び天へと迫った。


「はぁはぁさすがに疲れた……歳? いやいやいやいや誰がロリババァじゃ!」


 暇を持て余していた重騎士イガードはフルフェイスの兜ごしにその1人ツッコミをじっと見ていた。


 ねとっとした視線に気付いた魔術師クゥミが振り向いたときには、モーニングスターの鎖部分に不具合がないか入念に確認している女性用の鎧を纏った騎士がいるだけであった。


 カラフルな尾を引く巨大ターゲットを目指した石柱は役目を終え、踏ん張り乗り捨てたカスミは足に気力を集中させ跳躍。


 特攻仕掛けて来るトンボをものともせずノールックで斬殺。青い天の瞳が見つめる先、一直線に狙うはコムサの爆撃を受け高度を下げたヌシガミだけ。


 無防備になった鳥の裏腹に、届かせた名刀雷月らいげつ


爆雷斬ばくらいざん!!」


 鳥はアオく妖しい光を放つ雷月に斬られた、勢い余ったカスミは腹を強く蹴りその場を下降離脱。


 直後、アオい斬り傷から流れ走る荒々しいアオい雷は全身に走り回りターゲットの身を焼き焦がした。


 莫大な気力の量を持つカスミだからこそ出来る大技、超インファイト技の爆雷斬は決まり。


 焼け焦げ墜落する巨大ヌシガミは地に到達することなく鏡の光へと還り白モヤを晴らしていく。


「この若さでこれほどの気力と威力とはすごい、さすが鏡騎士のゲン十といったところ。クロの称号に最も近い青雷しょうらい鏡騎士カガミきしカスミ」


 魔術師クゥミは天を見上げすぎた腰をとんとんとしながら。




「むさカスミえらいすごいおつかれはなして」


「ありがとうコムサおつかれだが離さない」


「むさ……重い……おもいっ!」


「オモくないッ!」


「むさっ尻尾掴むなッ!!」


「あ、ごめ!? でも離さない!」


「むさ……」




 途中で見つけたムササビ忍者にグライダーに捕まりつつ安全に降下。


 新生Iランク望鏡パーティー天ノ瞳は無事にGランクに設定されていたクエストを生き延びヌシガミを討ち取りクリアする事が出来た。

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