第4話 アクアスナイプ無氷のアイズ半身ブーメソード自爆殺
ブーメだな。
銀のブーメ。黒兎の仮のメインウェポンだが。
気力と魔力の操作が必要な変わった武器だ。師匠が言うには星の森の魔女なんていう星を旅するエリート魔女集団の伝説があるんだがそいつらから実力を認められ譲り受けた一点モノらしい……。ブーメとは魔術が効かない敵を想定もしものときに戦えるよう気力を鍛える武器、古くから使われていたが廃れた魔女達のお遊びだったらしい。そもそもエリート集団、高いレベルの魔術に誇りを持つものも多いブーメなんて変なモノは意味のない授業だったんだろうな……ま、これ俺はあんまり信じちゃいない……。そもそも自分で話してても意味が分からない……ただの師匠の開発したイメージ構築武器だろう。
……つまりこの黒兎は……なかなかすごい。センスがある。俺は気力の操作は下手じゃないが体内にある気力の量がからっきし足りない……だから気力を操作する経験も足りていない。やはり気力と魔力を使ってコイツを操作できるのはすごい超感覚ってことだ。
本来魔術師じゃない
戦いに関してビギナーもいいとこ技の一つもない黒兎なら強力な武器になる。この銀のブーメ自体が気力と魔力の性質を併せ持った鋭い優れた技である。
まぁ俺が黒兎専用フルアーマーマナアーマーに扱いやすくて霧散しにくい魔力の糸を貸し出して補助してるんだけどな。魔力を補充して維持管理しているってわけだ。
魔術師はアレンジイメージユニーク。これぐらいの小細工、同時にこなせるさ。
天は緑色に晴れている、地は乾き、白いモヤで彼方が見えない。鏡のセカイは美しい景色だけではない脈絡の無いトンチンカンの宝庫だ。
「ぼーっと、地中きてる」
「ぼーっとじゃない魔術師のイメージ構築!」
「……うざ」
黒耳をピンと前に傾けたてている、音を感知し既にこちらに地中から向かってきている敵をイメージ構築に耽っていた魔術師アイに少し怒りながら知らせた。
「それにだから魔術師アイに地中はやめろって!」
「お外を知らないお前らは獲物ならなんでもいいんだろ」
地に突き立てた古杖の収納スペースから用意していたアレンジ魔術を出力、かさかさと前方の地を移動し散っていく十の虫。
地から天へと突き抜けた白ミミズ、獲物を感知し強烈な突き上げ攻撃を放ったが。
土と炎を合わせた合成魔術
白い紐の中途を食いちぎられたように、どさり、可愛げの無い白い虫の前衛部隊は鏡の光へと還った。
「合体させるのは黒兎だけじゃないぞ魔術師アイに弱点はないからな、はははは」
「まだいる」
黒兎はタイミングを知らせるように飛んだ。魔術師アイも彼女の動きを横目に運動神経を発揮し左へ大きく跳躍。
回避しつつもう既に位置を感知し投げ放っていた銀の三日月が鋭く地に出るタイミングわ誤った白ミミズを斬り裂いていく。
気力と魔力の混じった銀のブーメの威力は並じゃない、回転を弱めて黒兎の背のホルダーへと賢くも戻りおさまった。
「上手いな。ま、それ俺の武器なんだけどな」
「耳元でうるさい」
「おっとそれはごめん、怒るなよふざけてないぜ」
「空から18、リク21」
「まだまだメニューはあるって!」
「いい感じに受け取れよ!」
出力されたデカいまん丸な土塊。
古杖のゴルフスイングでそれは地から宙へとアイにかっ飛ばされ舞い上がりひび割れた。
完全に地魔法で作った外殻は砕け中に入ったカラフルな粒が漏れ出ながら地へと降り注ぐ。それに触れた地を這い進む大トカゲ達を爆撃していく。
「魔術師はパクリ師、名付けて金平糖手榴弾・散。コムササンキューな」
元仲間、ムササビ族のコムサを真似た技金平糖手榴弾の魔術師アレンジ。地魔法の殻に無数の多属性金平糖型爆弾魔術を混ぜた高度な魔術構築イメージ。
撃ち漏らしたトカゲは黒兎が狩っていく。
「合体魔法は?」
「イエスかノーか……NO!」
「うざ」
「まぁ見てろ魔術師は」
「フレイムフェンス」
古杖から発射したメロンのように縞がかった炎球は空へと打ち上がり。
ターゲットから外れるかと思われた炎球は開かれカタチを変えた。
フレイムフェンス、魔術師アイのアレンジはただの炎球ではない宙を直進する炎のフェンスを成し白い怪鳥の群れを絡め焼き撃ち落としていく。
更に、出力され現れた水の蛇。アイの左腕へとぐるぐると巻きつき。
「アクアスナイプ」
巻きついた蛇はうねり先端をぶつ切られアイの左の人差しと中指の手銃へと集まった。
次々と放たれた水の弾丸は怪鳥の眉間、大翼、しゃくれた長い顎を撃ち抜いていく。
さらに右の熱線のイメージ構築も同時に行い二丁手銃。水蛇の補助によりイメージ構築を手助けするアクアスナイプ、得意の使い慣れた炎魔術の熱線が怪鳥たちに弾幕を張り寄せ付けない。
「魔術師は武器庫だ!!」
見事に殲滅された空の部隊。合体魔法に頼らずともやり遂げてみせた魔術師アイは、ふぅー、と右指の白煙を吹き消し隣の黒兎に得意気に微笑んだ。
「……合体魔法の方がはやい」
「おい! それはそうだけどな、あ! そんなに俺と合体魔法したかったのか!」
「うざ」
「はははは」
「あなんか重いの来てる」
耳をぴこんと反応させた黒兎。彼女の見つめる方向、白いモヤを裂く三つの角。
「ん? …………きて」
「ルッ!!」
赤く発光した角から出たエネルギーが望鏡パーティーに襲いかかった。見えていたため素早く回避行動に移れた2人は地を焦がしたそれを避け。
魔術師アイは直ぐに反撃に移り撃ち返した。アクアスナイプと熱線の連射は未知の巨大なガミへとぶち当たり。
それでも止まってはくれない、白モヤから完全に姿を現した三本角。
トリケラトプスに似たその紅い重戦車生物が猛スピードで攻撃を浴びせた魔術師アイへと突っ込んでくる。
なおも炎と水の魔術を大きな顔面に浴びせ続けるが、猛進しながら頭部の長い二本の角に溜めた赤いエネルギーを放射。
棒立ちはしない時計回りに移動しつつ狙いを外させたアイは。
「赤い雷魔法かそいつはしゃれているが」
水蛇の補助魔術は失せ、狙い澄まし左の角に放った熱線が効かない。
「うそだろ!」
ターゲットにされていなかった黒兎は隙とレンジを見計らい銀のブーメを頭部へと向かい全身のバネをつかい投げつけた。
高速回転制御されたブーメは猛進するトリケラトプスの頭部上、盾のように広がったフリル部分へと突き刺さり。
「ぬ、ぬけない……!?」
「ヌシガミだ、硬いからブーメは諦めろ」
「うぃ!」
猛進していたトリケラトプスは黒兎のイチゲキを貰い思わず顔を天に仰け反り止まってしまった。
「くっそかてぇピンチ! だが勝てるチャンスだ来い黒兎!」
「うん合体魔法」
炎よりはアクアスナイプの方が手応えはあった気がする。なら。
金髪を高速で掻きむしりこの状況を打開する高速のイメージ構築、彼の中では完了し。
懐に収まった黒兎をぎゅっと拘束し一体化しつつ彼女とシェア、更に気力と魔力を循環させ合体魔法のイメージを完全構築させていく。
「できるの合体魔法?」
「できるさ合体魔法!!」
左の人差しと中指の手銃から出力された水の玉は撃たれた。撃たれた瞬間に幾多の水線となり広がりターゲットに向かい収束。
水の合体魔法はトリケラトプスの大顔を撃ち抜きヌシガミの強固な顔面はヒビ割れ左の角は砕かれ悶絶またも前脚を上げ天を仰ぐ。手応えありの手痛いだが絶命はしていない、合体魔法は大きく気力と魔力を消化する切り札ここで仕留めなければ魔術師アイと黒兎にとって厳しいたたかいになる。
「取り付け!
ぶつかり弾けた多量の気力と魔力を含む水飛沫は集まり頭部フリル部分に取り付き現れた無氷の騎士アイズ。
上半身のみが大顔から生えており、取り付いたアイズは氷の双剣を手にしグサグサと乱雑にトリケラトプスの赤い顔面のヒビ割れた隙間を乱れ刺して壊していく。
その間に魔術師アイは細く伸ばした水の糸で突き刺さった銀のブーメと自身を繋ぎ練り上げていく。銀のブーメは魔術師アイと黒兎のイメージ構築、出力により操作されそのカタチを変えた。
銀の剣へと生まれ変わったその柄は無氷の騎士アイズの冷たい両手に握られた。引き抜かれた剣に多量の魔力と気力を注ぎ込み、赤い怪獣の眉間へと突き刺した。
剣先に宿った気力と魔力は赤の内部で爆発し崩壊自爆。頭部を失った巨体は横たえヌシガミは鏡の光へと還った。
「なぁCランクだとおもうか」
「悪運」
「だよな」
「ところで合体魔法、今命名、アクアスナイプ無氷のアイズ半身ブーメソード自爆殺」
「ながい」
「だよなぁ」
一体となり、2人が見据える同じ方向。ヌシガミを討ち白いモヤが晴れていく、特段美しくもなく不気味な鏡のセカイに紅い瞳はキラキラとワラい輝いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます