犯人をあぶり出せ!

 内履きズックが無い。ソウタがイジメかよと、つぶやく。


「このあたしにイジメ?これがイジメなの?地味な攻撃ね」


「……まさか地味な地味子に地味と言われるとは相手も思ってないと思うぞ」


 最近、地味じゃないけどと下僕ソウタがそう言って、スリッパを持ってきてくれた。あたしはパタパタとスリッパの音を立てて、一日すごした。その中で笑ってるやつがいた。たぶん首謀者だろう。


 胸ぐら掴んで、問い詰めるのもアリだけど……もっと面白くなくっちゃね!


「おい?昼休みどこいってたんだ?イジメられているなら、オレに言え!たすけてや……えっ?なんで笑ってるんだ?」


「誰に物言ってんの?お楽しみはこれからでしょ?」


 ニヤリと悪どい笑みを浮かべたあたしにソウタは引き攣った顔をした。


「は!?なにをしでかすつもりだよ!?」


 その次の日の朝だった。生徒たちが登校してきた下駄箱でキャアアアアアと大きな悲鳴。ザワザワと周囲の人が集まる。


「オーホホホッ!罠にかかったわ!」


「やめろ!その高笑い頭に響くっ!朝早くに登校して、下駄箱に隠れてミコは何してんだよ!?罠って!?いったい何が起きてるんだよ!?」


 悲鳴の先はあたしの下駄箱だった。腰を抜かしているクラスの女子がいた。


「ザッ、ザリガニ……」


 そう呟く。


『ザリガニーーー!?』


 その場にいた全員がハモる。ワシャワシャとザリガニが動いて、下駄箱から出てきていた。


「なんでこんなところに?ザリガニがいるんだ!?」


 その謎を知るのはあたしのみ。腰を抜かしている女子学生にあたしは言った。ザリガニをガシッとつかんで顔の前にチラつかせると恐怖の顔をしてパクパクと口を動かしている。


「今後、また同じようなことをしたら、ザリガニ程度じゃすまないわよ?」


 ハイイイイイイッ!ゴメンナサイイイイ!と相手の悲鳴のような声を心地よく聞く。


「凄すぎる……なぁ?単純な疑問だが、ミコの靴はどこにいれてあるんだ?」


「職員用下駄箱。安全でしょ?入れちゃだめってきまりもないし」


 生徒手帳を書いてないでしょー?と、パラパラめくってみせる。無言のソウタ。


「さて、朝活したらお腹すいちゃったー。早弁しよーっと」


「ザリガニどうすんだよ?」


 やれやれとあたしは両手を広げる。


「察しが悪い下僕ね。もちろん、下僕が学校の裏の田んぼに返してくるのよ?」


「オレなのかよおおおおお!?」

  

 何を叫んでるの?あたり前じゃない?と、あたしは首を傾げたのだった。

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