入れ替わった!?

「どうだっ!?」


 得意気に言う声がして、目を開けると、研究室のような本や物が散らかっている部屋にいた。えっ?ここ、どこ!?


 服は黒い制服のようだが、このマントはなんだろうか?


「どうだってなに?なんのこと?」


 私が問い返すと相手が震えだした。


「な、なんだと!?鏡の呪縛から逃れた!?古代文明の魔導具すら効かないのかっ!?おそるべしエマ=トレース!」


 エマ=トレース?聞いたことがあった。あれ?この話って………ここ、まさか?


「あなたは、ディラン?」


「ヒイィィィ!!」


 相手は悲鳴をあげて部屋から飛び出ていった。今、私がパソコンで読んでいた流れとそっくりの展開。そして私がエマ!?あの最凶魔道士の!?高飛車で偉そうな!?

 

 逃げていった後に落ちている鏡を拾った。鏡に映る私は金色の髪に紫色の目をした美人で気が強そうな……小説の中のエマになっていた。

 

 よりにもよってエマ!?泣く子も黙る最凶魔道士エマ……私は頭を抱えた。


 魔法実験をすると言って、クレーターを作り、山が一つ消えて湖になったとか、オークの集団を消し炭にし、味方まで巻き込んだとか、小さい火球の術を使おうとしたら『それ炎の最強魔法ですか?』と周囲に問われるとか……そりゃもう、めちゃくちゃな人物。


 私とは正反対、真逆の彼女になってしまった。それを演じなきゃいけないのーーー!?いや、演じないと身の危険が迫る。なにせエマは恨みを買いすぎてるし、名声もある。倒して名をあげようとする人や魔道士の最高位の『マギ』の座を狙おうとする人が……今のディランのようにいるだろう。


 私がこっちに来たということはあっちの私はエマ=トレース!?日本で私の替わりに学校生活をやっていけるの!?大人しくしているわけないわよね?


 色々考えだしたら、すべてにおいて、ものすごく不安になる私なのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る