第30話 俺の舞台

(……いや、待てよ……)


諦めるな?

考えろ?

起死回生?

……違う。

それは俺の戦い方じゃないぞ。


「なにやってやがる?さっさと悪魔の契約書を寄越せヴィラン!!!!」


(視野を広げる事。そう……そうだ。それが俺の戦い方だ。他のオーク達は不満げに目玉食いを見つめている。リリィは死んでいるように見えるがどうかな。生きている方に賭けるか。……なんとなくわかってきたぞ。今、俺がなにをすれば良いのかを……)


さぁ、俺の舞台に上がってくれ目玉食い。

愉快に痛快に滑稽に踊ろうじゃないか。


「完敗です!!!!負けました!!!!あなたに服従致します目玉食い様!!!!」


そう言って俺は土下座し、頭をさげながら両手で悪魔の契約書を目玉食いに掲げた。


「ぐふふ!!!!さすがはヴィランだ!!!!自分の立場ってのをよく理解してやがる!!!!そうそう……それで良いんだよお前は!!!!」


そして、目玉食いは俺から悪魔の契約書を奪った。そして、すぐ俺に手渡した。


「拝見致します!!!!……ふむふむ!!契約内容はこれでよろしいので?」


「ああ、さっきのと同じ内容だ。わかりやすいだろ?」


「ええ、構いませんが……1つだけどうしても確認したいことがございまして……よろしいでしょうか?」


「なんだ?」


「私の立ち位置でございます。無論、こちらに勇猛に立っておられるオークの方々の地位は私より上だということは重々理解できるのですが、私が先程差し上げたモンスター達より私の地位が低いなんてことはまさか……ないですよね?」


「下に決まってんだろ?馬鹿が!!」


「へへへっ!!!!さすがは俺達のボス!!!!わかってるぜ!!!!」


「そ、そんな!!??それはあんまりです!!!!一体なぜですか!!??」


答えはわかっているが、あえてわざとらしく聞いてみる。


「……わかりきったことだろそんなの。お前がこいつらより弱えからだよ!!!!強いヤツがどんなことをしても許されるのが魔王軍という組織だ。理解したか?ヴィラン」


やはり、そう答えるか。

では、こう返したらお前はどう答える?


「そ、そんなの納得できません!!!!……では、こちらのオークの方々は!!??まさかミノタウロス達より下とは言いませんよね!?」


「もちろん……下だ!!」


場の空気がさらに重くなった。

不満から徐々に殺意にだ。

ああ、言ってしまったな……目玉食い。

言ってはいけないことを言ってしまったな。

もう彼らの不満がとまることはない。


(バカだねぇ短気だねぇ……クククッ!!!!)


「なんだと!!??」


「それはあんまりだぜ目玉食い!!!!」


「そうだよ!!!!俺達はずっと文句も言わずあんたの命令通りに戦ってきたんだぜ!!??些細な事で目玉をくり貫かれてもだ!!!!」


「チッ!!グダグダうるせえ連中だ!!……ミノタウロス、ストーンゴーレム共よ!!!!こいつらを殺せ!!!!目障りだ!!!!」


「へへへっ!!あいよ!!」


「く、くそ!!!!殺られてたまるか!!!!」


「構えろ!!!!来るぞ!!!!」


ミノタウロス達がオーク達を襲おうとした瞬間、俺は冥界の杖で地面を1回だけ叩いた。


――タンッ!!!!


こうすると、モンスター達はビビるんだ。

なぜかって?これは合図だからだ。お前達を冥界に送ってやるぞというね。奴らは冥界という場所を心の底から恐れている。

まぁ、それは俺のせいなんだがね。仕方ないだろ。そうしなきゃモンスターの魂が作れないんだから。


「ヒッ!!??」


ミノタウロス達の動きが止まった。


(さぁ、チャンスだぞオーク共!!!!……と、言いたいところだが……コイツらはミノタウロス達に恐怖を抱いているはず。戦えば無事ではすまない。1歩下がって様子を見るはずだ)


「ぬうぅぅぅ!!!!」


そうでなくてはな。

これで目玉食いと対話する時間が出来た。

俺は1歩下がったオーク達とミノタウロス達の間に割って入り、目玉食いに言った。


「やはり納得できません!!!!こいつらより下なんてあり得ない!!!!俺はこいつらの創造主ですよ!!??」


「あん?俺に逆らう気かヴィラン!!??……なら、てめえも死ね!!!!ミノタウロスよ!!!!こいつを先に殺せ!!!!その斧で叩き殺せ!!!!」


「え?それは……」


(クククッ!!!!ミノタウロスのヤツ、動揺してやがる!!!!……それじゃ、仕上げといこうか)


「そうですか……残念です。今の聞いたろミノタウロス。さっさと俺を殺せ」


俺は両手を広げてミノタウロスに近づくと、ヤツとストーンゴーレム達は1歩下がる。


「い、いや!!!!ちょっと待てよヴィラン!!??落ち着けって!!!!……ボ、ボス!!!!許してやってくれないかな!?頼むよお願いだよ!!!!」


「ダメだ!!!!許せるわけねえだろ!!!!さっさと殺せ!!!!」


「そ、そんな!!??」


「……つまらない死に方をしたいのか?」


「ヒィッ!!??い、嫌だ!!!!あんな不様な死に方は嫌だ!!!!でも、お前を襲うことなんて……」


「なにをさっきからグチグチ言ってやがる!!!!貴様ら……まさか俺様に逆らうつもりか!!??」


「ち、違う!!??違うんだ!!!!俺達はこいつを殺せねえんだよ!!!!」


「俺に対しての忠誠心がねえのか!!??……だったら、てめえらに用はねえ!!!!この裏切り者共!!!!死ね!!!!今すぐ死にやがれ!!!!」


目玉食いがそう言った瞬間、ミノタウロス達は悲鳴をあげることなく塵となって消えた。


「え?……ああ!!??……ミノタウロス?他の連中も!!??一体どうして!!??」


「ほう、そうやって死ぬのか。初めて見たが、ずいぶんと綺麗な死に方だな。モンスターだからかな?」


「どうなってやがる!?ヴィラン!!!!てめえ何しやがった!?」


「ん?なにもしてませんが?……俺、なにかしちゃいました?」


「俺の軍団は!!??俺の軍団はどこだ!!??」


「ふむ……あなたさっき言いましたよね?もう貴様らに用はないと、だから死ねと。そしてミノタウロス達は死んだのです。それが……悪魔の契約書の効果。お分かりいただけましたか?……と、いうか、この世界の住人なら子供だって知ってますよ?バカなんですか?」


「て、てめえぇぇ~~!!!!この俺様を馬鹿だとぅぅ!!??雑魚の分際で!!!!」


「クククッ!!!!……俺よりもあなた自身の心配をなさったほうが懸命ですよ?ほら!!あなたの目の前をちゃんと見てください。大変ですよ今のこの状況は」


「……あ!?」


ミノタウロス達が消えて、残ったのは俺と夜叉蜘蛛……そして、500体のオーク達!!!!

彼らは目玉食いに殺意を向けている。


「な……舐めるなよ!!!!俺はジェネラルオーク目玉食い!!!!死にたいヤツだけ前に出ろ!!!!」


目玉食いはそう叫び、背負っている斧に手を伸ばした。だが、その瞬間、リリィは立ち上がり、凄まじい速さで目玉食いの懐に入るとその腕を切り落とした。切り落とされた腕は宙を舞う。


「う、うでがあああ!!??」


「はぁ!!……はぁ!!……ざ、まぁ……みろ!!」


全力を出しきったのだろう。リリィはその場で倒れた。全く見事としか言いようがない。


「や、夜叉蜘蛛!!!!助けろ!!!!俺様を助けやがれぇぇ!!!!」


「なっ!?」


少し想定外のことが起こった。

まさか、夜叉蜘蛛に命乞いをするとは。


(どうする?……クイーンを使って夜叉蜘蛛を一か八か襲うか?)


「気安く私の名を呼ぶな。このウジ虫め!!」


これは意外な反応である。

彼女は俺と同様、目玉食いに借りを返さなければならないはず。

借りはもう返したのかな?

いや、それだったらこの場にいないはずだし、命令にも従わないはずだ。


「ジェネラルオークのくせに他者に命乞いするなど……戦士の恥さらしめ!!」


(ああ……成る程。そういうことか)


彼女はスケルトンだが、1000年も魔族側で戦い続けたこの場で一番のベテランの戦士。

目玉食いのあの態度が琴線に触れたのだろう。


「お、俺が死んだらモルゲンの借りを返せなくなるぞ!!??それで良いのかよ!!??」


「確かに目玉食いには借りがある。だが、お前ではない。」


「なっ!?なにをとち狂ったこと言ってやがる!!!!俺は目玉食い……!!!!」


「いいや……私の目の前にいる豚はジェネラルオークでも、オークでも、ましてや、魔族ですらない!!!!貴様は唾棄すべき弱者だ!!!!モルゲン様も私の選択を納得して下さるだろうよ。お前を救わぬという選択をな 」


「そ……そんな!!??」


その時、先ほどまで立ち止まっていたオークたちが、じわじわと目玉食いに迫り始める。彼らから露骨な殺意が漂っている。


「腹減ったよなぁ〜お前ら!!!!」


1人のオークが言うと、他のオークたちも頷きながら声を上げる。


「へへっ!!そうだな!!いつも腐りかけのパンばかりだったからな。」


「そうだよな!!!!肉が食いてぇよなぁ〜!!!!」


「目の前のあいつはうまそうだよなぁ〜!!!!」


目玉食いの顔から徐々に血の気が引いていくのが見て取れた。緊迫した空気の中、オークたちの背筋が伸び、牙を見せる。しかし、彼の心の中では恐怖が渦巻いている。

目玉食いは、後ずさりしながら声を震わせた。


「ま、まて!!!!俺はやだ!!!!そんな死に方はいやだ!!!!」


目玉食いの声は恐れに満ちていたが、彼の願いが叶うことはなかった。オークたちは止まることなく、次々と目玉食いにかぶりついていく。

まるで獲物を捕らえる猛獣のごとく、彼らの笑い声が響き渡り、目玉食いの悲鳴をかき消す。彼は必死にもがき、逃げようとするが、オークたちの数は彼を圧倒し、容赦なく食いつき続けた。

肉が噛み砕かれる音、骨がきしむ音が周囲に響く。不気味なシーンが広がり、オークたちの目は獲物への欲望で光っていた。


「滑稽な死に方だねぇ~~!!!!」


俺はその光景を見て、心の底から笑った。彼の醜いもがきと、オークたちの狂気じみた食欲が、まるで太っちょのコメディアンが滑稽に舞う舞台のようだ。

天国で見ているかジャン。こいつの……目玉食いの最後を。

こうして、目玉食いは仲間達によって食い殺された。


「ざまぁみろ」

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