第31話 布石

次はこいつらオーク共の番だ。魔王軍ってのは力こそ全て。目玉食いというリーダーを始末したことで権力闘争が近いうち必ず起きる。

だが、時間は有限。だから俺はオーク達にこう告げる。


「おめでとうございます皆様!!よくぞ目玉食いを討ち滅ぼしました!!これで、この国ズラーン王国は皆様のものです!!」


俺がそう言った瞬間、オーク達の空気が変わった。


「なに言ってやがる、ヴィラン!!!!このズラーン王国は俺様のもんだ!!!!」


「いいや!!!!俺だ!!!!雑魚は引っ込んでろ!!!!」


「なんだと!!??てめえの方が雑魚じゃねえか!!!!」


(よしよし、こちらの思惑通りに争いが始まったな)


「まあまあ!!では、どうでしょう?殺しあって決めるというのは?勝ち残った方にだけ私は従いましょう。いかがですか皆様方?」


「いいなそれ!!!!早速始め」


そう言ったオークが首を跳ねられた瞬間、その隣にいたオークが笑った。


「ぎゃははは!!!!ざまぁ、グハッ!!??」


そう言ったオークは胸を剣で貫かれて絶命した。

俺の言葉がきっかけで、あちらこちらでオーク同士の醜い争いが始まる。誰が勝ち残ろうが、全滅しようが、俺の知ったことではない。大事なのは、俺がコントロールしやすいかどうだ。

もうすでに手はうってある。この国の王とすでに親睦を深めていて、彼らは今、牢屋に入ってくれているのだ。俺が合図を送れば勝手に出てきてくれる。ミカエルやその他の情報及び交換、資金調達などを得られるものは多岐にわたる。これ程うまい話があるだろうか。


「夜叉蜘蛛。彼らのジャッジを頼めるか?」


「……ふぅ。1つ借りだぞ?」


彼女との付き合いは長い。このくらいのことなら聞いてくれる。さて、リリィの容態は……


「ふむ。肋骨が肺に刺さっている。これはかなり危険な状態だぞ!!」


このままだと確実に死ぬ。俺は彼女の手を握った。


「必ず、助けるからな!!」


そして、冥界の杖で床を2回叩いた。行き先は滅び山だ。今持ってる装備では心もとない。あそこには治療薬と治療道具が充実している。


―――タンッ!!タンッ!!


「よし!!着いたぞリリィ!!滅び山だ!!」


相変わらずだなここは。

カビと薬品の匂い、錆び付いた機械類、邪悪な悪霊達が蠢いている古井戸。おっと!!余計なことを考えてる場合じゃない。俺は急いでリリィを抱き抱えモンスター専用の手術台の上に乗せた。


「えっと……眠り薬は」


ガサゴソと棚を探っているとリリィが目覚める。


「ん……ここ、は……え、ゴホッ!?どこだここは?」


「寝てろよリリィ……お!!あったあった!!」


俺は眠り薬をハンカチに染み込ませると、リリィの口と鼻に当てる。


「うっ!?……うぅ」


「よし!!眠ったな!!すぐに良くなるからなリリィ。もう少し待ってろよ!!」


まずは服を破かないと。

ハサミで丁寧に服を切り裂いていく。

その時、エキドナが現れた。


「随分、早かったね。もういい仲間ができたのかい?」


「ああ、まあな。手伝ってくれるかい?ミノタウロスの打撃をモロに受けてしまって……」


「名前は?」


「リリィ」


「いいよ。今、どんな状況だい?」


「今、ここを切開して骨を繋ごうしてる」


エキドナは俺が切開した部分を見てウンウンと頷き腕をあげたねと褒めてくれたが……突然、リリィの心臓部分に注目する。


「こりゃ酷い。3度心臓を剣で刺されて、治癒魔法をかけられてるね。さぞ、辛かったろう」


「きっとレイラの仕業だ。そういう女なんだよ」


「ああ、毒蛇の牙の幹部の1人か。確か名前は、慈愛のレイラだったかね?」


「ああ、そうだ。あの女のやり口はよーーく知ってるよ。よーーくな」


前世の世界で、レイラは俺の部下の1人で、有名な人身売買のブローカーだった。

あの女がいつも言っていたことを覚えている。


『人間を操るなんて簡単よ。大勢が見ている目の前でたった1人壮絶に痛めつければいいんだから。それで従順になるわ。子供ならばもっと効果抜群』


最低の女だ。まだこんなことをやっているとはな。しかもこの世界でも珍しい治癒魔術師だと!?殺しても殺したりない女だぜ。

なにが慈愛のレイラだ!!ふざけるな!!


「……縫合完了。包帯を巻いてっと!!脈はどうだ?」


脈拍数は正常。数日寝ていれば完治するだろう。さて、またズラーン王国に戻る前に色々と準備をしないとな。棚からノコギリと板、それと釘とカナズチを袋に入れる。するとエキドナが俺に質問してきた。


「あ!!そうだ。目玉食いの借りは返してくれたかい?」


「ああ。返したよ」


「そうか。だったら、もうヤツの言うことを聞く必要はない。すまなかったね。面倒なことさせちまって」


「別に構わないよ。……エキドナ、リリィを頼めるか?」


「ああ、いいよ。ところでヴィラン。そんな大工道具を持ってどこに行くんだい?」


「ズラーン王国さ。あるモノを作りたくね」


「あるモノ?」


「ああ、強いて言えばズラーン王国の国王様が喜ぶモノ、かな?」


喜ばなくても別にいいけどね。

目玉食いの亡骸で玉座を作るんだ。

最大限の侮辱と軽蔑を込めて。


「全く!!死霊魔術師は大工じゃないよ!?」


「堅いこと言うなよエキドナ。これも滅び山の為だ」


「ふんっ!!……どうだかな。ま、それならそれでいい。私はあんたのやることに口出ししないよ。でもね、ヴィラン?順調だと思っていても思わぬ落とし穴が現れることがある。せいぜい気を付けるがいい」


「ん?そんなのわかってるさ!!じゃあ、ズラーン王国に行ってくる。また、戻ってくるからね」


「ヴィラン!!」


「ん?なんだい」


「……私も、もう長くない。本当に行動に気をつけておくれよ?助けたくても助けられない時が必ず来るのだから」


「心配いらない、エキドナ。俺はちゃんと滅び山のことを考えて行動しているから!!じゃあ、また後で!!」


「ああ、しっかりやるんだよ」


心配性だなエキドナは。

すべてはこちらの思惑通りに進んでいるというのに。

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