第29話 計画の破綻


それからしばらくして……

俺は目玉食い達を玉座の間に誘導することに成功した。

玉座の間は3000人くらい入れるくらいの広い空間で、玉座とバカでかいシャンデリアが吊るされている。リリィはそのシャンデリアの上で潜伏魔法を使って潜んでいる訳だ。まさか上から奇襲されるとは目玉食いも思うまい。


(我ながら良い作戦だ!!覚悟しろよ目玉食い。お前が死ぬ瞬間をしっかりこの目に焼き付けてやる!!)


「ふんっ!!……俺様が座るには小さすぎるな。まぁ、こうすりゃ問題ないだろう!!!!」


そう言って目玉食いは玉座を粉微塵に破壊し、その場に胡座をかいて座り込んだ。

野蛮極まるとはまさにこの事だ。


「さっきの話の続きだが……ミノタウロスを俺様に寄越せ!!!!ついでにストーンゴーレム共もな!!!!……いいだろヴィラン?俺様達が仲間になってやるからよ!!!!」


「それは……心強いお言葉でございます。あなた方の力添えがあればエキドナの名誉もすぐ回復致しましょう!!」


散々、俺を役立たずだのなんだのとほざいておいてよく仲間なんて言葉が出てくるものだ。


(しかし、この流れは良い。リラックスしてくれ。リラックスしてくれよ目玉食い。油断してくれれば殺りやすくなる。お前を殺す為なら何でもしてやるよ)


「ガッハハハ!!!!相変わらず口だけは達者だなおまえは!!!!ガッハハハ!!!!」


「……では……こちら悪魔の契約書でございます」


「おう!!!!……念じればいいんだな?……よし、出来たぜ」


「拝見致します……ふむふむ成る程。契約内容を確認させて頂きました。では、少々お待ちを。ミノタウロス、手を出せ」


「あいよ」


「よし」


俺はミノタウロスの指をナイフで切り、悪魔の契約書にその血を擦り付ける。ストーンゴーレム達も同様に血を擦り付ける。

悪魔の契約書は、たった1枚で何人何百人でも契約することができる。


「これにて契約は完了。ミノタウロス含めこの場にいるストーンゴーレム達は全てあなた様のもの。この悪魔の契約書は私が大切に保管させて頂きます」


「おう。期待しているぜお前ら!!!!」


「ああ、任せてくれボス!!俺達には苦痛も恐怖もねぇ。だから命令してくれりゃ誰でも殺してやるぜ。誰でもな!!」


「誰でもか!!!!がっはは!!!!やはり、俺様の目に狂いはなかった!!!!こいつらは金の卵だ。成り上がってやるぞここから!!!!俺様の未来は明るいぜ!!!!がっははは!!!!」


「お気に召して頂いて何よりでございます」


「ねぇねぇ、あたいは?」


「お前は部屋の外で待機だクイーン……行け!!扉前で待ってろ!!」


「……チッ!!……わかったよ!!」


そう言ってクイーンはこの部屋の扉へ向かおうと、ミノタウロスを通り抜けたその時、ミノタウロスがクイーンに対して小さく笑った。


「へっ!!」


「あん?……今、笑ったか?ミノタウロス!!!!」


「え!?まさか俺が!!??冗談だろ!!??売れ残りのお前を笑うわけねえだろ!?可哀想だろうが!!」


「てめえ……殺してやる!!!!」


「早く外に行け!!!!クイーン!!!!」


「で、でも!!!!……こいつが!!!!」


「2度は言わないぞ……早くここからさっさと出て行け!!!!何があってもそこを動くなよ?何があってもだ!!」


「くっ!?舐めやがって!!……どいつもこいつもくたばりやがれ!!!!」


そう言ってクイーンはふてくされながら部屋から出て行った。

クイーンスライムは俺の最強の手札の1つ。

これ以上衆目にさらすわけにはいかない。

もう少し我慢していろクイーン。

俺が魔族共から信用され尊敬されるまでな。


「全く!!……見苦しいものを見せてしまって申し訳ありません。あいつはどうも子供っぽいところが抜けなくて……」


「ふむ……部下だか愛玩動物か知らねえがよ。ちゃんと躾とかなきゃダメだぜヴィラン」


「はい……肝に命じておきます」


(さて、そろそろ頃合いだな。リリィに合図を……)


「ネズミがいるな。」


「ん?突然何を言い出すんだ夜叉蜘蛛」


俺がそう言った瞬間にはすでに夜叉蜘蛛はシャンデリアの真下に立っていた。

そして、目にも止まらぬ速さでシャンデリアを真っ二つに斬り、リリィが潜伏していた所が落下する。


「くっ!?ファイヤーボール!!!!」


リリィは落下している最中、負けじと目玉食い目掛けてファイヤーボールを放つ。


「ぐぉっ!?」


しかし、威力が小さかったのか顔面が焦げる程度だった。


「チィッ!!??」


だがリリィは諦めない。軽やかに着地すると、今度は剣を抜き、目玉食いに斬りかかった。


「させるかよ!!!!」


ミノタウロスは素早く反応し、リリィの前に立ち塞がる。


「邪魔だぁぁ!!!!」


「あ!!」


まずい。ミノタウロスの肉体はオーク以上に硬く作ってある。その剣ではせいぜい表皮くらいしか斬れないぞ。


「ぬっ!?ぐぐっ!!!!」


「へへへっ!!!!そんなナマクラじゃあ……俺は斬れねえぜ!!!!」


ミノタウロスはリリィの腹を拳で殴った。


「ぐはっ!!??」


リリィは、壁に激突すると血反吐を吐きその場から動かなくなってしまった。

そして、夜叉蜘蛛はまじまじとリリィの顔を見つめる。


「シスターリリィ……なぜここに?」


「リ、リリィだと!?そいつをこっちに持ってこいミノタウロス!!!!」


「あいよ」


ミノタウロスはリリィの首根っこを掴むとそのまま目玉食いの方へ引きずっていく。


「う、うぅ!!」


「確かに。こいつはシスターリリィで間違いねぇ!!この女は処刑されたはずだ!!なぜ生きてる!?……まさか、お前の仕業か?ヴィラン!!」


「はて……なんのことやら」


「おいおい!!??惚けんなよヴィラン!!!!俺は知ってるぜボス!!!!ヴィランはあんたを殺す為にリリィと契約したんだよ!!!!な?そうだろ?」


「…………」


「ふむ。ミノタウロスは嘘をついてないな。俺は嘘を見抜くことが得意でな。今まで外したことはねえんだ!!!!……覚悟できてんだろうな!!!!ええ!!??ヴィラン!!!!」


「俺を殺すんですか?」


「殺しはしねえよ。お前のモンスターは気に入っている。だからよ。もう一枚悪魔の契約書を寄越しな!!!!一生俺に仕えてもらうぜ!!!!そして、俺様の為だけにモンスターを作るんだ!!!!何千何万とな!!!!」


(くそ!!!!……そんなの真っ平ごめんだ。こうなったら、クイーンに命じてリリィ以外のこの場にいる奴ら全員皆殺しに……)


いや、ダメだ。

夜叉蜘蛛がいる。

俺はまだ夜叉蜘蛛の力を把握していない。

仮に倒せたとしても、モルゲンから報復を喰らう。


(破綻だ……この計画は破綻した。)


諦めるな。

ここから起死回生できる何かがきっとあるはずだ。考えろ……考えるんだ!!






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