花見

羽井つかさ

花見

 幼馴染と花見をすることになった。なんだかんだ毎年やってる簡単なやつだ。基本的に、近所の公園に咲いている桜の花を眺めながら駄弁るだけ。コンビニで適当に食料を買い、ひときわでかい桜の木の下にあるベンチに拠点を据えた。小さな公園をぐるっと囲うように植えられた桜は、ちょうど満開で見頃を迎えていた。

 隣に座った幼馴染が、さっき買った菓子パンの袋をあける。ぱくりと一口頬張ると動きを止め、顔を輝かせた。


「トオル!これめちゃめちゃおいしいっ!」

「また甘そうなの食ってんなぁ」


 甘いものは正義だもん、と呟いて幼馴染が空を見上げると、ふわりと春風が吹いてその髪がなびいた。ゆるく巻かれた前髪が持ち上がり、丸くて大きな瞳があらわになる。


「わーっ見て見てあそこ!ほら、桜吹雪!」


 そうはしゃぎながらこちらに向ける太陽みたいな笑顔は、控えめに咲く薄紅色の花なんかよりも、ずっと綺麗で、愛しくて。


「やっぱお前、」

「ん?」


 透き通った丸い瞳が、ぱちりと瞬いた。


「…桜とか似合わねえな」

「はー?わざわざ話しかけといてそれ?!」


 まあ、素直になんか言えるわけないけどさ。

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花見 羽井つかさ @okra_ocl

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