第5話:どうやら私は意外と強い
「グルアァ!!」
「うわっ!!」
気迫を取り戻したオーガグリズリーくんと再び戦闘。
流石は下層のモンスターと言った所か。素早い動きに一つ一つが重い攻撃。おまけに魔法まで。
それらが休む間もなく襲い掛かるので、私は防戦一方だったのだが……
パキン!!
「っ!? 盾が壊れた!?」
攻撃に耐えきれず盾が真っ二つに割れた。王都で買ったそれなりにいいヤツだったのに!!
「やばいやばい……!!」
爪の連撃。口から放たれる風魔法。そしてたまーにやってくる急な突進。
それらを平凡な聖女が盾無しで捌ける訳もなく……
「ぐへっ!! どわぁ!! いたぁ!!」
かすったりモロにくらったりで、私はボロボロ。
「このぉ!!」
オーガグリズリーの急突進と同時にチェーンロッドの重い一撃を与える。
その結果お互いに吹き飛び、意識が朦朧とした状態で地面に伸びてしまう。
「大丈夫かー?」
「大丈夫じゃないです……ハイヒール」
魔力が尽きない限り回復は出来るけどさぁ……無理。
今すっごく逃げたいもん。全部ムーナに押し付けて後ろから見守っていたい。
そんな姑息な事を考えていた時、ムーナがアイテムボックスから何かを取り出した。
「……新しい盾?」
「流石に持っている武器が壊れるのは可哀想じゃしな。それに今丁度いいもんが……重ォ!?」
「重い?」
「あ、あぁ……腰がイカれるかと思ったわ」
「おばあちゃん……」
「次そう呼んだらぶっ飛ばすぞ」
「もう言いません」
ムーナがよいしょと重そうに取り出した盾を地面へと置く。
瞬間、重みのある鈍い金属音が響き渡り、地面にヒビが入る。
「うわ、重そう」
「あぁ。何せ世界一頑丈な盾を作るはずが世界一重い盾になってしまったからな」
「なんでそうなったの?」
「知らん」
重くしてしまったら誰も持てないだろうに。漬物石にでもすればいいのだろうか。
そんな盾に私は近づき、軽く片手で持とうとした所。
「あれ、持ち上がるよ」
「は?」
なんか持ててしまった。
「お主、それはおかしい。いくらなんでもおかしい」
「確かに重いけどー……少し気合入れたらなんとかなりそう。ふんっふんっ」
「ダンベルみたいに使いおって……どうなっておるんじゃ全く」
呆れるムーナの前で重い(らしい)盾の鑑定を行う。
【ギガヘヴィシールド】
とにかく頑丈。凄く頑丈。でも重い。
魔法だろうと物理攻撃だろうとビクともしない(使い手による)
仮に、万が一、絶対ないだろうけど壊れた場合は代わりのアイテムが出ます。
「なんか説明適当なんだけど」
「説明文までふざけてるのか……ただ性能は本物じゃ、やってみぃ」
「よーし……」
オーガグリズリーに向き直り、盾を構える。
「いくよっ!!」
盾を前にし、突進を行う。
オーガグリズリーも私の行動に気づいたみたいで、慌てて風魔法を発動させる。
「おおっ!!」
キン!! と響く音がした後、衝撃を少し受けた程度で風魔法を防ぐことができた。
確かに頑丈だ。モロに魔法が飛んできたのにキズ一つない。
「そーれっ!!」
「ギャウウ!?」
突進がオーガグリズリーの脚部に命中し、再び地面に背中を付ける。
私はそのままオーガグリズリーの腹に登り、一気にケリをつけるべくチェーンロッドを取り出した。
「ホーリーランス!!」
チェーンロッドの杖先を槍に変化させ、聖魔法を込めた一撃を放つ。
「グルアアアアアアア!!」
その一突きはオーガグリズリーの腹に大きな穴をあけ、瞬時に絶命した。
「あー……疲れた」
「お疲れ様。なかなかよかったぞ」
「何とか私でもやれるんだね……」
「さっきから言っておろう。ショコラはやれるヤツじゃと」
そう見込んでくれるのは嬉しいですよ。
ただ、やり方が乱暴なだけで。
と、まあ少し騒がしいモンスター退治がここで終わった。
「とりあえず転送ポータルを探そう」
「そうじゃな。ついでに下層のモンスターを蹴散らして旅の資金にしてくれよう」
「はは、ははは……」
なんか目が殺気だってるなぁ……
でもさっきは一人だったけど次からはムーナも一緒に戦ってくれる。
案外いけちゃうのでは?
この下層攻略は。
「さーて、ゆくぞ」
「おー」
決意を改め、私達は結晶石のあった部屋を後にした。
〜〜〜
「ヘルフレイム!!」
「ギャオオオオオ!!」
「ふむ、やはり威力が低いのう。魔法が使えるとはいえ慣れない感覚じゃ」
「いやぁ十分だと思いますよ?」
闇魔法の込められた炎がモンスターを一瞬で灰にする。
下層のモンスターがスライム退治みたいにあっさりと……恐ろしい。
「ほれ、お主の方にも来てるぞ」
「っ!! はぁ!!」
「ギャウ!?」
狼型のモンスターが襲いかかった所で杖の攻撃で身体を浮かせる。
その後、もう一度魔力を込めた状態でなぎ払いを行い、狼型モンスターを吹き飛ばした。
「キャウウ……」
「危なかったー。ありがとうムーナ」
「あやつもかなり強敵のハズじゃがのう。弱気な冒険者では倒せない程にな」
「嫌味?」
「嫌味じゃよ」
性格悪いなーとか思いながら奥へと進んでいく。ムーナがいた部屋は多分奥だと思う。転送ポータルの近くに封印部屋なんて作らないだろうし。
だから部屋からなるべく離れて捜索をし続け、そして……
「っ!! 転送ポータルだ!!」
「おおっ!!」
紋章が青白く光り輝く場所。
遂に見つけた!! これで地上に帰れる!!
ゴゴゴゴ……
「!?」
と、安心したのもつかの間。
大地が揺れ、上からいくつもの岩が落ちてくる。
「まさかこれって……」
「親玉の予兆じゃな……そう易々と返してはくれんか」
「えー!! めんどくさー!!」
やっと帰れると思ったのに!!
恐らくさっきまでのモンスターとはケタ違いのやつが来るに違いない。
「上からの魔力の反応!! くるぞ!!」
私は盾を構え、親玉の登場を警戒した。
一体どんなヤツなんだ。
下層のモンスターを超える更なる脅威。
全身が震え、杖と盾を持つ手に汗がにじむ。
地上への生還をかけ、最後の戦いが始まろうとしていた。
「っ!!」
そして上から落ちてきたモンスターとは
「ゴブッ!?」
「「……」」
……ちっちゃくて、明らかに弱そうなゴブリンだった。
「あー……さっきのはただの揺れで、こやつは上から落ちてきただけじゃな」
確かに上って広いし長いもんね。
中層あたりでもゴブリンは出現するし、そんなのが落ちてきたって何もおかしくは無い。
「……」
だけどなんだ。拍子抜けにも程がある。
安全だったのはいいけどさぁ……
「ゴブゥ!!」
「邪魔」
「ブボォ!?」
勢いよく突っ込んできたゴブリンを思いっきり蹴り飛ばす。
ゴブリンは吹き飛ぶことなく、血肉を弾けさせ一瞬で魔石と化した。
「……いこっか」
「……そうじゃな」
微妙な空気の中、私達は転送ポータルへと足を踏み入れたのだった。
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