3. 両親の仲が微妙に険悪になっていて

 ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし……と方丈記に記したのは、鴨長明でしたが、私は今、その諸行無常――世の中の一切のものは常に変化し生滅して、永久不変なものはない、ということを噛み締めています。


 私の両親は、おしどり夫婦で。

 自営業で、平日ずっと同じ職場で一緒に働いているわけですが、休日までいつも二人で行動するのが常で。

そして、なんと、私が大学生の頃まで一緒にお風呂に入っていたりも(!)していました。

正義感が強い分、ちょっと融通のきかないところがある母。そしてそんな母をまあまあと宥める、優しくて懐が深い父。という組み合わせで、二人はとてもうまくいっているように娘の私からは見えました。


 でも、父は変わっていきました。高齢になり、癌を患って、その薬の副作用もあるのか、だんだん、気が短くなっていったのです。

気を荒げ、すぐ大声を出す。そして、悪気なく、モラハラめいたことを言う……そんな風に変わっていってしまって。


 最初は「なんで、そういう風な物言いをするの?」「誤解されるでしょう?」

と、闘ったり、フォローしていたりしていた母はなんだか最近、諦めモードで、避けられるときは父を避けているような雰囲気です。そして、母以外の家族も、父が社長として音頭をとる職場の従業員も。苛立ち理不尽な当たり方をすることも多い父を持て余しているような雰囲気があります。


 今、母の心は少しずつ父から離れて行っているように見えます。

「嫌いになりたくない」

と、この間、私に涙しながら、こぼした母。

私は「そうだよね」と、言ってあげることしか出来ませんでした。


 父が何を考えているのか、私にはよく分からないけれど、ぼそりと「結局俺は、悪者なんだよ」と独り言ちているのを聞いたので、自分の周囲から人心が離れていっている自覚はある様子です。


 母と父は駆け落ち寸前の中で認められたという関係で、母は本当に父のことが好きで好きでたまらなかった、と私に言っていました。

「親より好きになった人だったのにな」と。


 時間が経っても、変わらないもの。

もし、そういうものがあるならば、それは両親の仲だろうなあ、なんて過去の自分は暢気に思っていました。

でも、そうではない。

そうでは、なかったのです。


 二人がもしも離婚することになったら。

……まだ、そんな空気ではない今のうちにそういうことを考えておくべきかもしれません。


 どちらにしろ、今の状態の私は母と父、どちらに着いていくにしろ、『お荷物』以外の何物でもないのです。

 本当は自立して、誰に荷物にもならないよう、生きていけたらいいとは思うのですが。


さて、今日も3年後の自分へ手紙を書いて、結びとすることにしましょうか。


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3年後の自分へ


両親の仲はどうですか。

悪化しましたか? それとも、もしかして、また昔のように仲睦まじくなったり……は、していないですよね。多分。


福倉家の従物である私は、最近、両親が離婚したらどちらについていくだろうか、と考えます。

(一人で放り出されたら放り出されたで生活保護しかあるまいよ、と開き直れるなあ、などと)


経済力があるのはもちろん父ですが、私は、やはり母についていきたいです。


一緒に住んで精神的な摩耗がない方がいいです。父とはやっていけません。

それに、私の障害年金と、両親に依存していたお陰でほとんど手つかずで残っている公務員時代の退職金が、少しでも母の支えになってくれるでしょう。


そして、いざ、そうなったら、一日3時間でもいい。隔日で、経験のあるレジ打ちでもして、働きます。(多分、それ以上働くと、いやそれだけでも再発するかもしれないから無理はせず)

そうすれば、サイト保守の仕事と合わせて月10万円ぐらいの稼ぎにはなるはず。

母の健康状態にもよりますが、二人で頑張れば、ぜいたくはできないけれど、生きてはいける……はず。


本当は文章やイラストで食べていけたらいいけれど、それは夢のまた夢だから。


でも、せっせと希望の種だけは撒いておきましょう。

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