第26話 戦闘開始

「聞こえますか?」


 バスのエンジン音と地面を走る音のロードノイズと周りの音が目立ち、緊張で顔をこわばらせる生徒たちは、サユリの声に反応する。

 アイナが教師である牛崎を中途なく昏倒させ、レンヤがさっさとシートに縛り付けたことが良くも悪くも生徒たちの文句や不安を黙らせていた。


「き、聞こえて、ます」


 生徒たちのリーダーであろう、お硬く強気なしっかり者そうで、生徒の中では一番冷静な少女が応える。


「貴方は?」


「隊長の神里かんざとだ、です」


「わかりました。あなた方にはこちらの指示を絶対に従ってもらいます。無視や、反抗は敵対とみなします。いいですね?」


「あ、あぁ。わかっています」


「結構です。ではまず、武装とその残弾数を教えてもらいます。装備している銃からランチャーや手榴弾など、持っている武器の全です。ルーフ上の2人が攻撃を開始しますがつられて攻撃するようなことはやめてください」


「……了解した」


 神里は通信相手のサユリに持ってきていた装備を伝えていく。


 レンヤやアイナは、生徒達は所持する銃が共通で学校支給のものだと思っていた。

 だが実際はちょっと違った。型落ちや中古で買ったであろうことは伺え、同じ物もいくつかあるが、個々に調整された数種類のアサルトライフルや軽機関銃、狙撃銃を身に着けている。しっかり整備され調整されたであろう、それは対象のモンスターを間違えなければ実践でも十分に戦えるものであった。

 広く普及している物やブルパップ形状でちょこっと新しい物を合わせた10つのアサルトライフルに、古いが未だにハンターの中でも使われている物である機関銃が4つ、そして広く普及がされカスタムパーツが豊富であるスナイパーライフルが3つ、17人の生徒が所持しているメインウェポンである。他にはサブにハンドががあり、グレネードランチャーや手榴弾がいくつかあった。

 生徒内でしっかり役割が決まっていて、装備も十分なものであったためサユリは一安心する。引率者の1人が牛崎だったこともあり、サユリは少し心配していた。

 安心したサユリは残弾数など細かく残りの武装を聞いていき、頭の中で現状と統合させて高速に整理していった。


 ドゥッドゥーン!!


 神里があと少しで自分たちの所有する武装を伝え終えるところで、ルーフ上から連続で銃声が響く。

 生徒たちはビクッと反応し、顔に不安がさらに表れる。

 銃声に反応した神里はサユリに伝えている途中で、言葉を止める。生徒が銃撃をつられて始めないように一言告げた。


「神里さん」


「あぁ。申し訳ない」


 サユリに呼ばれて神里は我に返り伝えきれていない残りを伝えた。

 サユリはつられて銃撃する生徒がいなかったことに感心する。サユリは神里たち生徒には強く言ったが、自分たちが子供であることを自覚しているため、言うことを無視する者が生徒の中にでも出てくるだろうことは許容していたた。もちろん、サユリはそういった者は牛崎同様に排除するつもりだった。だが、戦力が下がってしまうため出ないことに越したことはなく、遠慮なく指示を出せるため安堵しながら、残りの装備を聞いていった。


「サユリ、モンスターの先頭が見えたで。距離は400メートルぐらい」


「ん。……遠距離持ちを、優先するから――」


 ダンッダンッダンッ!!


「私は先頭をやります!」


「ん。……さすがふう姉」


「おう、任せる!」


 わざわざ言葉をかわす必要はまったくなく、レンヤとアイナと風香は銃撃を開始していた。言葉を交わすのは3人にとって、じゃれ合いである。


「神里さんたち生徒は左右に広がろうとしているモンスターの銃撃をしてもらいます――」


 指示にちゃんと従ってもらえることがわかったサユリは、生徒たちにも銃撃に加わってもらう。

 指示を無視して迫ってくる先頭のモンスターに焦って銃撃されると、風香と被ってしまい弾の無駄使いになり、モンスターが左右に大きく広がって範囲が無駄に広まってしまったりと影響が出てしまう。だから、サユリは初めに、弾を無駄にしないために、モンスターの行動を予想しやすいようにするために、撃つなと言っていた。

 だが、もちろん攻撃の手数が多い方がいいため、サユリは生徒にも攻撃を指示する。


 モンスターの行動を制限するために、後を楽にするために銃撃に生徒たちにも参加してもらう。神里に聞いた、銃の腕の良し悪しや所持武器でサユリは2、3人からなる6つのグループに生徒を配置して3チームずつで左右に分けてモンスターの銃撃を指示した。

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