第13話 ハンター資格

「まずは互いの実力の確認が必要だよな。……というわけで、今って装備ある?」


「はい。念のため車に積んでます」


「ならこれから異界に行くか」


「ん。……どうせならみんなで行く」


「そうですね、あまり行けていませんので丁度いいです」


「そうね、今日は空いているから行けるわ」


「僕も大丈夫だよ」


 3人を技術者だから非戦闘員だと認識していた風香は、当たり前のように一緒に行くと言っていることに軽く驚く。

 異界に行くための、ゲートをくぐるための資格取得の難しさを知っているからだ。


「サユリさんらもハンターなのですか?」


「あ、いえ。正確にはサポーターですね。最近に取得しました」


 レンヤとアイナと同様に、サユリら3人もハンター資格を持っている。

 ただ、3人のはハンター資格といってもいくつかあり、3人が所持するのはサポーター免許というものだ。

 これは文字通りサポートをする者が所持する種類の資格で、レンヤとアイナ、風香が所持するハンター免許の資格よりも取得が容易なものである。

 ゲートをくぐるためには一定以上の能力ある者の同行が必須で、高ランク武器の購入と所持が厳しくなっている。

 とはいうものの、サポーターならではの技術や足でまといにならない最低限の戦闘能力などが必要で、簡単というわけではない。むしろ純粋な戦闘力が必要なハンターよりも幅広い知識と技術が必要な分、大変と言える。


「それでも十分すごいことだ。……ということは最低でもレンヤ君とアイナさんのどちらかはランク40以上ということですね。……お二人のハンターランクを聞いてもいいですか? 私は46です」


「ハンターランク…………」


「……早見さん、から……聞いた気が、する」


 レンヤとアイナがそういえばをそんなのがあったなと、ハンター協会支部の受付兼、2人のアドバイザーである早見から聞いていたなと思い出す。

 それは他者からはバレバレで、タクミとヒナコはジト目を、サユリはため息を、風香は「え?」と一瞬の硬直をさせた。


「な、なんだよ。……気にしてなかったんだから……し、仕方ないだろ」


「ん。……必要になったことない」


 ハンターランクのランクアップはハンターの討伐記録や素行、戦闘能力などあらゆるものからAIを活用して判断される。

 そのランクは元に依頼内容や購入や使用できる武器ランク、また強力なモンスターのために他パーティーと組むときのの優劣を決めの際など、様々な場面で必要になる。

 そう、なるはずのだが、2人にはその場面がなかった。

 まず、2人のハンター歴は1年半弱と浅く、藤堂斎のパーティー以外のパーティーやらクランやらと関わったことがない。

 そして装備にまだまだお金をかけていないため、ランク以上の武器を買うようなことにはならず。さらには、装備がまだまだ心もとないことを理解し、安全マージンを意識している2人は、早見やサユリが提案する依頼内容より難しい内容を要求することがないのだ。

 つまり他者のハンターとほとんど関わることがなく、自信過剰になることがない2人にとって自分達のハンターランクがどうとか、周りと比べてどのくらいのレベルにいるのかなど考えなていなかった。


「はぁ。兄さんが56で、アイナが51です。……えっとー……これです。このハンター協会のホームページのここから確認できますよ。……これからこまめにみてくださいね」


 サユリが自分のスマホを2人に見せて、教える。


 ハンターランクは1から100の間で、ランクが上がるほどに数字が大きくなる。

 そのランクはレンヤたちが夏休み明けから補助教師として通うことになる学校のような、ハンター関連の国立高等専門学校を卒業するとランク40からスタートでき、ほとんどのハンターは40からスタートしている。しかし、2人は通っていなかったため、高難易度の試験をパスして1からだ。それは高専2年生の1学期にハンター免許を取得してから2年ほど経つ風香も同様である。ちなみに風香が高専を3年で中退したのは、3年生の半ばでランク40になれたためだ。その後は所属したクランが悪かったせいで思うようにやれずランクがあまり上がっていなかった。


 そうこうと、ランク1からのスタートなのに、レンヤとアイナの2人は装備が心もとない状態の1年半弱のほぼ毎日通いで、風香は2年程の高専に通いながらで、そのランクに達している。これは周りいるハンターよりも圧倒的に早いスピードで上がっていて、3人の実力が高いことを意味する。


「流石です。私も頑張らなければ」


「風香さんも十分すごいよ。ランクはあくまで目安だからね」


「そうよ。どちらがどうとか気にしても仕方ないわ」


「そうですね、ありがとう」


「兄さんとアイナは少し、周りを気にしてくださいね」


「お、おう」


「オーキードーキー」


 それからレンヤやアイナ、風香の戦い方やサユリら3人の役割など、6人は親睦を深めるためもう少し、残っているお茶を飲みながら世間話を交わした。

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