第12話 新入り風香
明るく、病院の広々とした診察所のように薬品と資料と機械、そして2つの白いベッドが並び、空気清浄機の小さな作動音を鳴らせている家の地下。そのベッドに、ハンター活動を終えたレンヤとアイナが寝転がり、それぞれの傍らにタクミとヒナコがいた。
「いっ! つー」
「んっ……はあ"ぁー」
レンヤとアイナはファスナーなどの突起がないゆるい薄緑色のスポーツウェアを着て、タクミとヒナコは部屋着の上に白衣を羽織っている。
その体が資本なハンターである2人に、タクミとヒナコがそれぞれついて整体を施していた。
体の歪みや筋肉の張りなどをヒナコが診察し、タクミはその手伝である。
「アイナもレンヤも、凝りすぎよ。ちゃんとストレッチしてる?」
「ん。……してる。……最近は特に撃ってたからかも」
「俺も、はしゃぎすぎた」
「ほぼ毎日行ってるから。……僕らも最近は忙しいし、2人だけだと大変だよね」
「そうね。でも、気をつけなさい。凝ったらちゃんと言うのよ?」
「ん。……ありがと」
「おう」
会話を交えながらタクミとヒナコは、レンヤとアイナの筋肉の凝りや関節の縮みにといった捻じれを正していった。
その整体がほぼ終わった頃、タイミングよくして地下室の扉すぐ外の階段を降りる足音が鳴る。
「お疲れ様です。あ、ちょうど終わりましたか? 兄さんとアイナにお客さんですよ、風香さんです」
ドアにノックしてからサユリがガチャッと入ってきて、寝転がっていたレンヤとアイナは体を起こす。
「なんかあったの?」
「……急用?」
「いえ、話したいことがあるようです」
「ん? ……電話できない話?」
「そこまでではないようですが、連絡先を知らなかったらしく、わざわざいらしゃってくださったみたいですよ。…………はぁ、なんでしていないのですか?」
「……そういえば、してなかったな」
「……ん、忘れてた。…………そもそもこっちから連絡先聞く考え、なかった」
「だな、同年代なんかに知り合いなんていないし。数少ない知り合いも大人な向こうから聞いてくれるもんな」
「ん。……友達登録、やり方忘れた」
「……あ、あなた達がそこまでひどかったなんて、人付き合いの常識でしょ。あのとき楽しそうに会話してたじゃない? 普通そのときに聞くわよ」
「は、はは。……流石だね」
2人の陰キャぶりに他の3人はため息をつく。
「はぁ。リビングでお待ちいただいていますので、早く着替えて来てくださいね」
「おう」
「りょ」
すぐに部屋着に着替えたレンヤとアイナと、白衣を脱いだタクミとヒナコは、サユリとともにリビングに向かう。
レンヤとアイナの着替えは部屋の角に仕切りで設けられた2つのスペースで即座に着替え、白衣はそばのハンガーラックにかけるだけなので、5分ほどで移動することができた。
「お待たせして申し訳ありません」
「久しぶり」
「おひさー……」
「いらっしゃい」
「ご無沙汰してます」
「お邪魔しています。お忙しい中、申し訳ない」
サユリ、レンヤ、アイナ、ヒナコ、タクミの順の挨拶にリビングのソファに座っていた風香が座ったまま答える。
まだちゃんとは1度しか会っていないが、ダントツの人見知りのレンヤとアイナと意気投合し仲良くなったということもあって、そこそこ付き合いのある友人のように面倒な社会人の礼儀作法は使わなずフランクに挨拶する。
二言ほぢ最近あったことを交わして近況報告をし、さゆりがキッチンから紅茶を、タクミが茶菓子を持ってきたところで本題に入る。
「僕らも聞いて大丈夫ですか?」
「もちろんです。というかそんな大層な話ではありません。……ただ、ハンター活動に私も同行させて欲しいというお願いです」
姿勢を正してた風化が頭を軽く下げてお願いする。
「俺らと?」
「はい。私には一緒にパーティーを組んでくれる相手がいません。……高専を卒業したての頃はあるクランに所属していたのですが、嫌気が指して抜けま
した」
「あぁ。……人間関係とか面倒そうだもんな」
「はい」
風香が所属していたのは、ここらへんえを活動地とするクランの中でもトップ5に数えられるほどの大きなところだった。
そのため所属人数が多く、それだけトラブルも多くなる。
全てのクランにあるわけではなく、むしろ実力がものを言う世界な分、そういうところは全体の少数だがそれでもそこそこの数で存在する。
そして、風香が所属していたクランはそういうところで、年齢が若いのに実力が高かった風香は周りの妬みや上司の腐敗による被害などを被っていた。
それにより、ただでさえコミュニケーションが苦手な風香は集団活動に嫌気が指し、そのクランから抜けた。
「クランに嫌気が指したので他に所属する気が起きず、無所属のいくつかのパーティーに誘われましたが、合わなかったり、信用しきれなかったり……」
「実力差があったり?」
レンヤとアイナからハンターとしての実力が高いことを聞いていたヒナコが、少し言いにくそうな風香の変わりに言う。
「……はい。なので最近は伯父やその知り合いに混ぜてもらうか、浅場の依頼を1人でこなすことしかできず、……限界を感じて」
「なるほど」
発したレンヤ以外の全員も、多くのハンターの中で珍しく1人で活動する理由の大体の経緯を納得する。
「でも」
「ん。……私達でいいの?」
レンヤがちらりとアイナを見て、アイナの言う通り2人は自分達でいいのか悩む。
二人は風香に助けてもらったことがあるので大まかな実力は掴めているが、2人は助けられる念なところしか見せれていない。さらに液体金属の大剣を持つ風香とでは装備差もそこそこある。
2人は自分たちの実力が高いということは自負しているが客観的に考えると不満があると思い、自分達でいいのか気になった。
「はい。皆さんとなら嫌な人間関係を心配する必要はないと思いますし、レンヤとアイナの能力が高いことは、あのときの状況から鑑みてもわかりました。……それに、伯父からあなた方のことは聞いているので、信用できます。……なので同行させて欲しい」
風香が思いを強く声を発しているのが見て取れる。それだけパーティーの人を重要視しているということだ。
ハンターはモンスターを殺せる武器を所持し、それはモンスターよりも強度の低い人間を簡単に殺せるということになる。さらにハンター活動はゲートの奥と、隠すにはうってつけの場所だ。
命を預ける相手になる以上、実力があるハンターほど仲間を大切にする。
「俺たちも風香さんなら拒む理由はないが、……条件がある」
「ん。……私達は、戦いだけの付き合いは、認めない」
「どういうことですか?」
「そうですね。風香さん、兄さんたちとハンター活動をするためだけということは認めにと言うことですよ。……仲間になるならオッケーということです」
「仲間……」
「はい。とはいうものの、まだ短い付き合いなので難しいのはわかりますが、兄さんたちは風香さんに懐いていますし、私達も親しみを持っています。ですので、迷惑でなければ仲間としてより親しくさせていただけないでしょうか?」
サユリが丁寧に微笑みながら話す。
「そんな、迷惑なんてありません。むしろ嬉しい。……今まで深く関われる相手はいませんでしたので、私こそ迷惑でなければ……仲間に入れて欲しい、お願いします」
「……はぁ、硬いわよ。そんな重い話ではないなわ。もっと簡単な話よ」
「まぁ、僕たちもいなかったから、気持ちはわかりますよ」
レンヤやアイナはもちろん、サユリやタクミ、ヒナコも含めて生い立ちが普通ではないため、同世代の友人はほとんどいない。風香も世間話をするような知り合いはいるが、遊びに行くほどの友人は幼い頃はいたが、今はいない。
「そうですね。では今日から風香さんは私達の仲間ですね! とはいうものの、いきなりですので焦らずに、慣れていきましょう」
「おう、よろしく!」
「ん……よろ」
「よろしくね」
「よろしくお願いしますね」
「! ……はい、これからよろしくお願いします!!」
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