第二章 新生活
第8話 ハンター協会
レンヤ達5人が暮らす新拠点の近くにはなにかお囲むように、円を描くような独特な形状の、そこまで高くはないビルがある。
屋上には中心に向けられた機関銃やロケットランチャーなどの武器たちが並ぶ。都会に建てられたものとは違い、骨組みや壁の厚さから明らかに頑丈そうなのが見て取れる。
異界へと繋がる突如発生したゲート。それを囲い、もしものときにこちら側への防壁の役割も担った、管理し、監視するハンター協会名古屋地区ビルである。
中心のゲートは、古代の不思議な技術で作られたと思わせる、石でできた高さ9メートル程で横幅が5メートル程の大きな枠状で、その前後には左右に二つずつの計八つの石でできた道標なようなものがあって、まるで遺跡のような雰囲気を持つ。
それを囲むハンター協会のビルは、近代的で明らかに最新技術を用いて作られた無骨さがある。
中心には古代遺跡のような歴史を感じさせるものが立ち、その周りをSFチックな建物が囲む様は、和洋折衷のような独特な雰囲気を醸し出している。
新居祝いの次の日の朝9時、そのビルのゲートの正面側に位置するロビーに、黒に焦げ茶色のアクセントが入った防護服を着込んだレンヤとアイナが来ていた。二人は軍人が使うような大きなダッフルバックをそれぞれ2つと1つ持っている。
「おはよう、ございます」
「……おはようございます」
そのビルの正面入口である大きな自動ドアから入った二人は、軽く見渡し、目当ての受付人、茶髪ショートヘアーで童顔よりに整った明るそうな女性従業員を見つけて挨拶をする。
ここ最近は引っ越しで忙しかったため、二人にとってはちょこっと久しぶりなハンター活動である。
「おはようございます。お久しぶりですですね!」
「はい。お久しぶりです」
「……ご無沙汰してます」
僅かに硬さが残るが、二人にしてはスムーズに挨拶を交わす。
レンヤとアイナからは早見さんと呼ばれ、二人よりは一回りほど年上の、明るさと親しみやすさを持った女性で、二人とはそこそこの付き合いがあった。
ハンターは、資格が取得ができるとハンター協会から専属のアドバイザーが着き、この早見が二人のアドバイザーである。
アドバイザーと言っても、何人も兼任しているため二人にとってもアドバイザー側にとっても特別感は低い。
二人とアドバイザーである早川との付き合いは、二人が資格を取って8ヶ月程経つため、そこそこの付き合いがあった。
その間、何も問題なく関わり合え、二人がここまで会話できるようになったのには、早見の持ち前の優しさと明るさのおかげだろう。
そんなコミュニケーション能力おばけの早見が二人のアドバイザーになったのはもちろん偶然ではない。
コミュ力おばけの早川が二人のアドバイザーになったのには、通常は適当に振り分けられるところを藤堂が根回ししたためである。早見は藤堂のアドバイザーも兼任していて、藤堂からの信用もあつく、任されたのだ。
完全に越権行為だが、藤堂の実力とハンターランクに今までの活躍から、この程度のことなど見逃されている。
話は変わるが早見は藤堂に惚れている。
「お引越しおめでとうございます! 新しい住まいはどうですか?」
「ありがとうございます。そ、そうですね。サユリのおかげでとても快適なところでした」
「ん。……とても住みやすい」
「さすがサユリさんですね!」
早見とサユリは二人についての相談や連絡を取り合う関係から、今ではそこそこの友達同士になっていた。
そんなこんなと二言三言の世間話を交わしてから本題に入る。
「それで、本日はどのくらいにしますか?」
早見がいうどのくらいとは、どのくらい強いモンスターを相手取るかということだ。
基本的にハンターがモンスターを倒すことで得られる収入は、モンスターを駆除したとして得られる討伐報酬とモンスターの素材を売却することで得られる換金報酬がある。といっても討伐報酬は少なく、ほとんどが換金報酬で、その中でも素材は生命石がメインである。
これら討伐報酬と換金報酬は当然、モンスターが強ければ強いほど討伐報酬も換気する素材の価値も高くなるため稼ぐことができる。ただ、強いモンスター、高ランクモンスターはそれだけ命の危険を伴うことになり、また強力なモンスターはゲートから遠いところにいる場合が多く、そのため行って帰ってくるということも難しくなるため、ただ強ければいいというわけではない。
そのため、ハンター協会側はハンターの死亡率を下げるべく、どのくらいの強さのモンスターを考えているのかの希望を聞いて、そのハンターの能力にあっているのかを考慮し、適したモンスターがいるところを提案し、また道中を含めた注意事項を伝えたりするわけだ。
「いつも通りで、そこまで強力じゃないモンスターでお願いします」
「はい、わかりました! 活動が久しぶりなので、普段より少しだけ難易度を下げましょうか」
「ん。……お願いします」
「はい、任せてください!」
早見は持っている目の前のパソコンを操作して条件に合ったものを見つけ、タブレットに表示して二人に見せる。
「ではアルファー方面に少し進んだところの、このモンスターはどうでしょう?」
レンヤとアイナは目の前のタブレットに表示される情報を見て、場所からモンスターの大体の数と特徴を確認する。
「こいつにします」
「わかりました! では詳細の情報と座標をお二人の端末に送っておきますね。……車のレンタルはしますよね? いつものタイプでいいですか?」
「ん、……よろしく」
慣れた手付きで早見はすぐに手続きを終わらせる。
「はい、完了しました。車はいつものところで受け取ってください。最終確認を忘れずにしてくださいね」
「わかりました」
「……大丈夫」
「では、お気をつけて帰って来てくださいね!」
「はい。行ってきます」
「……ます」
二人はバッグを持ち直しビルの奥、ゲートの方に向かった。
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