第4話 24日目

 それから、三週間ほど経ったころ、AはCが休学したという話を人づてに聞いた。

 AはあれからCとは話す機会が無かったし、それどころか、なぜか、Bとも話す機会も減っていた。

 昼食時にたまたま学生食堂でBを見かけたAは近づいてBに話を聞いた。

「なぁ、Cの話聞いた?なんで急に休学なんだろう。あいつ何回悩んでたのかな。」

 Bはすこし困ったような顔をしながら、 

「ここだと少し話しにくい。今日の五限の講義が終わったら、正門出たところの喫茶店で会おう。俺が知ってること話すから。」

 そう言って、その場ではBは話を遮った。


 五限の講義が終わる時間になり、Aは言われた通りの喫茶店に向かった。

 そこではBが先に来ており、すでにコーヒー注文していたようだった。

「わざわざごめんな。あそこだと周りの目があってさ。一応Cの名誉にかかわることかもしれないから。」

「そんなに深刻な話なのか?」

「正直なところ、俺もよくわかってない。ただ、聞いたところだと、やっぱりCは少し変になってしまったみたいで。」

「どういうこと?」

「つまりさ、Cは、変な言動しだしたんだって。Cと俺と共通の知り合いが言ってたんだけど、3人でコンビニ行ったあの日以降、Cはそれまでよりも挙動不審になったんだって。特に暗がりが駄目みたいで、日の当たらない暗いところを見つけると異様に怖がったり、時には奇声を挙げたりするんだって。」

「それって、あの日のことがかかわってるのかな。つまり…。」

 Aが言いかけたところで、Bが遮る。

「それはわからない。ただ、タイミングは一致している。あの日を境に変になった様子だし、俺たちが話を聞かれている間、Cがひとりでコンビニのあたりをふらふらしていたのも間違いない。」

「つまり、もしかしたらCはあのとき…。」

「言いたいことはなんとなくわかる。だけど根拠はないさ。今はCが心配ではあるけどさ、だからと言って俺たちに何かできるわけでもない。偶然だということで、忘れよう。もし、Cが戻って来れる様なら、その時は迎えてやろうよ。」

「そ、そうだよな。」

 結局その日は、それでCの話は終わりになった。Cは、実はあの隙間で幽霊を見てしまい、そして取り憑かれてしまったのではないか、その疑念をAは拭うことができなかった。けれど、一般的な話で言えばその方がよっぽど荒唐無稽な話であり、ほとんどの人はそんな仮説を信じないだろう。

 Bがいう通り、原因について考えることを忘れて過ごすのが良いのだろうと、Aは自分自身を納得させることにした。

 ただ、Aは、Bが話している時の様子、なぜかAを説得する様な、そして、Cの窮状を伝えているはずなのに少しだけ微笑んでいる様な様子を、薄気味悪く感じていた。


 

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