本作は、フランス革命とそれに続くナポレオン戦争の一幕、エジプト遠征を主題に書かれた歴史小説です。
筆者さまの膨大な知識と、独自の知見により、戦争の天才として持ち上げられがちなナポレオンを杜撰で利己的な小人物に描くことで、彼に振り回されながらも各々の信念と責任において最善を尽くそうとする将軍、兵士たちのドラマが浮き彫りにされています。
高潔ながら俗人っぽさもあり、どこか真意を読み取らせない元ライン・モーゼル軍の英雄ドゼ将軍を中心に、思想も境遇も対照的な少年兵のジャンとアンリ、ナポレオン麾下の諸将が、ヨーロッパ、シリア、そして灼熱のエジプトを舞台に織り成す群像劇は、まさに圧巻です。
個人的には、後々まで『不敗の元帥』として歴史を戦い抜くダヴーの、空気を読まない子供っぽさが可愛らしく、著者さまの他作品との関連を含めて楽しませてもらいました。
熱砂の大陸に刻まれた、熱い男たちの生きざまを、皆さまもぜひ御堪能ください!