第8話8

コウの、ハイリゲン領への赴任と言う名の追放は…


ハイリゲンの危険で凶暴なモンスターや魔物。


ハイリゲンの領民と領土の貧困。


コウのハイリゲンまでの旅費と着いてからの領地管理費とコウの生活費が、ほとんど父であるアルフレイン公から与えられない…


という問題の他にもう一つあった。


それは、この豊かな王都から、コウに付いて荒れ地ハイリゲンに一緒に行ってくれる者が誰もいないという惨状だった。


勿論、アルフレイン邸や王都で、コウの同行者は広く募集されていた。


コウの右腕となり、政治的金銭的な助言の出来る側付き。


コウの身辺警護をする護衛騎士。


コウの食事の世話をするコック。


しかし、アルフレイン公曰く、誰も未だに手を挙げる者がいない。


もう、コウの出立まで日にちが無い。


いずれ、アルフレイン公により、無理やり同行者は決められるだろうが…


出来損ないのアルファに付いて魔物のうよる危険な荒れ地にいかないといけないなんて、しかも、給金が絶望的に安いなんて死刑宣告を受けるようなモノだ…


と、アルフレイン邸内や王都で人々が噂し合ってるのも、コウ自身も知っている。


そして唯一、コウの馬の世話人としてジョーンズが同行をしたいとコウに言っていたが…


ジョーンズは恋人の女性から、ジョーンズがハイリゲンに行くなら、ジョーンズと結婚もしないし別れると言われてしまった。


ジョーンズは、まだコウとハイリゲンに行くと言っているが…


ジョーンズと彼女の話し合いはずっと平行線のままのようだし…


コウは、たった一人の大切な親友の将来を思うなら、ジョーンズはこのまま王都に残すのがいいと思っている。


「コウ…」


まだベランダに跪き色々考えているコウに、アキ王子は囁いた。


そのあまりに艶っぽい切な気な声に、思わずコウの体が反応し動けなくなる。


だがそこに突然王子は、床に両膝を付きコウを抱き締めてきた。


強く、強く、アキ王子の腕がコウに絡み付く。


「でっ…で…んか…」


コウは、アルファと思えない程戸惑う。


しかし…よく見ると…


コウを抱き締めているアキ王子だったが、どこかコウに必死で抱きついている感じにもどこか見える。








































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