第9話9
満天の星空の下。
ベランダに跪くコウと、同じくそこに両膝を付くアキ王子のシルエットが重なる。
抱き締められてるような…
抱き付かれているような…
アキ王子の抱擁は、コウにとって不思議な感覚だった。
コウが色々な感情で体が固まっていると、アキ王子は、更にぎゅっとコウの体を抱き締め、コウの耳元で囁いた。
「コウ…これからアルフレイン公に二人で会いに行こう…行って、私がアルフレイン公にコウのハイリゲンへの赴任は必ず取り消させるから」
「えっ?!…」
コウが返答を迷っていると、アキ王子はそっとコウから体を離し、両膝を床に付いたまま後ろを向いた。
そして、アキ王子の美しく長い金色の後ろ髪をかき上げて、コウにアキ王子の黒のガードの巻かれた項を見せた。
そして、そのガードを勢いよくアキ王子自ら取り外し横に投げ捨て、熱い吐息混じりで呟いた。
「コウ…噛んで…今ここで私の項を噛んで、今すぐ私をコウの番に、コウのモノにしてくれ…今すぐ…」
アキ王子は、その項すら美しかった。
そして、そのアキ王子の凄まじい色気がだだ漏れの姿は、剣と食い物にしか興味の無い恋愛にど疎いコウですらたじろがせた。
そしてコウは、アルファとしてフェロモンも出ないし、王子のそれも感じ取れないのに…
下半身が妙に熱くなってくる感覚に慌てた。
だが、アルファとして病持ちで不完全なコウがアキ王子の項を噛んだからと言って、番契約が完全になるか否かも分からない。
「はっ…早く、早くコウ…早く…ここに欲しい…ここに欲しい…コウが…」
そう息を上げ焦れるアキ王子が、コウの右手を強引に取った。
そして、そのコウの右手の指を、アキ王子は、そっとアキ王子の噛んで欲しい部分に触れさせた。
(熱っ!)
コウは、その肌の温度に驚く。
「はぁ…コウ…コウ…早くぅ…早く、くれ…」
アキ王子は握るコウの手を使い、何度もアキ王子の項を上下に撫でさせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます