第7話 容量用法を守って、正しくお使いください

「えっと、俺が見ている方向がこっち。

 ってことは、この道を真っすぐか……?」


 俺はスマホをにらめ付けながら、ぐるぐるその場で回転する。

 このスマホはシャインさんの予備を借りたものだ。

 透明なスマホケースに大きなシールで、『予備』と貼られているからわかりやすいな。


 というわけで、俺は初めてスマホの地図アプリを使って、ピンが立っている本部へと向かっている。

 俺の名前は金星売斗かねほしばいとです!!! スマートフォンを使ってます!!!!!


 ウリテーシジョウを出るときに、シャインさんが


「試験の際に体を動かす可能性もあるので、動きやすい服装を用意しますね」


 と気を利かせてくれたから、俺は運動に適して、なおかつ少しオシャレな姿をしている。

 シャインさんマジ尊敬するっすわ。

 さらに交通費まで出してくれたのだから、輝きが留まるところを知らない。

 好感度も青天井のうなぎ登りだ。


 それに比べてフリータは……。

 まあ、彼女はまだまだ子どもだからな。

 逆にお金をもらったり、服をもらったりしたら自分が情けなくなるわ。


 

 格闘しながら、そうこうしながら、交通機関を利用して、目的地に到着です。

 って、ここコンビニじゃないか。

 でも確実にここにピンが立っているんだよなあ……。

 このピンが立っているところですって、シャインさん言ってたよなあ……。

 とりあえず入るか。


 あの入店音が鳴る。


「いらっしゃいませこんにちは! いらっしゃいませこんにちは! いらっしゃいませこんにちは!」

「ブッ〇オフか!」


 あの有名なコントのワンシーンを実際にやる人間がいるなんてびっくりだよ。

 元気のいい店員がいるなあおい。

 夜勤明けとかの人には少々厳しい元気の良さだぞこれ。


 さて。入店してみたものの、品ぞろえとか配置とか、普通のコンビニだな。

 あまりキョロキョロしていると不審者みたいになっちゃうから、それとなーく観察しよう。

 何か普通じゃないところ……普通じゃないところ……。


「ノリのいいお客さんっすね! ツッコミなんて初めてされたっすよ!」


 さっきの元気な女性店員さん話しかけてきたんだけど!

 コンビニの店員さんってそんなにフランクな感じだったっけ!?


「え、ああ、つい。あはは」


 ほら。なんかクラスのカースト上位の女子に絡まれたオタクくんみたいな返事しちゃったじゃないか。

 俺は違ったと思うぞ。あまり覚えてないけど、たぶん。


「わたしパートなんすけど、連絡先交換しません?」


 んー? 何か日本語おかしくない?

 パートなんだけど連絡先交換?

 その流れなら、名前名乗って交換じゃないのか。

 いや、最近は違うのかもしれない。時代に流されるな。新時代だ。


「いやー、それがスマホとか持ってなくてですね、俺」

「じゃあ今手に持ってるのなんすか?」


 あ、そうだった。

 今は俺持っているんだった。スマホ。

 なんか感じが悪い人間になっちゃった……。


「これ、友人のものを借りている状態でして……。

 連絡先になりそうなものは……実家の固定電話の番号とかしか……」

「っぷ! なんすかそれ! お客さんマジでおもろいっすね!」


 大笑いされた。

 手をバンバン叩きながら腹抱えている。

 ちょっと見た目は小麦色の肌で怖そうな人だけど、笑顔はすっごいかわいいなこの人。


「はー。おもろかった。じゃあ案内するっすね」

「???」


 ???


 心と体のシンクロ率高かったぞ今の。


 案内すると言ってたけど、どこに誰を?

 いや、誰をはさすがに俺だと思う。

 他にお客さんいないし。

 でもどこに?


「どうしたんすか? 適性試験はもう終わりっすよ?」

 

 彼女は不思議そうな顔をして俺をカウンターの中に招いている。

 ちょっとあざといな。


 そして俺は聞き逃さなかったぞ。

 適性試験って言ったな。

 確か、その場のノリと雰囲気で決まるって。

 え、そういうこと?


 

「お兄さんは聞いてたとおり、運搬人が向いてそうっすね」


 従業員室のロッカーの中から、地下に向かって続く階段を歩いている。

 秘密基地感満載の仕掛けにちょっと心が弾んだ。


「聞いていたってことは、事前にシャインさんかフリータから連絡があったってことですか?」

「堅苦しいっすよお。タメ語でいいっす。

 そしてそのとおりっす。人相とスマホケースに予備って書かれているって連絡があったんっすよ」


 この人が試験官だったってことだな。

 いったい何を試験したのかよくわからなかったが。


「いやー。最近新人が入ってこなくて大変だったっすから。仲間になってくれてうれしいっす!」


 シャインさんも人手不足ってなげいていたな。

 秘密組織だから、なかなか人が集まらないのだろう。


「事前に説明があったと思うっすけど、このあとはさっそく訓練が始まるっす。

 とりあえず交渉訓練からやろうかなって思うっす」

「訓練もえっと……パート? がやるのか?」


 たぶんパートが彼女のコードネームだろうと踏んだ。


「そうっすよ。わたしのコードネームはパートっす。

 訓練も担当するっすよ。先輩っすねわたしが」


 相変わらず心が読める皆様なことで。


 口調は後輩系なのに先輩なのか……アリだな。


 延々と続いた階段がついに終わって、そこにあった扉を開けると、秘密組織らしい廊下に出た。

 これよこれ! 人気ひとけがまったく感じられないことは残念だけど、逆にそれもいい演出になっているな!

 

「じゃあそこに座ってほしいっす。ちょっと準備してくるっすね」


 尋問室じんもんしつみたいな部屋に入って、パイプ椅子に座った。

 カツ丼でも出てくるのかな。


「おまたせしたっすー」

 

 部屋の外から戻ってきた彼女は、白いターバンを頭に巻いて、青い上下に身を包み、鼻の下にヒゲを付けていた。


「アキ〇イターじゃねえか!!」


 今回パロディ多すぎないか!




〇〇〇お礼・お願い●●●


第7話をお読みいただきありがとうございます!


今回のパロディネタがすべてお分かりになったという方は!

ぜひ、★評価とフォローをお願いします!


それでは!

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