第2話 セット&蹴り出し

 僕が彼女と初めて会ったのは大学の構内だった。彼女は体が弱く、体調を崩しやすかった。その時も体調を崩していて、僕が保健所まで案内した。大学卒業後、ドリーム社の入社式で彼女と再会した時は僕も驚いた。僕たちは何かの縁だと思って連絡先を交換した。ある日、彼女の祖母ゴショガワラマフユさんが病で亡くなってしまった。その後、彼女はドリーム社を辞め、マフユさんの家で暮らすことにした。それが宣託市のはずれにある丘の家だった。僕は時折彼女に電話をした。彼女の体調を確認する為で、昨晩もそれで電話をした。どうも体調が優れないらしかった。彼女には人を幸せにする不思議な魅力があった。だからこそ、彼女は元気でいてもらわないと困るんだ。

「僕は、彼女の元気を取り戻したいです。」

ボランティーノさんは、大きく頷いた。そして、冒頭に戻る。

「この仮面を着ければ君の願いを叶えてくれる。」

恐る恐る仮面を着けて、僕は願った。

「失われた幸せを取り戻したい!」

その時、仮面に付けられた宝玉が瞬く間に輝き、僕は全身に力が漲るのを感じた。どこまでも走っていけそうな程に。

「君と仮面は一心同体だ。君は願いを叶える為に走るんだ。その名は仮面ランナー」

「仮面ランナー・・・?」

「そうだ。強そうだろう。実際強い。その宝玉が力を貸して超人的な力を発揮できる。」

その時、仮面から発せられる何かが僕を覆う感覚があった。

「一度出発したら、願いを叶えるまで止まることは出来なくなる。」

「後戻りはできないというわけか。面白い。」

僕はゆっくりと支店の外に向かった。ボランティーノさんは見送るためついて来た。僕は地図アプリで方向を確認した。

「あっちか。」

「極秘プロジェクト完成の為に必ず帰ってきてくれ。」

僕は頷くと、足を踏み出した。

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