第17話 勝負下着オバサンの洗礼
物件探しは全部三條に任せてたから知らなかった。っていうかご近所に挨拶回りも行ってなかったけど、三條が済ませてると思ってた。そういうことだったの!? そういうことだったの!?
なんかめっちゃいいことした雰囲気だったのに無意味感ぱない。まあ、会社員さんが天国に行ってくれたのはよかったかもしれないけど。しれないけど!
「大丈夫、藤蓮交えて舞い踊る。人の夢見の救わるるなし」
「藤、綺麗に歌っても言ってることクズだからね」
蓮と一緒にご近所さんの夢枕に立つってことでしょう? ポルターガイストよりヤバいから!
「私もポルターガイストしようかしら」
「やめて花子、やめて」
なんで正常な幽霊がいないんだろう? いや、幽霊に正常なんてないのか?
「わたしのしょうぶしたぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
あ、一気にどうでもよくなった。
こいつがまだいるんだった。
会社員さんのポルターガイストなんてまだ序の口だった。
ここに勝負下着への執念で居座るオバサン幽霊がいるのだった。
まあ、アラフィフで勝負下着とか笑えるけどね。熟女好きしか興味持たないだろ。
うーん、どこからが熟女なんだろう……六十からかな。
まあいいや。
こいつは今のところ害はないし。
「って、あれ?」
消えた。私が見えなくなったということはあるまい。藤や蓮、花子も健在だ。幽霊に健在が正しいかどうかはさておき。
ということは移動した? どこに?
「しょうぶしたぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
「うげっ」
寝室から声聞こえたんだけど。
慌てて寝室に行くと、オバサンは勝負下着勝負下着と三條の枕元で叫んでいた。シュールだ。
よく三條起きないな。聞こえないのか?
「やっぱり無害じゃん」
そう思っていた時期が、私にもありました。
朝。
珍しく三條が私より遅く起きた。いつもしゃきっとしているのに眠そうだ。
「どうした? 三條」
「わあっ、魁さんが僕のこと心配してくれるなんて嬉しい」
朝ごはんに焼いた食パン口に突っ込んでやった。
もぐもぐと幸せそうに食べる三條。口を離し、
「魁さんの手料理が食べられるなんて最高だ」
トーストごときを手料理と言ったら、料理人どころか世の主婦さまに失礼だろう。まあ、スクランブルエッグとかもあるが。
それはさておき。
「お前が朝遅いとは珍しいな。夢見でも悪かったか」
「そうなんだよ、魁さん聞いてくれる?」
「だから聞くから聞いてるんだろうが」
面倒くさいやつだな。
どさくさ紛れに握られた手を払いながら、で? と先を促した。
三條も時間がないので語り始める。
「わだしのしょうぶしだぎはどごだぁぁぁぁぁぁっ!? って叫ぶオバサンに迫られて追いかけ回される夢を見たんだ」
……
…………
………………
ナンデスッテ。
「勝負下着を探すオバサン~? ぶわっはぁっ、真面目なつっくんにしてはまた随分なジョークだね」
「四善、真面目の部分に抗議していいか?」
「ちょっと二人してひどいよ。本当なんだから」
私は信じていると言っておろうに。あ、でも三條が真面目、私をストーキングするのも真面目さ故と考えれば、いやいや。
ともかく、あのオバサン幽霊、夜な夜な何してるかと思えば少年の夢枕に立ってまで勝負下着の話かよ。どんだけ勝負下着があんたの人生決めてんだよ。
はあ、しかし、夢枕なあ。実質的な被害はないが精神攻撃として考えよう。「しょうぶしたぎしょうぶしたぎ」と叫ぶオバサンに毎日夢枕に立たれる。頭がおかしくなっても仕方ない。
──いや、冷静に考えよう。三條は元々頭がおかしいのだ。
「なんか魁さんに失礼なこと考えられてる気がする」
「謂れのない罪を私に押し付けるというのか、三條よ」
「ごめん魁さんそんなつもりじゃ」
扱いやすいが抱きつくな。
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