第13話 アウトオブ眼中
サイトを閉じて、三條の向かいに座る。
桜と菜の花を切り崩して混ぜる三條を見ながら、さっきのナチュの発言を思い浮かべた。
両親が忙しくて、小学生から自炊。
……もしかしたら、寂しかったのかもしれない。小学生で家にひとりぼっち……兄弟がいるという話は聞かないからたぶんひとりぼっちだ。
小学生でそれだと確かに寂しいな。私には両親と生意気とはいえ弟がいたからなかなか賑やかだったが。そんなことなら、友達のよしみで三條を家に招いてやるんだった。
そんな家庭環境だから、こんな歪んだ独占欲が芽生えたのか。そう考えたら可哀想な気もする。
「魁さん、何考えてたの? 五月さんのこと? それとも入学早々いじめをはたらいた身の程知らずをどう罰するかってこと?」
「後者こえぇよ。……あんたのことだよ」
「ひぇっ!?」
なんでこれだけで耳まで赤くなるかね。耐性なさすぎだろ。
色々な意味で今後が心配だな。
「ねぇねぇ魁さん」
「なんだ?」
お吸い物を啜りながら、話しかけてきた三條を見やる。実家に比べたら静かな食卓だが、悪くない。
と思っていたのだが。
「僕もバイトしようと思うんだ。魁さんと同じところで」
「ぶふっ……」
爆弾落としやがった。
「やめろ。切実にやめてくれ」
同居だけでももうたくさんなのにバイト先も一緒とかこいつと同じ空気吸い続けるの?
それにこいつはイケメン。職場はイケメンに飢えたおばさま方の溜まり場。嫌な予感しかしない。
「でも、このままヒモとか、穀潰しとかになるの嫌だし」
「いや、家事やってくれるだけで充分だし」
「魁さんがいない世界なんて嫌だし」
「殺すな! 人を勝手に殺すな!」
同じ空間の空気吸いたい系か? 面倒くさいな。
「とりあえず、だ。あんたと私が同居してるのはバレたらまずいんだ。自重してくれ」
うん、その頭に疑問符浮かべるのやめようか。
美人×絶対的イケメンは厄介事しか引き寄せないと思う。
ただでさえ、私はいじめの対象なのに、これ以上理由を増やさせるのは考えものだ。
目の前のイケメンはそういった経験がないようだが、中学時代の私を囲う状況から考えてほしい。
何しろ高校にも舞がいるのだからな!
「舞って誰だっけ?」
「知らんのかい!」
むしろ意外。いじめの首魁知らないとか意外。私の交友関係調べたら絶対出てくるだろ双葉舞。
「あー、あの超絶美少女なことを鼻にかけている自意識過剰美少女ね」
「美少女なのは認めてやるんだな」
「女の子には優しくしろって父さんから教わった」
いいお父さんだな。
「まあ、大体その認識で合ってるな。むしろそこまで知っててなんで名前知らなかったんだよ……」
つかみどころがないっつうか。
こいつと上手くやっていけるか幸先不安だ。
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