第11話 お見合い相手は好青年だった
待ち合わせは場所は船を降りてタクシーで15分先のグランピアホテル内にある
ラウンジスペースの喫茶店だった。
はっきりいって私は釣書も写真もマジマジと真剣に目を通してはいなかった。
だからお見合い当日になっても彼の顔が頭に浮かばないくらい私にとっての
お見合い相手は存在感がかなり薄かった。多分、彼も同じだろう。
礼儀正しくも彼は釣書を書いてきていたが、私は釣書も書かなかった。
というか、書けなかった。改めて釣書作成しようとペンを取った時、私の経歴が
あまりにも何もない事に気づいたからだ。会社に勤めているわけでもなく、いい大学を卒業したわけでもない。ただ平凡に公立高校を卒業しチラッとコンビニでバイトしていたがすぐにやめて畑仕事を手伝うようになった。
若い時の私なら即答で『NO』と否定するだろう。だが、将来の不安から私がその
お見合い話に心が動いたのは確かだ。
きっと、彼も会った時の第一印象で決めようと思っているのだろう、、、。
写真を見てしまうと外見にとらわれ、どんなに相手の中身が良くても、写真映りの
外見が第一印象になってしまい、会う前から
それがわかっているから私が彼の釣書も写真も見なかったように、彼はもまた
見合い相手の釣書も写真も拒んでいたのだと思う。それは互いに想像する視野が狭くなると思ったからだ。それに私自身、半分成り行きで『会う』と言った部分もあったし、10歳も年上の彼は私にとってはオジさんというイメージが強く、釣書や写真を見て想像が半減して彼に会う前からテンションが下がるのは嫌だったからだ。
そんな私と彼の共通の話題って何だろう…。と、ふと思った。果たして、話なんて
合うのだろか……。
恋愛小説家を目指しているのに現実に恋愛したことが殆どなかった私は憧れや夢、
理想がどんどん高くなっていて現実の恋愛がどんなものかさえもわからなかった。
学生の時のようなトキメク気持ちはもうないだろう……。
じゃ、結婚の決め手になるものって何だろう?
やっぱり生活か…。この人と一緒に何十年も暮らしていけるかどうかという安心感。
と、もう一つ…この人の子供が産めるかどうかということしかない。
それは、多分、相手も同じことを基準に考えていることだろう、、、、。
「もう少し、派手な服がよかったかなあ…」
自分が持っている服の中から一番新しい服を選んでよそいきの格好をしてきた
つもりだが、いざ町に出て見ると行き交う女性達は皆 オシャレでキラキラ
していた。
何もかも中途半端で夢をあきらめきれずに
結婚適齢期は30歳までと周囲の人達は言うけれど、
「志穂、女は中身で勝負よ」
母が小さくガッツポーズを見せて言った。
〈中身もつまらないんだけど…。多分、男性から見ればきっとそう思うだろう〉
「ありがとう…」
私は小さな声で答えた。
そんな
その言葉が私はとても嬉しかったんだ。
このお見合いは最初で最後だ。10歳も離れた男性に断られたら私は
もうおしまいだろう、、、。老後は一人寂しく孤独死か……。
恋愛はホントにめんどくさい。
でも、お姉ちゃん達の子供を見ていると生意気でも子供は欲しいとか
思ったりもする。
『志穂、子供は30歳までに産んだ方がいいよ』
『そうそう、育てるの大変だし、産むのもめっちゃ体力いるしね』
『その前に相手見つけなきゃね』
『そうね、相性も大事だしね』
『志穂ちゃん、早く結婚した方が良いよ』
『志穂ちゃん、まだ彼氏できないの?』
『志穂ちゃん、あたしでも彼氏いるよ』
『あ、あたしの彼氏はね、同じクラスの和也君だよ。スポーツ万能でめっちゃカッコいいの』
『え?』〈マジですか…?〉
あげくの果てには姪っ子達にも『早く結婚して』と言われ、、、
〈しかも、小学生で彼氏って…早すぎるでしょ。
今の子共達の恋愛感は本当にマセているな、、、〉とか思ってしまった。
自分の将来の事を考え出したのは姪っ子達の発言が大きかったりもする。
このままいくと、姪っ子達に『先おこされるかも…』なんて思うと、
成長した姪っ子達の結婚式を羨ましそうに見ている自分の姿がとても
色んな思いが脳裏に行ったり来たりと巡らせながら私は母の一歩後ろから
いざグランピアホテル内へと進行していったのだった。
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