第4話 美由紀が決意に至る5日前――

高杉の49日が終わり、美由紀は黒の衣装を身に着け、まるで魂がぬけたみたいに

ぼんやりと一人暗い居間に取り残され座卓テーブルに片肘を置いてポツリと座って

いた。美由紀の心は虚しさと寂しさがで埋め尽くされていた。

そんな時、夕暮れ空が薄暗く落ちていく濃いめの灰色空を覆うように黒い雲が風に流され丸い月明かりが顔を出す。その瞬間、一つの光となり窓に反射した明かりは暗い部屋にともしびを照らし一本の白くて太い線が伸びていた。

その光の先には美由紀等が移住してきた時よりも もっと以前から置いてある古くて傷んだ本棚が立っている。美由紀等も前に住んでいた人の家宝だと思い、処分しないでその場所から動かしたこともなかった。この十年間、本棚を開けることも、本棚に

立てかけられた数冊の古本に触ることもなかった。

美由紀の視線は光の道しるべに吸い込まれるようにその場を離れ本棚へと足が進んで

行った。美由紀は本棚を開けると、無造作に一冊の本を手に取った。美由紀はなぜ

その本を手にしたのかわからなかったが、何かの手掛かりが書かれている本のような気がしたのかもしれない。所々、破けた箇所もあったが、小説か何かと思ったその本はこの町の伝説がリアルに示された本だった。


【死神について】(一部本の内容より)


昔、昔、数百年も前のことだ。雑木林の奥にある小屋で私は男をあやめた。

そして、私は穴を掘ってそいつを埋めた。それから、この島に次々と不幸が訪れた。

不幸はいつも友引にやってくる。


そいつは死神となって復讐を果たしているのだろうか。


多分、いつか私もそいつにられるだろう……。


もしも、そいつが選ばれし死神になったのだとすれば、私が死んだ時は生まれ変わり、必ず勇者となろう……。


この世に悪を封じるために私は命と引き換えにこの島を救わなければならないのだ。

それが、今、私がやらなければならないことだと思っている。


(……本の内容、以下省略)




この時、美由紀の脳裏に一つの仮説が立てられた。



〈もしも、何らかの事故で神之介が死んだとすれば、神之介が死神となり

周作を殺した……〉


神之介に会うためには『死しかない』と、美由紀は思ったのだった。



洗脳され思うがままに美由紀はあやつられ死へ導かれていく。

その行動は誰にも止めることはできない。


そう、狙った獲物は必ず仕留めに来るのが死神だ。


それは友引の日にやってくるーーー


『お母さんもこっちにおいでよ』


美由紀の耳に神之介が囁く声が聞こえた―――。


〈神之介が呼んでいる……。神之介…神之介……〉



『お母さん…今からそっちに行くからね、待っててね……』





そして友引の夜、美由紀の自殺行為が実行されたのだった――――ーーー。





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