第3話 友引――ーー
10日後、冷凍された高杉の遺体が高杉家に帰ってきた。司法解剖の結果、不審な点は見つからずとして、警察側は自殺として処理された。
高杉の遺体には数か所のメスの痕が痛々しく切り刻まれ、美由紀の目から涙が溢れて止まらなかった。未だ神之介も見つかっておらず謎を残したまま捜索活動も打ち切りとなってしまった。
「美由紀さん、神ちゃんのお葬式だけでもした方がいいんちゃう?」
「そうね。もう10日だもんね」
「可哀そうだけど、もう無理じゃないんけ」
「ねぇ、お父さんと一緒に葬式あげてあげたら?」
美由紀は神之介の死を納得していなかったが洗脳されるように住人達の言葉が
頭の中でグルグルと回り、仕方なく高杉と神之介の葬式を同時にあげた。
一つの歯車が狂うと人は簡単に生きることをあきらめてしまう。
美由紀の心を心配していた吹石家の人達は時々、入れ替わり立ち替わり
美由紀の様子をさりげなく伺いに行っていた。吹石家以外の近所の住人達も
それは同じだった。美由紀に野菜やお米を持って行ったついでに美由紀の顔色を
確認していたのだ。家族を亡くした者は残された者が後追いをしない為に香良洲島の
住人達は美由紀を監視していたのかもしれない。
だけど、そこにはもう一つ理由があったのだ。
高杉家がこの香良洲島に移住してきて十年経つが、それ以前から香良洲島に伝る
死神伝説を美由紀と高杉は聞いたことがなかった。
平和な町お越しに至るまでの経緯には高祖父母時代以前に最も苦労したと吹石世代の住人等は祖父母や曾祖父母に聞いたことがあったかもしれない。
未だ神之介が行方不明だということと、代わりに高杉の遺体が置かれていた場所、
吹石や住人等は暗黙を保ちつつ、『もし【
葬式から49日が過ぎ高杉の遺骨はお墓に納骨された。そして、先が見えない不安に直面した美由紀はそれから数日後、自ら手首に果物ナイフを入れ命を絶った。
第一発見者は吹石の祖父、
正太郎に発見された時には大量の血が流れ美由紀はもう手遅れだったーーー。
死因は手首を切った時の出血死。
その日、カレンダーの暦は友引を示していた―――ーーー
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