第2話 少年の死、選ばれし死神、ここに現れる
暫く電話の前に立ち尽くしていた高杉は我に返ると、電話のプッシュボタンを押していた。今日は先生の会議があり、高杉はついさっき12時前に駐在所の前を並んで
帰る子供達の集団下校を見送ったばかりだった。高杉も子供達の最後尾に並んで歩く
神之介をその目で見ている。
そう、あれは2時間30分前のことだ――。
駐在所内にいた高杉は小学校校舎の正門から子供達が出てくるのが見え、その足を
外へ向けて進めて行った。
子供達は安全確認をして横断歩道を渡り駐在所の前を通る。
『おまわりさん、いつも、見ててくれてありがとう』
子供の一人が駐在所の前に立つ高杉に声をかける。
『今日は学校終わるの早いな』
『先生の会議があるんだ』
『ほう、そうか。気をつけて帰れよ』
『はーい(笑)』
高杉は
視線が合う。
(気つけて帰れよ…)
(父さんも仕事頑張って)
高杉と神之介は笑顔で無言の会話を交わし子供達は駐在所の前を通り過ぎて行った。
(確かにあの時、子共達の集団の中に神之介はいた)
高杉は確認するために家に電話をかけていた。
トゥルルルル……
電話の向こうで響く音がやけに長く、遠くに感じていた高杉はイラ立ちと焦りから
無意識に足踏みを連動させていた。
(なぜ、出ないんだ……まさか…美由紀にも何か……)
増々、嫌な予感が高杉の脳裏をかすめる。
そして、ちょうど足踏みも10回目に到達した時だった。
「はい、もしもし…」
美由紀の声に高杉は『ホッ』と一息を入れる。
「み、美由紀か? そっちは大丈夫なのか?」
「え、周作? うん、大丈夫って…どうしたの?」
「神之介は?」
「ああ、今日、先生の会があって12時過ぎに帰ってきたんだけど、ご飯を食べて
また出かけたわよ」
「え? どこに?」
「さあ…」
「さあ……って、お前な……」
「なに? どうしたのよ」
「神之介…誘拐されたかもしれない」
「え、誘拐って…まさか…。こんな平和な町で誘拐って…そんなこと言ってると
バチが当るわよ。まあ、夕方になればすぐに帰ってくるわよ」
「電話があったんだ…」
「え…」
高杉は事情を話そうか迷っていたが、結局、美由紀にだけは話しておこうと思い、
死神から電話があったことを説明した。美由紀は何も言わず黙ったままだった。
「美由紀?」
高杉の問いかけにも美由紀は答えることはなかった。そのうち、「ツー、ツー」と
電話が切れた音が高杉の耳に入り込んできた。
一方、美由紀は動揺し高杉の声も耳に届かず、その場にしゃがみ込んでいた。
唖然と衰えた眼差しで
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