第3話 仕事に生きるわ 生きるために(切実) 2
「キミがビアズリー伯爵家の一人娘……」
「はい。アイリスと申します」
サットン商会の取締役室に面接へと参りました。
面接相手は、商会代表であるサットン子爵です。
サットン子爵は24歳。
金髪碧眼の、無駄に顔が良いタイプです。
「ビアズリー伯爵というと、アンズリー侯爵家の……」
「はい。アンズリー侯爵は私の祖父でございます」
「キミが結婚してビアズリー伯爵家を継いだら、父上がアンズリー侯爵になるのかい?」
「はい。そうです」
「では。キミの夫となる人は将来、侯爵家を継ぐことになるのだね」
「はい。そうなりますわ」
おそらくエメリア・ミルズ男爵令嬢は勘違いされているのでしょうけれど。
セオドア・ウォーカー子爵令息は、未来の侯爵さまではありません。
婿に入ることで伯爵位を得て、その後、侯爵になるという道は、私と婚約破棄した時点で途絶えました。
セオドア・ウォーカー子爵令息は次男ですから、子爵位を継ぐこともありません。
ですが、ウォーカー商会は大きな商会で儲かってもいますから、安心しているのでしょう。
今となっては、私に関係のない事ですけれどね。
「未来の侯爵夫人だというのに、キミはサットン商会で働きたいのかい?」
「はい。サットン子爵さまがよろしければ、働きたいと思っております。祖父の方針で、ビアズリー伯爵家はアンズリー侯爵家からの援助を受けておりません。ビアズリー伯爵家の領地は狭く、これといった産業もございませんの。そのため、ビアズリー伯爵家の財政は厳しいのでございます。それに……」
「それに?」
「私は働くことで将来、領地を盛り立てるためのヒントを得たいと考えておりますの」
「野心的だね」
「ありがとうございます」
「ならば、サットン商会で働いてみたらいい」
「ありがとうございますっ」
こうして私は、サットン子爵の元で働くことになりました。
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