スイが郡山に来る日はあっと言う間に来た。



俺たちは連絡を取り合って駅前で待ち合わせをした。



俺は朝番のお仕事があったのでそれが終わり次第急いで向かった、他の二人もその時間に合わせて12時ぐらいに到着するようにみんなで予定を合わせていた。



「お待たせ! ごめんね遅くなっちゃって」



「大丈夫だよー私も今来たところだから!」



あきらとスイはお互いを褒め合うような会話をしていた。



この二人の仲の良さはまるで昔からの旧友、同性愛者じゃないか?と感じさせるくらいの仲の良さだ。



「お腹空いたし、じゃあ早速行こうか!」



とりあえず駅前のカフェに入って話をすることにした。


カフェにはお昼ご飯を食べている人が多くいた。



あきらが目を輝かせていた。



「うわ~~~~~~」



あきらが見たのはお酒だった。



「ぽしゃけ~」



今日1のテンション、まるで漫画のように目を輝かせていた。本当に興味があるものに対して人ってもんは、目がキラキラするものなのだな、アニメ、漫画の誇張はあながち誇張ではないことがこの時気が付いた。



「ヨーグルトのお酒、チョコレートのお酒、ピーチのお酒。何にしようかなー何にしようかなー。」



「好きなだけ飲んでいいぞ、ここは俺が奢ってやるからさ」


「えっ本当!?ありがとう!!!」


スイとあきらは両手を合わせて喜んでいた。


「せっかく、郡山に来ていただいて新幹線代も馬鹿にならないだろうし、ごちそうするよー」



その姿を見ているとなんだか少し嬉しくなってきてしまう自分がいた。


「なんかててさん、あきらに優しいよねー!」


スイが意地悪そうな顔で俺の顔を覗かせた。



「まぁ、一日早くあきらと飲んだからなー」と誤魔化した



「はぁー?ずるいよー、ほんと私が先にあきらに会う予定だったんだからねー」



スイはわかりやすく怒った顔をした。



「まぁ、しょうがないよ、たまたまだし、たまたま」



いやぁ、楽しかった。この時が絶頂に楽しい、まさかこんな自分が女性2人に囲まれてどっか旅行に行くなんて経験をするとは人生であるとは思ってなかった。なんなら、そういうやつどういう集まり?ってさえ毎回疑問に思ってたくらいだから、この瞬間の出来事は驚いている。




ただただ幸せだったのだ。2人が話しているのを見ているだけで心が温まった。


きっとこれは、この感情は恋とか愛とかじゃないと思うけど、それでも俺はこの時間が楽しくて仕方がなかった。


そして、ふと思った。


もしこれが、俺が女であったら邪な考えは無くて、ずっとこのままで居続けることができたのかもな。いや、何いってんだか。



でも、そんな事を考えると、何故かとても悲しくなった。


俺の心の中に何かが突っかかるような感覚に襲われた。それはよくわからない違和感だった。


そうこう考えているうちに、注文していたものが運ばれてきた。


「「「かんぱーい」」」


三人の声が重なった。「ぷはー!うんめぇー!」


ヨーグルトのお酒を一気に飲み干してあきらが言った。



「飛ばしすぎ、飛ばしすぎ」と俺は笑いながらいった。


スイの方を見ると、あきらよりもペースは遅いものの、結構飲んでいるようだ。


「ん?どうした?」


あきらが心配になって声をかけた。


「なんか、全然酔わない。今日結構いける日だー」


とスイは喜んでいた。



「まぁ、一杯目じゃ酔わんわな」


とあきらは笑いながら自慢気にそう答えた。



「時間もないしそろそろ別のとこ行こっか。」


俺はそう言ってアキラとスイと店を後にした。


「ねぇ、せっかくだし手繋ごうよ〜」

「いいよ!」

「うん……良いと思う……」

アキラはスイの手を握ってスイはアキラの手を握り返す。

そして俺はアキラと手を繋いでいた。


スイはアキラに腕を組みながら歩いた。


こうして見ると本当に恋人みたいに見える。

俺はなんだか嬉しくなってついニヤけてしまった。

「ん? どしたの?」

「いや、なんでもないよ」

「変なのー」


「どこ行こっか、ててさんがこの街よく知ってるんだからててさん案内して、なんか面白いところ」



「ん~、面白いところかー。ゲーセンとかどう?」



「「いいねー」」



「ねぇねぇ、アキラ一緒にプリクラ取ろう?」


とスイは目を輝かせながら言った。



「いいよー」


端から見れば仲良し姉妹のようにも見えなくもない、だが、スイとアキラが直接会ったのはこれが初めてで、チャットでも出会って一ヶ月の事だった。


俺たちは郡山で唯一のゲームセンターに着いた、ここは県内で一番大きいゲームセンターで、UFOキャッチャーやガンシューティングなどのアーケードゲームがある場所だ。


「あっ!あれやりたいっ!」


スイは指を指したのは、プリクラコーナーである。


「えっ!?あそこ行くのか…………」


「うん!!」


スイの顔はとても明るくて無邪気だった。


「よし行こう!」


俺らはプリクラコーナーに向かった。


そしてそのあとスイはアキラを引っ張りプリクラの中に入っていった。


「さすがに3人で入るのは狭いな笑」


「そうだねー笑」


「だってててさんでかいもん笑」


とスイはニコニコしながら答えた。


「ねぇねぇ2人ともポーズ決めようよ!!ピースしようぜ、ほらほらっ!!」


とスイはカメラの前に立ち笑顔で両手を広げている。


「はいチーズッ!!」


パシャリ、という音と共にフラッシュが焚かれた。


「次2人の番だよ〜!!」


とスイは言いながら自分の撮った写真を見ている。


「んじゃ撮るか〜」


と言って俺はスイの隣に立ち、アキラは反対側に立った。


「ハイッチーズッ!!!」


再びシャッター音が鳴り響いた。


「次はスイちゃんが真ん中来てよ、ほらもっとくっついて」


あきらは俺の左腕にしがみつくようにして抱きついてきた。


スイがそれを見ると駄目だよと、アキラと俺を離した。


「私がアキラとそれやるの」とスイはアキラの左腕に抱きついた。


それでも俺は嬉しかった。まさか人生で女の子2人、それもかわいい子たちと一緒にプリクラと取るなんて思っても見なかったのだから。これは一生の思い出だ。こんな日がずっと続けばいいのに。大事にしよう、俺はそう決めた。その後もいろんなものをした。クレーンゲームやシューティングゲーム、格闘ゲームなどたくさんやった。どれも楽しかった。そして俺は本当に楽しかったのだ。


楽しい時間はあっと言う間に過ぎていくもので気が付くと17時を回っていた。


そうしたらホテルの支配人から電話がなった。



従業員が病欠で人が足りないのでどうしても出てほしいとの事、やはり楽しい時間の代償として嫌なこともある。



「ごめん、仕事行かなくちゃならなくなった。」と俺は二人に頭を下げた。



「「ええー、行かないでー」」



「ごめん、明日も・・・仕事だった。」



「私明日帰っちゃうしなー」とスイも落ち込んでた。



「二人で楽しんでて」と俺は惜しみながらも二人に別れを告げた。



「でも、スイちゃんは俺んとこのホテル泊まってるから後でね。」とこの後の予定も教えてあげた。



「え!?そうなの!?」


あきらはびっくりしていた。


「そうそう、今日はここに泊まるの!だからまた遊ぼうね!」


「うん!わかった!絶対だよ!」とあきらは嬉しそうにしていた。


「ててさん、頑張って」とあきらは俺に微笑んだ。


「じゃあね、あきら!スイちゃん」



俺は名残惜しいけどゲームセンターを後にして、ホテルに戻って仕事をした。いつもは重々しかった仕事が楽しいことを久しぶりにしたためか、軽いように感じた。


仕事で空いた時間にスマホを除くとチャットに「ラブホ女子会」と書いてあってお風呂場でピースサインしている画像が添付されていた。



「なにこれ?」俺は尋ねた。



すぐに返信が帰ってきた。「めっっちゃ楽しいよ、アキラとラブホ女子会してるの」とスイがハートの付いた顔の絵文字といっしょに書かれていた。



その画像をよく見るとふわふわの足枷がスイちゃんの足とアキラの足に繋がられててニヤリとした。


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