あきら

「私はむしゃくしゃして、仕事でストレスが溜まっていたので、一人で飲むことにしたの。」


「バー行ったよね。そこで男にめっっちゃ話しかけられたの、でも私酔っ払っててめっちゃ覚えてないんだけど、トイレ行ってる時に、中に入られたかも。そこは、もうなんか居づらいからすぐ出たよね。」


「なんか色々歩いてて、ボーイの人に声かけられて、ホテル行こーなんていうから私もいい気分になっていいよーって答えちゃって、ちょっとコンビニ寄らせて欲しいっていってスイちゃんに電話したの」


「私今から、知らない男とホテルいくのー。ってスイちゃんに言ったら、「え、ダメだよ、何してるの!」って怒られちゃって、その状況が面白くて私も笑っちゃったよ。でも男の人に腕引っ張られてホテルに連れて行かれちゃった。」


「で、部屋についたんだけど、一緒にお風呂に入ったんだけど、すごいね、お風呂。ジャグジー付いてるじゃん、私ジャクジー初めてだったらかめっちゃ楽しかった。また入りたい。」


「んで、男の人がベットに連れて行かれて私にすぐ入れようとして、ちょっと入れられたらめっちゃ痛くて私が痛い痛いって言ったらすぐどっか逃げちゃった。そういやホテル前金制でなんか気分良くなっちゃって私が多めに払うっていってなんか知らないけどホテル代多めに払っちったなぁ」


「いや、何やってんのよ。」


俺はすかさずツッコミを入れた。


「じゃあ、処女は失ったってこと?」


「いや、入れられそうになっただけだから、まだ処女だよ」と訳の分からない解釈をいれていた。


「それで、私はホテルに一人になってスイちゃんに電話を掛け直したら、泣いちゃって。私も悪いことしたなと思って泣いちゃって、二人でずっと泣いてた。」


 「ホントだよ、初めては大事にしなきゃ」


この、女軽いな。俺はそう確信をついた。


「だから、もうスイちゃんに迷惑かけないよにホテル行かない。」


それは残念だ、俺もホテル行きたかったのに。


「まぁ、でもラブホテル巡りなんかもいいんじゃない?」と提案を入れてみた。


「なにそれ、楽しそう。確かに色んなラブホテル行ってみたい。」


「私、あれやってみたい、首を締められてみたい。」


「じゃあ、二人きりになれるところが良いね。」


「でも、そんなところあるのかな」


「ラブホテルなんかいいんじゃない?」


「でも、ラブホテルはすいちゃんと行かない約束してるし」


「言わなきゃバレないって、これは二人だけの秘密ね」


「俺も行ったことないし、興味があるんだ。一人で行くのは抵抗感あるしね、そういうとこじゃん。」


俺たちはこの時きっと背徳感に浸っていたんだと思う。


ホテルに入った。へぇ、ボタンで部屋を選ぶんだ。店員とも対面しないプライバシーの保護もあるんだ、対人が苦手な自分にはとてもありがたい仕様だった。自分のホテルもこうだったらいいのに、効率が良いのになぁ、と思った。


とりあえず、一番安い部屋を選んだ。


そしてホテルの部屋に付いてしまった。


人生で初めてのラブホテル、緊張がやばかった。これが映画とかドラマでみるラブホテルの姿か、とても綺麗ででっかいダブルベッドが生々しかった。


「じゃあ、さっそく始める?」とあきらに聞いてみたら


「汗かいたからお風呂だけ入らせて。」とあきらは風呂場に行った。


「覗かないでよ。」


「もちろん。」と返事をしたが確証はもてなかった。


隣で裸であきらがシャワーを浴びている。めちゃくちゃ妄想もしたし、そのシャワーの音だけで鼓動が止まらなかった。こういうときどうすればスマートになれるのか。って考えるのが男。ドラマで見た光景と一緒の感じになった。寝てればいいのか。とりあえずベットにあるつまみをいじってちょうどよい操作感とか丁度の良いBGM、照明の明るさとかは探してみた。手前のパンフレットを除いてみたら、ほう、出前も出来るんだね。ただ、今は深夜2時だから出前はやってないか。コスプレ1000円だって、コスプレ女の子にさせたいなぁ。そういう願望はあった。叶うとは到底思わないとも今は思えなかった。

女の子とラブホテルを行くことなんて一生無い、実現しないと思っていたのにこれがかなってしまったのだから。


「ふぅ・・・」とあきらはお風呂場から上がった、バスローブ一枚の濡れた髪の女の子。いい匂いもする。めちゃくちゃ興奮する。


「いちおう、俺もお風呂に入ってくる」万全の姿で挑みたかった。あとジーパンも重かったし、一番の理由は心の準備が整ってなかった。基本、臆病なもので。


お風呂場で、なりゆきでエッチにも誘いたいと思ったけど、この間に居なくなってるとかありそうだと思ったので早々に済ました。


「ふぅ・・・・居るー?」と冗談交じりで声を掛けてみたら


「ええ・・・もう上がったの?ちゃんと体洗った?」とあきらは当然のような反応をした。


「はやいよ、男の子だもの」と誤魔化した。


「では、さっそく良いかな?」と好奇心が上回って脳より早く口を動かせた。


「うん、ゆっくりおねがいします」


俺は恐る恐るあきらの元へ近づいていって、あきらの首元に両手で首を締めてみた。はぁ、これは普通の関係にはなれそうには無いな。


緊張した。だが、ラブホテルにまで来て行為を出来ないのかよ、と欲求は満足はしてなかったので不満をぶつけるように思いっきりしめた。初めての経験だし、興奮した。自分にはそういう素質があると思っていたものが確信を持てた。


「苦しい。ちょっとやめて・・・・・」

俺はあきらの首元から手を離した、「ごめん、苦しかった?」と俺はあきらに優しい言葉を投げかけた。


「気道がしめられないように締められると気持ちが良いんだよ。気道を締められれると苦しい。腕で挟んで後ろからしめてみて。」


と言われるがままに、後ろから思いっきりしめてみた、アキラと一番近い距離、あきらに触っている。髪のシャンプーのにおい。手に入らないものなのだから、今のうちにこの多幸感をいっぱい感じておこう。エンドルフィンが上がっていくのが目に見えて分かる。「ぐはぁ、苦しい・・・」あきらから死ぬ前の咳みたいな声が出たのでとっさに腕を離した。


「大丈夫?やりすぎた?」


「ううん、気持ちよかった。もっと続けてほしい」あきらはお願いをした。


「じゃあ、やるよ?」とまた同じ体勢に戻るとあきらはコクンと頷いた。


もう一度、しめた。か細い声で「もっと強くして。」と祈願されたので、俺は思いっきり強くした。「気持ちいい」と言ってあきらの体は脱力していった。


 俺は焦った。もしかして殺してしもうたのではないかと。思いっきり俺はあきらの肩を叩いた。「あきら、あきら大丈夫か?」返事はない


これはまずいと思った。殺してしまった。


「がはぁ、ゴホゴホ」とあきらは意識を取り戻した。「え、」とあきらは不思議そうにしていた。「大丈夫?強すぎた?」


「ああ、私今意識失ってたんだね。一瞬なんで、ててさんとラブホテルに居るのか記憶が飛んでた。めちゃくちゃ気持ちよかった。」


と言われて俺はスーーーーーッと脳に血がドバドバ出た。やばい。癖になる。

サイコパスの素質はあると思ったけど、やはり気持ちが良いものだ。

めちゃくちゃ愛おしくなって、殺したくなった。


どうやら、俺たちの関係は安定とは程遠いもの危険な関係になってしまった。地に足が付いていない。不安定な関係。だけど、それが逆に心地よかったのかもしれない。お互いに気を持たない気軽な関係が。きっと、やりやすいのであろう。



俺は首を絞める生きるか死ぬかのスリルに興奮を味わってしまった。このスリルがたまらなく良い、俺はすかさず「もう一回いいかな?」とあきらにお願いした。


「ちょっと休ませてくれないかな?」とあきらは休憩を求めた。


不本意ながらあきらの気持ちは尊重したかったし、嫌われたく無かったので「そうだね、少し休憩しようか。」と同意した。


「凄く頭がボーってする」


「とても気持ちがいい」


あきらの顔は満悦そうでトロンとしていた、喜んでもらえて良かった。


「ちょっと疲れたから寝たい。」とあきらは言った。


「いいよ、俺ソファーで寝るから、そのダブルベッド使って。」


「ててさん可愛そうだから、ベッドの空いてるところで寝ていいよ。」


「じゃあ、お言葉に甘えて・・・」俺はめちゃくちゃドキドキした。


女の子と二人でホテルで一緒なんて事なかった。人生であると思ってなかった。思ってたのとは違ったけど、まぁいい。今は良しと仕様。全てが新鮮で刺激的だった。外には静かな郡山。絶景とは言えないけど、これぞ都会って感じ。住んでいるとこは田舎だから、新鮮に感じた。


俺はあきらと朝を迎えた。


これが朝チュン、ってやつか。朝チュンまでは行かなかった、というより行けなかったとういう表現が正しいのだろう。


自分の度胸と状況の打破能力だはのうりょく、男気の無さに落胆した。少し前に進めたかも知れないという、確かめようのない未来を見つめた、だが、恋愛学としては、これが正しい、こうやってすぐに進むのではなくて、おあずけ、おあずけで燃えるという物らしい。

いや、これは恋愛なのか、恋愛ではない、俺はそう言い聞かせた。


「なんか、私たちってセフレみたいだね、まぁ、セフレって関係は嫌だけどね、」彼女は何か寂しそうな顔をした。


「ラブホ友達って事だね、まぁ、やってないからセフレでは無いね」


いやいや、もう片足突っ込んでるよ、ほぼほぼセフレじゃないか。まぁ相手は新潟に住んでるし、帰ってしまえば、そんなに会える距離じゃないから、都合がいい。いや、帰っては欲しくは無いけど、ヘルプの期間が終われば帰ってしまうよな、だから今のうちに思いっきり色んな事がしたいな。


いやいや、ここは抑えてあくまでもクールに。がっついて何度も失敗したから、あくまで遊びの様な関係で居ないとな。自分の好意がバレたら相手は離れていく、追いかけるんじゃない、追いかけられる方になれ、それがよくある恋愛の駆け引きって奴なんだ。追いかけた時点で駆け引きは終わってしまう。駆け引きなんてもんは面倒くさいが手に入ると思ってしまえば人というのは情熱が無くなってしまうものなんだ、だから俺はあきらが欲しくなってるのか、手に入りそうで手に入らないそういう煩わしい事態に陥っておちいって、いる。自分自身がそういう幻術に落ちて、この小娘に惑わされているのかも、いや事実惑わされている。惑わされているのだ、ああ、なんてみっともない、みっともなさ過ぎる。だが、こうなって仕舞えばどんなに可愛い子よりも目の前のあきらしか見えなくなっていった。


「ねえ、てて」


「ん?」


「帰ろっか」


「うん」


2人で居る時間はすぐに過ぎた。


ホテルを出ると日差しが眩しかった。


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