うぬ、おぼれ

tetero

近くに来たから

 いつもの薄汚れた街で俺は彼女を待っていた。


 もう3年ほど経ったから慣れた。慣れたよこの街に…最初は不安で…いや最初は楽しかったかな。後から人間を演じるのに疲れて街も汚れて見えていた。


 彼女はどうやらお仕事でこの街にヘルプで一週間ほど滞在するらしい。だから冗談で会おうって言ったら彼女も快くこころよ了承してくれた。


 ボイスチャットでの彼女は明るくて、ノリが良くて元気な女の子だった。


 淡い期待などしていない、いやしていた。


 でもお互いに顔を知らないし例え可愛くなくても飲んで楽しむだけだ。


 そう、友達として楽しむだけ…


 彼女は予定時刻でも来なかった。


 たまたま今日は俺の誕生日だ。

 まぁ、すっぽかされたとてガールズバーにでも行って祝って貰おう。


 我ながらに保険ばかり考える汚い野郎になってんなっと自分に苦笑いをした。


「いや、来ないのはそれはそれで悲しいわ悲しい悲しい傘地蔵さんだよ。なんだよそれ!」と脳内で自分にツッコミを入れた。


 彼女に連絡をこころみる。あれれ?使い方あってんだろうかこれ?と今検索エンジンで検索してみたら英語翻訳になっててTRYトライになってたからまぁ意味は合ってる。


「今どこに居るー?」とLINEしてみた

 。

 彼女「今そうだねー、東口って書いてある!タクシーがいっぱい止まってる場所!」と答える。


 東口、そういや俺は北口正面しか知らないからその辺良く知らないんだった。


「東口かーあれ?東口ってどこだっけ?俺もここんとこあんまり詳しくなくんだ笑」


 彼女「え、頼りにならないw、なんかタクシーがいっぱい停まってるとこだよ」


「わかった、とりあえず中に入って駅の通路歩いていて」と俺は彼女に指示をだした。


 それから既読がついて返事が来なくなった。


 不安になって電話を掛けてみた。


 出てくれた。


「今、どこらへん?」


「駅の階段上って通路歩いてるよー、駅の2階かも。」


「そか、わかった。ちょっと探してみる。」


 スマホを触っていて女性を探してみよう…間違えたら怖いけどそれっぽい女性を探してみた。


 ふとあたりを見渡してみると前から電話をしている知的そうな女性を見つけた。電話の主と一緒だ。


 もしかして、あきらさんですか?」と恐る恐る華奢な女性に尋ねてみる。


 彼女は眼鏡を掛けていて文学少女、もしくは少し色っぽい若い先生のような見た目をしていた。


「いえ、大丈夫です。」と変な奴に絡まれたと言わんばかりの声色で女性は俺から離れた。


「いや、大丈夫ってなんだよ、あきらでしょ?」と俺が少しおかしそうに笑みをこぼしもう一度尋ねてみた。間違いない、この声と性格はあきらだ。


 彼女は下を向いてた顔をこちらに見上げびっくりした顔で「あ、ててさんじゃん。ナンパかと思ったよ。」とこちらに笑みをこぼした。


「で、お姉さん。これからどこに行くんですか?」と冗談を言うと「やめてよ、ナンパ出来る玉じゃないでしょ?」と核心をついたようなツッコミを入れられた。


「なに、それひどい。言ってた通りのイケメンでしょ?」と得意げにみつめると


 あきらはチラッと見て「あ・・・うん」と反応に困っていた。


「なに、その微妙な反応は」と繰り返す軽快なツッコミはお馴染みのノリという奴だ。楽しくなってしまう。


 ちょっと辛気臭くなったので「さあ飲もうか!」と俺はあきらの事を元気よく景気付けた。


「飲もう、飲もう。」あきらも嬉しそうにテンションを取り戻した。


「あきらは何食べたい?」とあきらに選択権を委ねるゆだねる。「そんなに高くないところで飲みたい。」と答える。


「じゃあ飲み放題だね。」と気軽にたくさん飲めるところに誘う。


郡山こおりやまで飲み放題かー、っていっても俺もそんなに飲み歩かないから詳しくないんだよね。」と頭を擦りながら俺は使えないキャラになる。


「確かに、友達いなさそうだもんねー」と彼女は笑う。


「それってどういう意味だよ!」と笑いながらあきらに肩でツッコミを入れる。


 まぁ、実際3年間居た郡山は駅の近く以外は行ったこと無いので迷子にもなりたくないので駅近くで飲み放題を探してみる。笑笑わらわらがあった。あと、最悪なことに俺は明日仕事があったので少ししか飲めない状況だ。


「俺、笑笑わらわら行ったこと無いんだよね、」と彼女に言うと「笑笑わらわらかよ。めっちゃチェーン店だしめちゃくちゃ新潟で通ったわ。」と爆笑していた。


「まぁ、時間もないし笑笑わらわらでいいよね。」と俺が言うとあきらも「まぁ、飲めればどこでもいいや。」と快くこころよく了承してくれた。


「 「いらっしゃいませー‼︎」」店内に響き渡る、活気のいい店員さんたちだ。


2枚様おふたりさまですねー、ご案内しまーす。」と最高の接客が繰り出されるが俺は久しぶりのデートで胸がワクワクで店員さんの顔すら覚えられなかった。


 席に案內され色々注文してアルコール飲料が届いたところで「「かんぱーい。」」と二人で乾杯した。


 ボイスチャットで毎日酒飲んでただけあって彼女はいい飲みっぷりだった。


「うめー、あははは。」彼女はの呑む姿はとても嬉しそうだった。それを見ながら飲むレモンサワーは確かにいつもより美味しくて「美味しいね。」と微笑んだほほえんだがあまりにも幸せに感じて俺は少し涙が出そうになった。きっと彼女が居るといつもこんなに幸せなんだろうな、、、ってそう思った。


「どうしたの?」って彼女は心配そうに見つめる。「あ、ごめ、見惚れてみとれてたわ」と俺は誤魔化す。「あはは。なにそれ友達でしょ?」と彼女は勘づいた様にあくまで線引きした関係でしょ?と言わんばかりの言いぐさで冗談混じりでいう。


「冗談だよ、楽し過ぎて脳がバグっちゃって。」とまた誤魔化す。そう、上手くいかないのだから関係を壊さず友達のままでいい、今がずっとが楽しければいい。


「なにそれ、変態じゃんあはは。」とあきらは健気な笑顔を見せる。幸せだ。


「ねぇ、すいちゃんも呼ぼうよ。」とあきらはスマートフォンに手をかける。正直楽しかったけど緊張しちゃって沈黙の時間もあった。その穴埋め要因としても不本意ながら誰かの手が欲しかった。正直、女の子のとの会話にもなれてなかった自分も居て居心地わるかったのであろう。すいは東京に住んでいる女の子。あきらともとてもなかよしで、まるであきらと姉妹のような存在であった。東京に住んでいたので福島にはとてもすぐ行けるような距離ではなかったので、電話で飲み会の参加をしてもらった。


「私が先にあきらと会うつもりだったのにててさんずるい」と電話越しにすいは怒っていた。


「ごめんごめん、たまたまあきらが近くに来ていたからさ、いいきっかけだなーと思って、」


「私のあきら、奪わないでよね」とすいは俺に注意をした。


「大丈夫、二人共その気では無いから」と俺は笑ってすいの事を安心させた。


「本当かなー。」とすいはまだ疑っていた。


 確かにあきらは危なっかしい、酔ったら凄くノリが良くなるし、人懐っこくなる。まるでその気があるように…


 散々盛り上がった後俺たちは会計を済ませてカラオケに行った。


 女の子と2人でカラオケなんて初めてだ。


 カラオケルームでもしかすると…なんて男なら誰しもが妄想する。私も例外では無かった。いかんせん、明日の朝は仕事だ。そういうことがあっても、早めに切り上げなければいけない。いや、一線を超えてしまえば、今の関係は一気に崩れるだろう。会えなくなるのは嫌だ。ここは、グッと堪えよう。


 時刻は午前1時、仕事は6時からまあ、自宅には5時には着けばいいだろう。


 1時間で出るという約束をして俺たちはカラオケで二次会を開いた。


「「かんぱーい」」と2次会の合図、最高に幸せだった、仕事なんてクソくらえだと思った、邪魔とさえ思った、こんなに楽しい時間、この子と1日過ごしたい。そう思った。


 あきらはアニメソングを歌ったり、レッドブル割のお酒のレッドブルを酔った勢いで思いっきり溢したりして思いっきり笑っていた、楽しかった。


 すぐに1時間なんて過ぎた2時か、ちょっとぐらい寝るにはちょうど良いかと思ったがあきらは「ててさん、帰らないでー」と言って来たので俺は誘惑に負けて「じゃあもう1時間だけ」と延長してしまった。あきらは「やったー」ともの凄い嬉しそうな顔をした。同時にもう寝られないな、と俺は仕事前に寝るのを諦めた。


 だが、その1時間もあっという間に過ぎた「ててさん、帰らないで」と甘えてきたが、「流石にもう」と断りを入れた。「休んじゃいなよ」とあきらは提案してきたが「それは出来ない、また遊ぼう」と頑なに拒んだ。あきらは「絶対だよ」と約束を交わそうとして俺は「もちろん」と快く了承した。


 カラオケルームを出て会計を済ませて帰ろうとしたがあきらは酔っ払いだし、千鳥足になっていたし、危なっかしいので、タクシーを呼ぶことにした。


 午前3時、どうやらタクシー会社もやっているところが少なく、運良く連絡が取れたところも忙しくて30分待ちらしい。あきらは少しだけ一緒に歩きたいと行って駅の東口に歩くことにした。もちろんタクシーもそこに来る様に呼んだ。


 あきらは「歩けない、」言い放ち俺の左腕にしがみ付いた。胸が当たっていて理性が吹っ飛びそうだった。触ってもいいかな、いかんいかんこういう記憶こそ酔っ払っている時でもあるものなんだと、自分の理性をコントロールするのに必死だった。左腕はめちゃくちゃあったかかった。


「東口に着くまでこうしてていいかな…?」とあきらはいうと俺は平然を装い「まぁ、いいけど」とちょっとカッコつけた。


 あきらは俺の肩に全身を預けた、俺の肩に向けた頭はリンスの良い匂いがした。最高の気分だった。


 東口のタクシー乗り場に着いた、タクシーはまだ到着していない。


 このまま待っていると、午前4時30分か、今日は寝れないな、と悟った。


「ててさん、寒い」とあきらは俺の左腕を抱き締める。左腕はあきらのぬくもりでぐちゃぐちゃだ。



 「じゃあ、そのままでいなよ」と俺はかっこつけた。内心心ないしんこころはバクバクだった。この時間が途方もなく長く続けばいいと思った。


 そういう願いってのは大抵かなわないもので、タクシーはやってきた。


 「お電話くれた方ですか?」


「はい、それじゃこの子お願いします。」


「ててさん、もっと飲もうよ~。」


「迷惑かかるからさっさとお乗り。大丈夫?場所分かるかい?」


 彼女はコクンと頷いた。


「じゃあ、この子をお願いします。」と俺は理性を抑えつつ紳士的にお見送りをした。


「ててさん、ばいばーい」と親しげに彼女は後部座席の後ろで手を振っていた。


 この日は寝ずに着替えてお仕事をした。


 眠くて大変だったけど、なんだかいつも以上に頑張れる気がした。


 楽しかったし、嫌なことがあっても軽くかわせていた。


 また、あきらに会える。それだけが俺の生きがいになっていた。


 たとえ、怒られたって上の空だった。それが良いのか悪いのかはわからない。


 ただ、とてつもなくしんどい毎日に選択肢、逃げ道が増えたと思えば、水が流れるように自問自答自己嫌悪の夜を過ごさなくてすむ、そう思えば、それはとてもとても、絶頂期並の幸せだった。


 あきら、あきらに会いたい。それだけが、生きがいだった。


 そして、都合がついて、またあきらに会える日が来た。


 だが、いつもと様子が違った。


 あきらとは、バカっぽい笑顔でまた再開出来た。


「ててさーん。また、会えたー、よかったー会いたかったー。」


 初日とは違い、最初から心を開いている。自分と会って嬉しそうにする女の子は久しぶりで、会うだけ笑顔になってくれる人の前なら、ずっと一緒に居たい、心地よい。


「また、笑笑でいいかな?」であきらは「えー、」と不満げだったが、「まぁ、飲めるなら何処でもいいかー」とまた、笑いながら了承した。


 笑笑に着きレモンサワーと、ビールが届き、いざうたげだー「カンパーイ」とはじまりの合図をすると、開幕ひと言、あきらは衝撃的な発言をした。それを聴いたスイは


「え、やばくないそれ?」と仲良しのあきらにそのヤバさについて説教したらしい。


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