「選挙に行け!」では動かない!? 低すぎる投票率を上げる奇策

エテルナ(旧おむすびころりん丸)

「選挙に行け!」では動かない!? 低すぎる投票率を上げる奇策

前回、投票率が低い要因は若者のせいではないことについての記事を書きました。


およそ25年前から現在にかけて、20代の投票割合は横ばいにも関わらず、30代~70代の投票割合が減少しています。

つまり、いつの時代も一定層の若者が投票に関心を示すが、その後に政治に興味を抱く機会に恵まれず、今の30~70代は25年前の30~70代より投票しなくなっているということです。


H(平成)8年とR(令和)3年の衆議院選投票推移

H8年30代:57.4% R3年30代:47.1% 下がってます

H8年40代:65.4% R3年40代:55.5% 下がってます

H8年50代:70.6% R3年50代:62.9% 下がってます

H8年60代:77.2% R3年60代:71.4% 下がってます

H8年70代:66.8% R3年70代:61.9% 下がってます


【H8年20代:36.4% R3年20代:36.5% 変化なし】


若者の政治関心の初動は変わらず、歳を経るごとの中高年の増加率が減っていることが問題だと分かります。


では果たして、投票率減退の要因はなんでしょうか?


前回はその要因として、昨今の生活スタイルを問題に挙げました。

テレビや新聞などのオールドメディアは、広く薄く政治についての情報を、生活の中に否が応でも入ってきます。

ゆえに古いメディアが盛んな時代には、政治に関心を示すようになるきっかけ、その確率の試行回数が多かったのです。


しかし昨今はネット情報化により狭く深く、興味のある話題だけを見るような生活スタイルに変貌しました。そこにはSNSなどに見るアルゴリズムが要因の一つとして挙げられ、興味のない事柄は自動的に排除される仕組みとなってます。

テレビや新聞にはアルゴリズムがない為に、情報の中には関心のないことも含まれましたが、ネットは個人に合わせ取捨選択してしまいます。


ゆえに「選挙に行こう」と、SNSで声高に叫んだところで、興味の無い人の下には届きません。アルゴリズムに弾かれてしまうのです。

興味のある人の下にはより一層情報が集まる為に、彼ら界隈では政治への関心がさも常識のように思えてしまいますが、それは大きな誤解であり、隣の人のSNSではあなたの知らない情報が、その人たちの界隈の常識として流れています。


政治がまったく目に入らなければ、「選挙に行こうかな?」と思わせる確率の試行回数が著しく減少し、30代~70代などの中高年になっても選挙に行かない、興味を抱かない人が増え、H8年当時の30代~70代の人より低い投票率となってしまった。

そしてくどいようですが――20代の割合は25年前と変わってません。


では、どうすれば投票率は回復するのでしょう?


一般的な回答では――

・投票所の増設

・不在者投票の簡素化

・インターネット投票の開始


などが挙げられます。これらは確かに対策として必要です。そうした方が、投票率が増えることに間違いはありません。

しかしあくまで――


【既に多少なり政治に関心がある人に対してです!】


そもそも政治に興味が無い人は、仕組みを変えようが興味がありません。

興味がない以上は情報として流れてこず、政治に関わりを持てないループに嵌まります。


例えば車の購入台数が減っている件について。

これを解決するには、単純に車両の値段を安くするとか、購入手続きを円滑化するとかが挙げられますが、それは少なからず車を欲しいと思っている人に対して効果があり、まるで車を欲しいと思わない人にはどうしたって買ってもらえません。

安くなっただとか、手続きが簡素化したなどの新しい情報も入ってきません。


車ならそれでも良いでしょうが、しかし政治は違います。

個人だけの問題ではない以上、どうにかして選挙に行く意欲を持たせなければなりません。


それにはそもそも情報に触れさせ、政治に関心を持たせる必要があります。

その内容は「政治に興味を持とう」とか「選挙に行こう」とか、「1票の重み」とか、「逆に選挙に行くなと煽りをかける」とか――などでは、先程も申したようにアルゴリズムに弾かれて、選挙に行かない人に言葉が届きません。


「何度も繰り返し言ってるのに、なんで選挙に行かないんだ!」

→そもそも一つも言葉が届いてない


そんな一方通行の愛のような形になってしまいます。

なので、これを打破する例を挙げてみると――


・Vチューバーのように、今どきのアバターを使った選挙活動を行う

・政治や選挙を題材にしたアニメ・ドラマ制作を放送する


はい! かなり滅茶苦茶なことを言ってるのは分かってます。

しかし上記の例は分かり易い例えであり、これらに含まれる根本は、興味の無い人が政治に触れる機会を作ることです。

仮に上記施策を実施した場合、政治・選挙というワードが、アニメ・芸能と結びつきます。となれば、普段はアニメや芸能の情報だけが選ばれるアルゴリズムの中に、政治関連のアルゴリズムが強制的に加わるということです。

Vチューバー、アバター、キャラクターで検索すれば、アバター化した議員も関連情報として出てきやすくなります。

芸能やアニメで検索すれば、政治ドラマや選挙アニメといったワードも引っ掛かり、関連して政治の話題も上がってきます。


別に傑作のドラマやアニメを作らなくたっていいんです。

それらを作るだけで、政治と他コンテンツの検索ワードの橋渡しとなり、アルゴリズムの排除をすり抜けることができます。


ゆえにマイナンバーカード自体が良いかどうかは別として、スパイファミリーをマイナンバーに関連させたのは興味深い事柄です。

スパイファミリーだから良いという話ではありません。普段はアニメのアルゴリズムにしか引っ掛からない人たちに、マイナンバーカードの存在が紐づいたということが大切です。

まったく興味の無かった、目にすることすらなかった人たちへ情報に触れる機会を創出したのです。


つまりこれらの方法は、筆者が挙げたアニメやキャラクターでなくても構いません。

ゲームにスポーツに、音楽に芸術に飲食に、大事な点は政治や選挙を何か別のコンテンツと紐づけて、偏った個人のアルゴリズムを解除することにあります。


交友関係や仕事関係において、政治は公で語らない方が良かったりします。レストランではマナー違反のところもあるでしょう。

あまりに何もかもを政治に関連付けるのは、筆者だって気が引けますが、しかし時代の流れを見るに、ここまで情報が偏ってしまうのなら、昔ながらのやり方を保持するのは現実的ではありません。

古典的な方法は通用せず、今の時代とテクノロジーに合わせ変革をしなければ、投票率の低迷は止めることはできないでしょう。


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