第23話 フラッシュバックする過去の記憶
――こいつは。
忘れもしないあいつだった。
ある日を境として、突然、俺に絡んできては毎日のように暴力を振るい、かつあげしてきたあのチンピラ野郎だった。
五年の歳月が過ぎてるから多少人相は変わっていたが、間違いない。
無精髭を生やしてやさぐれ感が増しているこいつは、問題児の一人、リュウだった。
「おい、てめぇ。さっきなんつった? あぁ!? 誰が三下だてめぇ!」
「うひゃひゃ! おい、こいつ、もしかしてちびってんじゃねぇのか? 獲物取られたからって、泣いて逃げんのかよっ。だっせっ」
「しかもこいつ、変なカッコした女どもに守られてるとか、どっかの小便小僧かよ!」
馬鹿丸出しで顔を醜く歪めながら終始、俺を取り囲んで馬鹿笑いしたり睨み付けてきたりするド阿呆ども。
だが、これがこいつらのやり口だと知っている俺は、前世同様、特に何も抵抗しなかった。
前世でも別に、こいつらのことが恐ろしくて手も足も出なかったわけではない。ただ単に、喧嘩が弱くてやり返す勇気が出なかったから相手にしなかっただけだ。
だから、今も別に恐怖とかそういったものは一切ない。ただ鬱陶しいだけだった。
だが、そんな俺の態度が気に入らなかったのか、それとも、こいつらの無礼な態度が我慢の限界を超えたのか、アマリアたちがぷっつんする。
「死になさい」
ただ一言、厳かにそう厳命したクリスティーナの全身からすべてを凍らせる凍てつく冷気が噴出され始めていた。
――まずい!
こんなところで正体がバレるわけにはいかない。何しろ、目の前にいるのは正真正銘のクズだったからだ。
この場でこいつらを抹殺してしまえば公になることはないだろうが、それだけは何としても避けたい。
いくらラスボスに転生したからと言って、人殺しをするわけにはいかないからだ。
「おい、クリス! そこまでだ! 魔法発動したら、二度と口を利かんぞ!」
ギロリと睨み付けて怒鳴りつけると、瞬間的に彼女は目をうるうるさせて、シュンとなってしまった。
これで問題は解決したと、そう思ったのだが。
「お、おい! そういやちょっと前に、どっかの馬鹿がギルドで騒動起こしてなかったか?」
「そういや、フィガロがボコボコにやられてたのがあったな」
茶髪と刈り上げが互いに顔を見合わせ、狼狽える。
「――そうか。そういうことか」
その後を継ぐように金髪がいい、そして大笑いし始めた。
「あはははは! こいつはいいや! 傑作だぜっ。ひょっとしてあれかっ? お前らあの最低冒険者一味かよっ」
「まじかっ」
「うは! だっせぇ!」
チンピラトリオは腹を抱えて笑い出す。そうして、ひとしきり笑ったあと、金髪野郎が馴れ馴れしく俺の肩に身体を預けるように腕を回してきた。
「つーわけでよ、兄ちゃん。一つものは相談なんだがよ」
「あ?」
「俺たち最近ご無沙汰なんでさ、わりぃが、そっちのねぇちゃんたち、俺たちがもらってってやるからさ――」
野郎はそこまで言うと、いきなり俺の腹に拳を埋め込んできた――
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