第24話 誓いのギアス
思いっ切り、腹を殴られた俺。
その衝撃にやられ、げはっ――となったかと思ったのだが、なんだろう。まるっきり痛くないのだが?
もちろん鎧着てたから当然と言えば当然だが、多少なりともダメージ喰らうと思っていたのだが――
もしかしてあれか?
これって、じゃれ合いか?
そんなことを考えていたら、当然のように、女どもがぶち切れた。
「……ねぇ……どちらか選ばせてあげますわ。全身を切り刻まれるのと、氷漬けにされるの、どちらがお好みかしら?」
虚ろな目をして薄ら笑っている水色のお姉さんがいたかと思えば、
「それでは気が済まないでしょう? やっぱり、全身ひんむいて、火あぶりにして、その姿を実況配信とやらで流すのはどうかしらぁ? うっふふ」
「あんたたち馬鹿じゃないのっ? こんな奴ら、モンスターの巣窟に放り込んで喰わせちゃえばいいのよっ」
エロ女とツンデレ幼女がとんでもないことを言い出した。
ていうか、お前の方が馬鹿だよ、赤髪女め。
「うけけ。なんか知らんが、随分威勢のいいねぇちゃんたちだな! これならフィガロの野郎がボコられるのも仕方ねぇなぁ」
「だなぁ。だけど、暴れんのはベッドの上だけにしようぜ」
茶髪と刈り上げ――カツとマサが「うけらけら」と笑う。どうやらこいつら、アマリアたちの実力を知っても、まるっきり動じてないらしいな。
自分たちがAランク冒険者だからと舐めているのか?
それとも、あの女どもの実力を見誤っているだけか?
だが、どうやら金髪の方はそこまでアホではなかったらしい。
俺から離れると、欧米人みたいに両手を広げて肩をすくめた。
「まぁいい。ならこうしようぜ、兄ちゃん。このダンジョンの最深部二十層にはコロシアムがある。そこでデュエルして、勝った方が相手の言うことを一つ聞くっていうのはどうだ?」
「あ? デュエルだと? はっ! なぜこの俺がそのような茶番などせねばならんのだ」
「おやぁ? やっぱりオールFには荷が重いってことかなぁ? そうだよなぁ。お前みたいな弱っちぃ奴が俺たちみたいなAランク冒険者には叶いっこないもんなぁ」
「まぁ、当然だわな。なんせFだしよっ。女のお守りなしじゃ何もできねぇ腰抜けが」
「つーか、そんな僕しゃんは、帰ってママの尻でも追っかけてなしゃいねぇ」
「「「ウキャキャキャ」」」
そうして猿みたいに馬鹿笑いを上げるクソども。
本当にどうしようもない奴らだった。こんな世界になったのに、まるっきり変わらない。
ていうか、以前よりも酷くなってるな。
やはり、無法者には無法世界が似合っているということか。
こういうのを水を得た魚というのか?
俺は思いっきり溜息を吐いた。
これ以上こんな奴らに付き合ってられるか。
そう思って背を向け歩き出したのだが――
「いいでしょう! その挑戦、お受けいたしました」
「あ?」
なぜか勝手に決闘を受けてしまう馬鹿なクリスティーナ。
「おしっ。今、受けるって言ったな!?」
「えぇ受けますとも。我らがご主人様があなた方のような下賎な輩などに負けるはずありませんからね。丁度いい機会です。あなた方が働いた無礼の代償を、デュエルとやらでたっぷりと払っていただきましょうか」
でかい胸を反らせて自信満々に言ってくれちゃってるが――
おいおいおい!
冗談ではないぞ!?
こんな奴ら、今の俺なら多分一ひねりだろうが、そんなもの、受けるメリットなんか何もない。
しかし――
「だったらこれに誓え! 誓いのギアスへ」
金髪野郎はどこかから腕輪のようなものを取り出すと、一つは自分の腕に、もう一つはクリスティーナに嵌めてしまった。
そして、
「我ら誓いのギアスの元! 勝敗の結に従い、すべてを受け入れる!」
「我ら誓いのギアスの元、勝敗の結果すべてを受け入れましょう」
二人がそう言ったとき、その場が煌々と光り輝いた。
――こうして、意味もわからずかつての因縁の相手と決闘する羽目に陥ってしまった。
しかも、ギアスという魔道具を嵌められたのはクリスティーナ。決して俺ではない。
「これ、どういうこと?」
状況について行けず、ぼそっと呟く俺。
しかもこいつら、
「おい、てめぇら! 怖じ気づいて逃げんじゃねぇぞ? 今のは全部、実況配信で流させてもらってっからなぁ!」
「は?」
俺はそのとき初めて気が付いた。茶髪野郎の頭に付いていたカメラが点滅していたことを。
――これ、やばくね?
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