第22話 横殴り




「おい、お前ら。俺の許しが出るまでは絶対に手を出すな」

「え? なんでよっ」

「俺は自分の実力を試したいのだ。あんなオールFとか、断じて認めん! 俺には異能力が備わってるんだぞ!?」

「ん~。そんなこと言われてもねぇ――あぁ、そうだ。宿に戻ったあと、私を抱いてくれるなら条件飲んでもいいかなぁ?」


 アマリアとユメルがなんだか酷く、面倒くさい反応を返してきた。

 俺はしっしっと追っ払う。


「さぁ。さっきはおかしなことになってしまったが、今度こそ、ちゃんと俺を楽しませてくれよ?」


 一人ニヤッと笑って、金ぴか野郎へと突っ込もうとしたまさにそんなときだった。


「おいっ、見ろよっ! なんか変なの湧いてるぞ!?」

「うひょぉ~~! あれって、ギルドガイドにも載ってねぇ、未登録レアモブじゃね!?」

「マジかよっ。やり~~♪」


 そんな叫びと共に、金ぴか骸骨の向こう側から現れた三人組の冒険者。

 そいつらが、俺が襲いかかるよりも前に、レアモブへと突っ込んで行った。


「なっ……! ちょっと、アレ、マナー違反なんじゃないの!?」


 たまらずアマリアが絶叫する。

 確か冒険者ギルドで冒険者の心得とか聞かされたな。ノーマル、レア問わず、最初に見つけた人間に討伐する権利が与えられるのだと。


 しかも、この場合、あの骸骨を出現させたのは俺たちだ。

 どういうPOP条件があったのか知らんが、雑魚を狩ったら出て来たわけだから当然、俺たちに戦う権利があったのだ。


 しかし、問答無用で割り込んできて勝手に攻撃してしまった。その上――


「あ~~~!」


 どうやら大した強さではなかったらしく、あっという間に消滅してしまった。


「うひょ~~~! これ、メッチャレアなアイテムじゃん! ギルドに売りつけたら高く売れんじゃね!?」

「いやいや。ギルドなんかにうっパラったら二束三文で買いたたかれちまうわ。こういうのはクラフト系素材欲しがってる連中に高値でふっかけるのがいいんだよ」

「てか、おい見ろよ! この武器、超レアもんじゃね!?」


 前方の三人組はレアモブが落としたアイテムを物色しては歓喜の声を上げまくっていた。

 いかにも頭が悪そうなチンピラ然とした反応。

 さも、横取りされた俺たちを嘲笑うかのような言動。

 当然、神である俺はぶち切れた――いや、それ以上にやばい奴らが理性を失っていた。


「ちょっと、あんたら!」


 俺の周囲にいた女の内、特攻隊長としてアマリアがドカドカと歩み寄って行った。


「あぁ~~? なんだ、てめぇ?」


「なんだじゃないわよっ。さっきの骸骨野郎はバルトの獲物だったんだからねっ。それなのに横取りしてんじゃないわよっ」

「そうですよぉ? あなたたち、こんなことが許されると思ってるのかしらぁ?」

「ふふふふふ……。ご主人様を不快にさせたこと、死を持って償っていただきますわ」


 赤、紫、水色の順番でくそったれな冒険者どもにメンチを切った。

 だが、奴らはそれに臆することなどなかった。


「はっ。何を言い出すかと思えば。変な言いがかりは余所でやンな!」

「だなっ。もし、たとえそれが事実だったからって、どうだってんだよ。横取りだぁ? はっ。ああいうのは早いもん勝ちなんだよっ。早いもん勝ち!」

「つーか、もしかして、僕しゃんたちと遊びたいんでしゅかぁ~?」


「「「うひゃひゃひゃひゃっ!」」」


 三人は言いたい放題言ってから、腹を抱えて笑い出す。


「ちっ」


 俺は色んな意味で胸くそ悪くなり、女どもの背後へ立つと、


「おい、貴様ら。そんな三下の相手などいつまでしている! さっさと先へ進むぞ!」


 吐き捨てるように言い、馬鹿騒ぎしていた三人組の横を通り過ぎて奥へと進もうとしたのだが、


「おい、てめぇ、ちょっと待てや」

「あぁ?」


 突然、後ろから肩を掴まれ動きを止められた俺は、面倒くささを隠そうともせずに振り返る。

 そして、リーダー格と思しき金髪野郎と目が合い――瞬間、前世の記憶を鮮明に思い出した。



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