第20話 因縁の相手
奴らのパーティー名は『竜の顎門』。
金髪剣士のリュウをリーダーとした三人組で、茶髪ナイトのカツ、刈り上げヒーラーのマサという組み合わせらしく、冒険者ランクもAらしい。
しかし、冒険者ランクこそ高かったが、評判の方は最低ランクだった。
混沌とした世界になったのをいいことにやりたい放題やってるらしいのだ。
以前までにあった法律とかは既に消滅しているから、汚い手を使って他の冒険者やその辺の街の人間から、堂々と
正真正銘のクズ野郎どもだった。
しかも、先程のように周りの人間に難癖付けたり平気で迷惑行為に及ぶのは日常茶飯事。
奴らはこの界隈ではかなり腕の立つ冒険者だから誰も刃向かえないということもあるが、とにかく、手当たり次第にカモになりそうな連中を見つけては絡んで行き、罠にかける。
そして、女を奪ったり金目のものを奪ったりして、そのときの映像をネット上にも配信するらしい。酷いときだと、リベンジポルノまがいのこともやるそうだ。
その話を青髪の美人騎士から聞いて、俺は異様に既視感を覚えた。酷く懐かしくて思い出したくもないようなクズどもの記憶が蘇ってくる。
前世の俺をボコボコにしやがったあの悪ガキども。
「そう言えば――」
転生して前世のことなどすべてかなぐり捨てたから、いまいち記憶に残っていないが、先程の三人組、どこかあのクソどもに似ていた気がするな。
俺が死んでから五年経っているし、こんな世界になったから見た目が変わっていたとしてもおかしくはない。
「まさかな……」
「どうかされましたか?」
考え込むように呟くと、クリスティーナがそう声をかけて来た。
「いや、なんでもない」
俺はそう答え、綺麗なお姉さんに礼を言ってから、お供三人を連れて下の階へと下りて行った。
第二層は先程までいた階とはまるで様相が異なっていた。
ダンジョン内の通路も人が三人一緒に通れればいいほどの狭さになっているから、基本、戻るパーティーと潜るパーティーが激突しないように、一列になって歩くことが決まりとなっているらしい。
明かりの方は天井に魔導灯が設置されていたから問題ないが、とにかく、歩きにくい。
「このダンジョンは全部で二十層でしたか?」
「ギルドからの情報によればそうらしいな。だが、あくまでもそれは探索済みエリアの範囲内でだ。一応、ダンジョン内すべてをくまなく捜索し尽くしているらしいから、もうこれ以上、探索する場所はないらしいが、まだ、大ボスと呼べるようなやばい敵が見つかっていないらしいからな」
「先程感じた常軌を逸した気配もありますし、隠し通路があるのかもしれませんね」
「だな。だからこそ、大本命を探し出そうとして皆、躍起になっているわけだ」
そうやって考えると、ますますもって、この世界がゲーム世界みたいになってしまったと実感できる。
なんだか非常にわくわくしてきたぞ!
早くモンスターとやらと遭遇してみたいぞ!
そんなことを考えていたのが悪かったのかもしれない。
順風満帆。
マップに従って十層ほどまで潜ってきたが、蟻の子一匹存在していなかった。
俺たちは確かに、マップに記された赤い点に向かって歩いて来たはずなのに、到着したときには既にもぬけの殻。どうやら他の冒険者に先を越されてしまったようだ。
なんか、非常にがっかりだ!
ダンジョンというから化け物がうじゃうじゃいて、金も稼ぎ放題かと思っていたのに、実際にはモンスターよりも冒険者の数が多すぎて、雑魚モブが湧くまで湧き待ちしないといけないという。まったくもって意味がわからん状態だった。
情報によれば、モンスターは倒されると素材やアイテム、魔石だけをその場に落として、跡形もなく消え去ってしまうらしいのだ。
で、しばらくののち、地面や壁から湧き出てくるという謎仕様。
中には同じ場所で何十匹も倒していると、極まれにレアモブが湧くこともあるのだとか。
そういった個体は、通常個体よりもいいアイテムをドロップするらしく、それを狙った一攫千金野郎どもも数多く存在しているらしい。
「ちっ。本当に忌々しい奴らだ。ライバル冒険者という輩は」
さすがにイライラが抑えきれなくなって、思わずぼそっと呟くと、すかさずユメルが反応する。
「でしたらマスター? いっそのこと、やっちゃいますか?」
とかなんとか目をキラキラさせながら、舌なめずりして周囲の冒険者を品定めする。
「おい。ふざけるな。やめろ。お前らが暴れたら、一発で身バレするじゃないか」
『あいつらラスボス連中だぁ』
とかなんとか言われて襲われたら目も当てられない。
嫌だぞ、俺は。そんな奴らと面倒な死闘を繰り広げるのは。
俺は今生では前世でできなかったハッピースローライフを満喫するのだ。
まぁ、神様ライフとも言うがな。
そんなことを考えながら、俺たちは更に奥へと進んで行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます