第18話 いざダンジョン内へ
「ふむ。どっからどう見てもダンジョンだな」
意気揚々と中へと入った俺たち四人。
渋谷ダンジョンは地下迷宮とのことで、岩山に開いた穴から下へ下へと潜って行く形となっていた。
入口付近は綺麗に整備されているようだったから、コンクリートで階段が作られていたが、しばらく行くと土や石ころに変わって行った。
広さ的には大人が横に五、六人は並んで歩けるかといったくらいの、かなりゆったりとした洞窟で天井も三メートルほどはあった。
そんなだから、どっかの観光名所みたいな感じで大勢の冒険者がそこら中を練り歩いていた。
ホント、まさしく観光スポットだ。何ちゃら風穴とか鍾乳洞とかみたいのな。
そんなだから、まるっきりダンジョン感がない。
もっとこー、緊張感漂う場所だと思っていたのだが、これでは探索気分も味わえん。
つーか、本当にここ、Bランクダンジョンなのか?
凶悪なモブが出てくるのか?
そんな懸念すら湧いてくるほどに、俺たちの前後を歩く大勢のパーティーが賑やかムードで歩いていた。
「なんだか拍子抜けですね。もっと血湧き肉躍る場所かと思っていましたが」
俺の背後を守るようにして歩いていたクリスティーナがぼそっと呟いた。
「そうだな。まったくの同意見だ」
――だがな、クリスよ。お前は何を期待していたのだ!? 血湧き肉躍るとか、お前は大暴れするためにここへ来たのか!?
ホント、このヤンデレ女は何を考えているのかわからん。俺はただ、ダンジョン探索に来ただけなのだがな?
無論、敵が出れば、自分の実力を試す絶好の機会だから、逃げるつもりはないけどな。
「だけど、なんていうか、気配自体は感じるのよねぇ」
俺の右隣で今しも腕にしがみついてぶ~らぶ~らして来そうな雰囲気のアマリアが、周囲をキョロキョロしていた。
「気配か。俺にはよくわからんが、やはり、お前たちはそういうのには敏感なのか?」
「ん~そうねぇ。人間や獣人がいっぱいいるから雑念ていうか、そういう濁ったオーラがそこら中にあるからわかりづらいんだけど、でも、確かに感じるわ。モンスターには独特のオーラというか魔力が宿っているからね」
「魔力か」
俺の呟きに、左隣のユメルが反応する。
「魔の因子、みたいな感じかなぁ? モンスターには魔石が体内に宿ってるしねぇ。その魔石から出てるんだと思うのぉ」
どこか間延びして答える彼女のあとをクリスティーナが継ぐ。
「それに、ご主人様。魔石はモンスターの強さランクによっても強弱が違いますから、より強いモンスターは体内に宿す魔石の質や大きさも桁違いだと言われています。ですので、魔の因子の感じ方も強くなるのです」
「なるほど。じゃぁ、このダンジョンにはそういった強い因子が数多く存在するのか?」
「かもしれないですね。ですが、私が感じる限り、超特大の因子は一つだけですね」
「――は?」
――今こいつ、なんて言った? 超特大とか言わなかったか? それってまさか、ダンジョンのボスって奴じゃないだろうな?
そう言えば、ギルドで受付嬢が話していたな。ダンジョン内には何体ものボス級モンスターが存在しているのだと。
既に渋谷は何十何百回にわたって大勢の日本人パーティーによって探索し尽くされてしまっているから、めぼしいボスはほとんど残っていないとか言っていた。
いたとしても、最下層にいる正真正銘の大ボスだけだとか。
ただ、残念ながら、今のところその存在は報告に上がっておらず、配布されているマップにも記されていないのだそうだ。
なので、今現在、このダンジョンを探索している冒険者たちの最大目標はそのダンジョンラスボスを探し出すことにあるらしい。
何しろ、最初に見つけた奴にはギルドから報奨が出るらしいからな。
当然、倒した場合にも、大ボス攻略報酬&未踏域攻略報酬が出るそうだ。
それがとてつもなく豪華らしいから、高ランク冒険者たちは皆、証拠映像を撮るために実況配信しながら血眼になって探しているのだそうだ。
例のフィガロも聞くところによると、かなりの有名人だったらしく何度もダンジョンに入っては実況映像を流していたそうだ。
まぁ、ああいう性格ゆえ、暴言系配信者として一部の者たちから絶大な人気を博していたらしいが。
あとはユーリとかっていう女もか。
彼女も相当な人気配信者らしく、しかもこの渋谷ダンジョンを中心に活動しているパーティーの中では数少ないSランク冒険者たちみたいだからな。
真っ先にボスを倒すのはあいつなのではないかと、噂されているぐらいだ。
まぁ、そんなわけで、ともかくだ。
このダンジョンにはそういった危険なボスがまだ残っていて、野次馬根性丸出しの連中がうじゃうじゃいるということだ。
「――おや?」
俺たち四人はとりあえず、ダンジョン入ってひたすらまっすぐ下りて行った先にある円形ホール状の場所を目指していたのだが、入ってすぐ、いきなり声をかけられた。
「あなた方は例の――その、なんて言いますか。ギルドで騒動に巻き込まれていた方々では?」
そう声をかけて来たのはなんとか探検隊とか、化石発掘調査隊を思わせる格好をした人のよさそうな中年親父だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます