第16話 最低冒険者




 ステータス表記はSが最高位で、そこからA、B、C、D、E、Fといった感じでランクが下がって行く。

 冒険者ランクも同様にS~Fまでがあって、登録したばかりの頃は最低ランクのFらしい。


 ダンジョンへ入る許可も当然、この冒険者ランクが関係してくるのだが、そこまで厳密ではないらしく、難易度Sのダンジョンの場合にはB以上、難易度Bはすべてのランクで挑戦可能とのことだった。


 で、それはいいのだ。

 ステータスカードに身バレするような情報も載っていなかったし、すべてが万々歳だったはずなのだ。


 が、俺は納得できないぞ?

 何しろ俺は神であり魔王でありラスボスなのだ。なのに、なぜ最低ランクになっている!


「意味がわからんぞ!」


 だが、憤慨しているのはどうやら俺だけらしい。

 ギルド内にいた連中がそこら中で笑い転げており、そいつらの様子や俺たち四人を許可なく撮影し始めていた。






【とあるモヒカン頭の実況ライブ記録――】


 ――配信冒険者の顔がどアップでカメラに映し出される。


F〉〉


 おいっ、お前ら!

 今、ここラーダの街のギルドで、とんでもないことが起こりやがったぜっ!

 ここまで笑える話はホント、久しぶりだぜっ。


 〉〉〉〉



〔なんだなんだ?〕

〔何が起こったってんだ?〕

〔おい、フィガロ、もったいつけてねぇでさっさとしゃべれよwww〕



F〉〉


 まぁまぁ。

 おまいら、そんな慌てんなや。

 今からいいもん見せてやっからよ!


 〉〉〉〉



〔おい! いいもんってなんだ?〕

〔お前のでべそか!?〕

〔うへっ。そんなもん見たくねぇぞ。どうせなら女の裸見せろや!〕



 凄まじい勢いでコメント欄にヤジが飛んだ。


F〉〉


 けけ。

 お前らよ~っく目をかっ開いて、世紀の一瞬を拝みやがれ!


 〉〉〉〉



 そこで配信冒険者の顔アップから、ギルドカウンター前にいる四人組へとカメラがパンする。


F〉〉


 よくわからねぇが、あのおかしな格好した女魔術師三人と黒髪兄ちゃんの四人組新人冒険者パーティーがとんでもねぇステータスを弾き出しやがった!

 それが、これだっ。


 〉〉〉〉



 そこでカメラがぐんぐん四人組に近寄って行き、黒髪男性が持っていたステータスカードをどアップにする。


F〉〉


 くかかかっ!

 おい、てめぇら見たか!?

 他のねぇちゃんたちはとんでもねぇ力持ってるみてぇだけどよ!

 こいつはオールFだっ。

 こんな弱っちぃクソ笑える最低冒険者は初めて見たぜぇ!


 〉〉〉〉



〔うはっw ホント、まじわろうw〕

〔あり得んわ! くっそだっさっw〕

〔ていうか、そっちの女の顔見せてくれよ〕



 配信者の映像に反応して終始、コメントが流れっぱなしだった。

 映像の上にもコメントがスクロールして行く。

 うけけと、カメラの外から配信冒険者の笑い声や、周囲にいた野次馬冒険者たちの大騒ぎする声が映像と共に音声で流れる。

 そのあとで、カメラが配信冒険者を映し出した――が。


C〉〉


 ちょっとそこのあなた、よろしいかしら?



F〉〉


 あ?



C〉〉


 私のご主人様をよくもコケにしてくれちゃいましたわね。

 覚悟はよろしくて?



F〉〉


 へ?

 ……あ?

 ひゃ!

 ちょ、ま――ぎゃyhjぁいmっっっっっh!


 〉〉〉〉



 突如水色のローブを着た女に絡まれた配信冒険者はそこでカメラを落っことし、声にならない悲鳴を上げた。

 カメラの映像はギルドの床とその辺を闊歩する冒険者たちの足だけを映し出す。



〔おい! なんだっ? 何が起こった???〕

〔なんか今、さっきの姉ちゃんに絡まれてなかったか??〕

〔てかおい! 今、バキッとかやばい音がしたんだが? ww〕



 コメント欄が騒然とする中、次の瞬間、そこら中に凍てつく冷気が噴出し、カメラの画面が真っ白となった。

 そして、そこで映像が途絶える。




 先程、俺たちに無礼を働いたフィガロとかっていう残念なモヒカン野郎は――まぁ、なんていうか、本当に残念なことになった。


 ご愁傷様と言うより他にない。

 何しろ、ていうか、いや。俺もよくわからんのだが、なんかこー、どうも俺が召喚したツンデレとヤンデレとエロ女は俺のことが絡むとぶち切れてしまうようだ。


 かくしてボッコボコになって床の上で伸びてしまった残念野郎。


「は~。なんかすっきりしましたわ」

「まったくだわっ。まぁ、バルトなんかどうでもいいけど、なんかむかつくのよね!」

「うっふふ。でも、たまにはいいものよね。こういうどうでもいい男のあそこを足蹴にするって」


 クリスティーナ、アマリア、ユメルの順番でおぞましいことを言い合っている。


 ――いやぁ、なんかホント、すまん!


 ある意味自業自得と言えば相違ないが、そんな感じで密かに心の中で謝るのだった。

 そして、あれだけ俺たちを馬鹿にしてゲラゲラ笑っていた冒険者どもは全員が顔を引きつらせ、シーンと静まり返って行った。



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