第7話 VR-MMORPG『ロストアグリエス』というゲーム




 ――夜。


 俺は自分に用意された巨大なベッドの上で寝そべっていた。

 おそらく、キングサイズを遙かに超える大きさのものではなかろうか。

 美女三人を侍らせて一緒に寝ても多分、余裕がある。

 そんな大きさだった。


 もちろん、そんなことはしていないけどな。

 一応、俺が住むこの宮殿にはメルリルの他にも女官たちが百人ほどいるらしく、彼女たちは全員、俺の召し使いという扱いらしかった。


 宮殿の掃除や食事の手配、それから身の回りの世話など、そういったことすべてをやってくれるらしい。


 至れり尽くせりって奴だ。

 本当は彼女たちにはもう一つの役割もあるらしく、それが、要するに夜伽らしい。


 俺が望めばそちらも喜んで引き受けてくれるらしいが、当然のことながら、そんな申し出は激しく拒否した。

 何しろ、『絶対支配の神錫』とやらの力は、その強大さゆえに、デメリットもかなり大きいらしいからな。


『支配の力を使えば使うほど、この浮遊大陸を狙って化け物どもが押し寄せてくる』


 メルリルから聞いた話を要約するとそういうことになる。

 彼女たちは俺の所有物みたいなものだが、この城にいる限り彼女たちが反感を持たないように絶対支配の力が勝手に発動してしまうらしいのだ。


 だから下手なことをすると、化け物どもが襲ってくる。

 その辺のメカニズムがどうなっているのかわからないが、確かゲームの中ではそんな要素、なかった気がする。

 単純に俺が知らないだけってこともあるかもしれないけどな。


 俺は『ロストアグリエス』というゲームがどんなゲームだったか思い出してみた。

 新作だし、遊ぶ前に殺されたから詳しいことはわからないが、オープンβテスターの連中が掴んでいた事前情報によると――



◇◆◇


①『この世界には大小様々な大陸や島が存在する』


②『魔法国家や騎士国家、獣人国家なども多数存在する』


③『それら小規模な国家が三つに分かれて連合を組んでいる』


④『RvR(種族間戦争)やCvC(国家間戦争)、PvP(対人戦)などが存在する』


⑤『プレイヤーは冒険者としてそれぞれの国に所属し、毎日開催される戦争イベントに参加することで、PvPポイントや報酬をゲットできる』


⑥『戦争によって国家間の勢力図が変わり、街で買えるアイテムの種類や値段が変化する』


⑦『所属している国家や種族が支配しているダンジョンに優先的に入ることができる』


⑧『所属国以外の領土に入ると、該当国所属のプレイヤーと対人戦が発生し、PKされる可能性がある。ただし、該当国内のプレイヤーが外国プレイヤーをPKしたとき、赤ネにはならない』


⑨『中立地帯では常に対人戦が発生し、通常のPK、PKKルールが適用される』


◇◆◇



 まぁ、ざっとそんなところだ。

 つまり、このゲームはほぼほぼ対人戦メインのゲームと言い換えることができる。

 そんなだから、皆、最前線でひゃっほいしたくてレアスキルやレア武具集めにいそしんでいるわけだ。


 何しろ、手に入るスキルや武具には本数が設定されているらしいからな。

 世界に一つしかないユニーク属性の世界級やレジェンド級スキル及び武具などがあるらしい。

 

 ペット育成システムとかも存在するらしいが、そのペットまでどうやらユニークものがあるという話だった。

 汎用的なものは当然、店で手に入るが、レアなペットとかは普通の方法じゃ手に入らない。


 どうも武具やスキルも含めて、そういった貴重なアイテムは隠しクエストや、戦争イベントで取り合っている中立地帯のダンジョンでしか入手できないらしく、だから皆、余計に戦争イベントとかに躍起にならざるを得ないというメカニズムとなっている。


 そして、そんな世界の頂点に君臨する神。

 数多く存在する浮遊大陸の一つ、ゲームタイトルにもなっているアグリエスに住まうとされていて、サービス開始当初から実装されているグランドミッションのラスボス。それが神であり、その神として転生したのが俺だったりするわけだ。


 改めて色々思い出してみたが、なんだかとんでもないことになってしまったな。

 俺はそんなことを思いながらも、とあることに気が付いてしまった。


 ――これ、やばくね?



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