第3話 転生後の世界
俺は目を覚ますと、馬鹿でかい大広間みたいなところにいた。
なんていうか、よくゲームとかで見る城の謁見室みたいな感じだった。
大広間左右には太い柱が等間隔に並んでいて、中央には赤い絨毯が敷かれていた。
そして、その遥か先に行った正面には壁や扉があるのではなく、大空が忽然と顔を覗かせていた。
そんな場所にしつらえられていた玉座のようなものに、俺は座っていたのだ。
――これはいったい、どういうことだ?
確か俺はさっきまで、死後の世界にいたはずだった。そんでもって、クレーンゲームでキャッチしたカプセル開けたら、異能力『顕現位相』とかっていう文字が書かれた紙が入っていたのだ。
で、それを認識した瞬間、意識がぷっつんして、気が付いたらこんな状態だった。
しかも、転生したはずなのにいきなり身体がでかいとか。
鏡で顔を確認したわけではないからなんとも言えないが、おそらく十代後半から二十代前半ぐらいだと思われる。
「まったく意味がわからん」
ぼそっと呟いたとき、すぐ側で何かが動いたような気がした。
ふと、何気なく玉座右側を見て、ぎょっとした。
なぜなら、そこには半裸といっても過言ではないような格好をした、巨乳のお姉さんが立っていたからだ。
髪は赤毛で腰まであり、全体的に手足が長くてすらっとしている超絶美人。
そんな彼女が身につけているものといったら、上半身はビキニのような面積の少ないレースブラ。下半身は足首まである透け透けのオーバースカートとその下に履いている、やっぱりビキニみたいなレースの下着。あとはハイヒールサンダル。
しかも、やたら胸がでかいせいか、揺れ動くそれの大部分が隠れていない。
非常に目のやり場に困る格好をしていた。
俺は――少しだけ傍若無人なところはあるが、結構シャイで女性と付き合った経験なんてないから恥ずかしくて直視できなかった。
さらりと目を逸らした俺のことをどう解釈したか知らないが、隣のお姉さんは俺の前へと歩み出てくると、床に片膝を突いた。
「我が愛しの主よ。あなたのお名前をお聞かせください」
頭を垂れたまま固まっている彼女に、俺は酷く困惑した。この人が何を言ってるのかよくわからなかったからだ。しかも、今自分の置かれている状況すらまったく飲み込めていないのだ。
錯乱してもおかしくないレベルだった。
「えっと……ちょっといいか?」
「はい」
「名前もそうだけど、俺、自分の身に何が起こったのかいまいち理解できていないんだけど、いったいこれはどういう状態なんだ? ここはどこだ? 俺はどういう状況に陥っているんだ?」
そう言って、ジト目を向ける俺。
彼女は顔を上げると、
「そうでございますね。おっしゃる通りです。あなた様のことは女神様からお伺いしておりますので、詳しい経緯をお話したいと思います」
「女神?」
しかし、彼女はそれに答えず、立ち上がると、「こちらへどうぞ」と俺を手招きする。
仕方なく俺も立ち上がって彼女のあとに続いて歩いた。
必然的に、俺の視界には彼女のエロい姿が飛び込んできてしまい、慌てて視線を逸らした。
何しろ、彼女が履いている下着がTの字だったからだ。
年頃の男の子には目の毒だ。
俺はなるべく前を見ないようにして歩き続けた。そして、空が顔を覗かせている場所近くにあったコンソールパネルのところで立ち止まる。
それは一メートルぐらいの高さがある長方形の物体で、一見すると石碑みたいだった。
それが床の上に設置されていた。
俺は黙ってコンソールパネルを見つめていた。
隣に立っている赤毛の美女が何やらパネルを操作する。
すると、そこら中の空間に映像が浮かび上がって行った。
SF映画さながらの光景。
動画配信サイトでよく見るサムネイルの羅列。そんな感じの光景が目の前に現れたのだ。
「この映像は、今現在実際に起こっている出来事のライブ配信映像です」
彼女が何を言っているのかよくわからないまま、それらを見てみたが――
映像のほとんどはパニック映画だった。
大勢の人間が逃げ惑い、それをゴブリンのようなモンスターが追いかけている。中には先陣切ってそれらと戦っている奴らもいた。
「これ、いったいなんなんだ? 今、何が起こってるんだ?」
眉間に皺を寄せて聞くと、隣の美人さんはこう答えた。
「もちろん、世界が上書きされたのですよ。あなた様の異能力『顕現位相』のお力で」
「――え?」
意味がわからず呆然としていると、艶然と微笑みながら彼女はすべてを話してくれた。
俺が引き当てた異能力がいったいどんな力を秘めていたのか。
そして、地球という世界に何が起こったのかを。
――そう。
俺が遊ぼうと思っていたVR-MMORPG『ロストアグリエス・オンライン(LAO)』の世界が地球上に上書きされてしまったのだということを。
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