第2話 死に戻り転生することにしました




 俺の目の前にはなぜか、クレーンゲームがあった。

 いわゆるゲーセンとかにあるような奴だ。

 それがなぜか、俺の目の前にあったのだ。

 まったくもって意味がわからん。


 ――ていうか、ここはどこだ? 


 見渡す限りの暗黒空間。

 それ以外には何もない。


 自分の姿も見えないし、ひょっとしてアレか?

 ここは死後の世界って奴か?

 そんでもってどこかに神様的な奴らがいて、それまでの業に照らし合わせて天国とか地獄のどちらかに飛ばすっていうアレか?

 あるいは異世界に転生してくれちゃったりとか?

 

 ――ていうか俺、ホントに死んだのか?


 自分の置かれている状況が理解できず、若干パニックを起こしかけたが、そんなとき、あぁそうかと、なんかいきなり全部、思い出した。


 そう言えば俺、なんか知らんが強盗に刺されたんだったな。

 普段は人助けなんて一切しないのに、ホント馬鹿な奴。

 無意識とは言え、初めてやった人助けで死ぬとかホント、笑えねぇな。

 自虐的に笑って見せたが、それで何かが起こるというわけでもない。


 ――ていうか、おい、放置プレイかよっ? 俺、死んだんだよな? だからこんなわけのわからんところにいるんだよな?


 俺はあるのかないのかわからない可愛いお目々で、周囲を見渡した。

 が、神様らしき輩はどこにもいない。これじゃ、天国や地獄どころか転生すらさせてもらえないじゃないか。


 ――マジか……。


 どうすんだよこれと途方に暮れながらも、仕方がないからクレーンゲームを凝視して――そして気が付いた。

 なんか、ガラスの壁に張り紙が貼ってあったのだ。


 ――なになに?


 興味を引かれて読んでみた。



【ここへ訪れた残念な方々へ】


 最初の一行でいきなり人を馬鹿にしたような台詞が書かれていた。

 ふざけるなよと思ったけど、大人しく続きを読む。



【あなた方は不慮の死を迎えられました。本来はもっと長生きできるはずでしたが、転生システムのバグにより、寿命が短くなってしまったのです】



 ――転生システムってなんだ?


 だが、そのことには一切触れられていない。



【そこで、あなた方には二つの選択肢が用意されました。一つは異世界へ転生する道。もう一つは地球へと死に戻って別の人間としてやり直す道】


【もし、異世界へ行くのであれば、特典などは上げられませんが、地球へ死に戻るのであれば、一つだけ、異能を手に入れることができます】



 紙にはそう書かれていた。

 つまり、異世界転生する場合にはなんの力も持たないただの人間としての生を約束されるが、地球人として死に戻るんであれば、異能を手に入れられるというわけだ。


 ――ふむ。


 俺は思った。


 ――これ書いた奴、馬鹿なんじゃね?


 普通は異世界転生することで『こいつはとんでもねぇぜぇ~! ひゃっほぉぉ~いっ』とかっていうとんでもスキルが手に入るんじゃないのか?


 だが、何度読み返しても結果は同じだった。

 こんなもの、ほとんど選択肢なんてないに等しかった。


 異能を持ってないのに異世界に行ったってしょうがないし。

 だったら、異能力を手に入れて地球に死に戻った方がなんぼもましだ。そうすれば、前世のような弱者になることなんかないからな。


 そう自分に言い聞かせた俺は、異能力を手に入れるためにクレーンゲームを動かした。

 手がないのにどうやって? とか思ったけど頭で考えただけで勝手に動いた。


 そして――


 異能力『顕現位相けんげんいそう』を手に入れ、現代地球へと死に戻り転生を果たすのだった。



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