VRMMOのラスボスとして転生した俺。どうやら無自覚なままゲーム世界を現実世界に召喚して世界中にダンジョン作っていたらしいので、自分で攻略してみます!

鳴海衣織

 

第1節 転生、そして天空編

第1話 踏んだり蹴ったりな前世




 まぁよくある話だ。

 十七歳男子高校生の俺。中肉中背でどこにでもいるような少年。

 学校で虐められていた俺は、その日も例によって校舎の裏に呼び出されて同級生のイケメン男子どものサンドバックになった。


 奴らは金持ちのボンボンだったり親がマフィアだったりで、教師どももまったく手がつけられない連中だった。


 だから俺も近寄らないようにしていたんだが、数ヶ月ほど前、ちょっと目が合ったというだけで袋叩きにあった。

 財布も巻き上げられた。

 奴らはチンピラ同然だった。

 そうして、俺は定期的に虐められるようになった。


 当然のことながら、教師どもがあんなだから回りのクラスメイトなんて自分に火の粉がかからないようにと、皆、知らんぷりした。


 しかし、クラスのマドンナ的存在の女子だけは違った。

 別に俺に気があったわけじゃないと思うが、連れて行かれる俺を見つけてなんとか止めようとしてくれた。


 彼女はクラス委員をやっていたから、人一倍正義感に溢れていたんだと思う。

 本当に泣けてくる話だった。だけど、今回ばかりは相手が悪すぎる。


 俺は万が一、彼女に危害が加えられると嫌だったので、近寄るなと目で睨み付けた。

 だから、結果的に誰にも助けてもらえなかったのだ。


 ――そんなわけで、俺はその日もひたすら苦痛に耐えながら、こんな社会のクズどもなど、さっさと死ねばいいのにと思わないでもなかったが、それだとこいつらと同じになってしまう。

 だから俺はやられてもやり返さず、ひたすら耐えた。


 そうして解放されたときには制服はボロボロ。

 そこら中に痣ができたり、血が出たりしていた。

 地面に転がりながら、俺はぼ~っと空を眺めていた。


 もうこんな生活、うんざりだと。





 ――翌朝。


 携帯の目覚ましが鳴ったが、俺は起きなかった。

 俺が虐められていることを親も理解していて学校に相談してくれていたみたいだけど、当然、学校側は無視。


 そんなだから、精根尽きて起きてこない俺のことを理解し、母も父も特に何も言わなかった。


 だから結局、今日は学校を休んだ。


 このまま引きこもって不登校になるのもいいだろうと思った。

 そうすれば、やられることはもうないだろうから。

 だから、その日は学校行かずに渋谷の街をうろちょろしていた。


 ――確か今日は新作VRMMOの発売日だったな。


 ゲーム三昧の毎日もいいかと思い、電気屋へ向かった。

 普段はスマホゲーばっかりだったから、ゲーム機なんてものは持っていない。

 だから、ゲーム機ごと買おうかと思ったのだ。


 一応、気になっていたタイトルだったし、オープンβには参加してないけどテスターたちが密かにネット上へアップしていた攻略情報は事前に掴んでいたからな。


 というわけでだ。

 俺は目的のコーナーへと行き、意外にも売れ残っていたゲーム機とゲームソフトの両方を手にしてレジへ直行した。

 そうして大人しく自分の順番が来るのを待っていたのだが、そんなとき、そこら中が大騒ぎとなった。


「あ?」


 うるさいなと思ってレジすぐ側の出入り口へと視線を送り、そこで固まった。


「おいっ、てめぇらっ。騒ぐんじゃねぇ!」


 いわゆる、強盗のような奴がいた。手にはでかい包丁を持っていて、顔は覆面。ひょっとして、今流行の闇バイト強盗か?

 案外実行指示してるのは、俺をボコボコにしてくれた同級生の親かもしれないな。


 つーか、んなことを冷静に考えている場合ではない。

 俺はゲーム機を持ってその場から逃げようとしたのだが、そのとき、


「きゃぁ~~!」


 美人で巨乳のお姉さんが、その場から逃げようとして地面に転がった。

 頭がぶっ飛んでいた強盗二人組が即反応して、その大学生ぐらいの女の子へと襲いかかる。


 それを見て「やばいやばい」と思いつつも、クラスの連中同様、見て見ぬふりして逃げようとしていたのに、なぜか意志に反して身体が勝手に女性の方へと動いていた。

 そして――


 ――グサッ。


 彼女を殺そうとしていた強盗の手にする出刃包丁が俺の腹へと突き刺さる。

 強烈な痛みと精神的ショックと、何が起こったのかわからないことへのパニックとが同時に襲ってきて――俺はうつ伏せに倒れた。



 ――そして、俺の記憶はそこでプツッと途絶えた。



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